どうも、りきぞうです。
大学のころから、世界史に親しんできました。
大学院時代は、本格的に人文書・歴史書にあたってきました。
約半年間をかけて、中公文庫版『世界の歴史』全30巻を読み終わりました。
各レビューの一覧は、こちら。
そのなかできょうは、わたしが「おもしろい」「ためになる」と思った巻を紹介していきます。
ランキングでまとめると、こんなかんじ。
2位 『ラテンアメリカ文明の興亡』
3位 『ルネサンスと地中海』
4位 『イスラーム世界の興隆』
5位 『近代ヨーロッパの情熱と苦悩』
目次
中公文庫『世界の歴史』(全30巻)の特徴
各巻をとりあげるまえに、『世界の歴史』(全30巻)の特徴をみていきます。
歴史好きには知られているとおり、中央公論新社(旧 中央公論社)からは、以前にも『世界の歴史』(全16巻)が刊行されていました。
きょう取りあげる『世界の歴史』シリーズは、新たにシリーズ刊行されたもので、いっぱんに「新版」とされています。
旧版(全16巻)ではエンタメ性がつよく、わくわくしながら読みました。
いっぽう新版(全30巻)のほうは学術性がつよく、わりと〝おカタめ〟な印象なのが特徴。
また(旧版と違い)編集方針も一貫しておらず、きほん著者自身の文体&構成に任せています。なので、通しで読んでも、ストーリー性は感じられず、各時代の断片を読むようなかたちになります。
とはいえ、裏をかえせば、好みの時代やテーマを選んで、飛ばし飛ばしで読めるともいえます。
中公文庫『世界の歴史』(全30巻)のランキング
このような特徴をもつ『世界の歴史』(全30巻)ですが、ここからわたしがとくに「おもしろい」「ためになった」と思った巻を紹介していきます。
ランキングにまとめると、つぎのとおり。
2位 『ラテンアメリカ文明の興亡』
3位 『ルネサンスと地中海』
4位 『イスラーム世界の興隆』
5位 『近代ヨーロッパの情熱と苦悩』
それぞれみていきます。
1位 『成熟のイスラーム社会』
いちばんのおもしろかったのは、こちら。
15世紀〜16世紀の中東エリアを描いた巻で、オスマン朝とサファヴィー朝と扱っています。
教科書&一般書では〝サラッと〟しか触れられていないぶん、両王朝にかんする発見が多く、たいへん楽しく読めた。
「世界の半分」とよばれたイスファハーンをはじめ、両エリアの街のようすも詳しく記されていて、紀行文のように味わうことができました。
また、この時代に活躍した人物のエピソードも豊富で、物語としても、じゅうぶん楽しめる内容。
この巻単体で発売しても、広く読まれるなかみになっています。
2位 『ラテンアメリカ文明の興亡』
2つ目は、こちら。
近世ヨーロッパ以降のラテンアメリカ史というと、コルテスやピサロをはじめ、残酷なスペイン人が、南米の古代文明をひたすら破壊していったイメージがあります。
しかしこの巻では、(当時の資料をもとに)当時の侵略のようすを探り、ラテンアメリカの先住民と、現地に立ったスペイン人の攻防を描いています。
それによると(教科書的な記述とは異なり)一方的にスペイン人が破壊活動をしたわけではなく、先住民間の利権争いにまきこまれ、ときには先方の内乱を利用して、侵略していった ─ 。
つまり、優れた戦術や武力があったから、滅亡に追い込んだのではなく、先住民間の〝内輪もめ〟をたくみに利用して、制圧していきました。
この経緯を知るだけでも楽しく、読むに値する内容になっています。
一般書では分からない実態を知りたい人には、おすすめですね。
3位 『ルネサンスと地中海』
3つ目は、こちら。
ルネサンスの発端から衰退までを、春夏秋冬など、季節にたとえて描いています。
芸術作品の考察はもちろんのこと、なぜルネサンスが起こり、イタリアで急速に衰えていったのかを、詳しく記しています。
じつは芸術運動とは無関係と思える国家間の戦争が、ルネサンス運動には大きく作用し、国際関係のプロセスが、それぞれの芸術家たちにも影響をあたえました。
そのプロセスを知るだけも、本書はおすすめです。
4位 『イスラーム世界の興隆』
4つ目は、これ。
またまた「イスラーム史」ですね(笑)
こちらは、1位にあげた『成熟のイスラーム社会』とは違い、エンタメ要素はあまりありません。
イスラーム誕生から発展までをたんたんと描いているかたちですが、文体がすっきりしているぶん、ついつい読んでしまいます。
教科書などでは、イスラームが広まる経緯って、つかみにくいですね。
しかしこちらは「都市」にスポットをあてることで、いわゆるイスラーム世界がどんなふうに発展していったのか、具体的に理解できるつくりになっています。
「ためになる」という意味では、本巻はとくにおすすめです。
5位 『近代ヨーロッパの情熱と苦悩』
さいごが、こちら。
タイトルどおり、近代ヨーロッパをあつかったもので、時代でいえば、ウィーン体制がはじまる1815年から、帝国主義時代直前の1850年あたりです。
本巻が良かったのは、たんに各国別の動向を追うだけでなく、当時の複雑な国際情勢を横断的に描いているトコ。
歴史シリーズものだと、各国史の専門家が書くため、ひとつの国をだとる構成になりがち。
しかしこちらは、共著者同士が話し合いながら描いているので、読み手としては、列強体制のパワーバランスを立体的につかむことができます。
おもしろさはそこそこですが、「ためになる」という意味では、ポイントは高いです。
おわりに
中公文庫『世界の歴史』(全30巻)のなかで、おもしろい巻をピックアップしてみました。
まとめると、つぎのとおり。
2位 『ラテンアメリカ文明の興亡』
3位 『ルネサンスと地中海』
4位 『イスラーム世界の興隆』
5位 『近代ヨーロッパの情熱と苦悩』
この記事が、中公文庫『世界の歴史』(全30巻)を読もうとしている人の参考になれば、うれしいです。
では、また。