東京03『後手中の後手』 (第14回)感想&レビューです。

公演日 2012年6月
収録 後手
余裕
隣席
東京の両親
謙遜
この時間
家庭訪問は三つ巴

どうも、コント作家のりきぞうです。

きょうも、コント作品をレビューしていきます。

取りあげる作品は、東京03『後手中の後手』。

14回目の単独ライブを収録したものです。

ささいな日常をベースにしたコントがそろっています。

タイトルどおり「後手」をテーマにした内容です。

「後手」は、角田さんの卑屈さが、にじみ出ている作品。

個人的に好きだったのは、「余裕」「家庭訪問は三つ巴」の2本。

もはやコントの域をこえ、良質な喜劇といえます。

以下、それぞれカンタンにみていきます。

『余裕』


人物

営業マン(角田)……先輩
営業マン(豊本)……後輩
洋菓子店の店主(飯塚)

場所

洋菓子店

あらすじ

新商品を開発してもらうため、洋菓子店に来たふたり。

打ち合わせの仕切りを任される後輩。

先輩は心配するいっぽう、後輩・豊本は余裕をかます。

打ち合わせがはじめると、上司の不安は的中 ─ 。

後輩は、洋菓子店の店長に、べつの営業先の資料をみせてしまう。

「ウチは二番手か」 ─ 機嫌をわるくする店主。

あたふたする後輩。

そこで先輩が、なんとかフォローする。

しかし先輩もまたミスをおかしてしまう。

あろうことか、洋菓子店のイチバンの売りである商品の名まえを、言いまちがえてしまう。

後輩どうよう、こちらもまたテンパってしまい……

ひとこと

このあと、後輩が落ちつきをとりもどし、店主とともに、商品開発したい想いを、あつくつたえる。

結果、むねをうたれた店主は、企画の内容をきくことに。

とはいえ、先輩からすれば、後輩からフォローされるかたちになります。

部下に助けられるなんてよくあること。

スルーすればいいはなしですが、そこは東京03 ─ 。

上司が感じる、ビミョーなキモチをコントにします。

先輩・角田は、後輩・豊本にたすけてもらうことで、プライドを傷つけられてしまう。

「なんで心配していたおれのほうが、ぎゃくに、たすけをうけるんだ」と感じてします。

で、ゆがんだキモチを爆発され、商談まで、ご破産にする。

みょうなプライドが、コントのながれをきめていきます。

ほんとに東京03は、ビミョーな心理をつくのが、うますぎです。

ポイント

笑いのポイントをみていきます。

コントで大事なのは、キャラクターとプロットです。

この作品ではプロットに注目してみます。

コントのプロットはとてもシンプルです。

[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

コントの書き方 ─ プロットの構成について

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」がある。

パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つ。

コントの書き方 ─ プロットの展開について

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「逆転」だとわかる。

「逆転」では、ひとつのできごとをキッカケに、それまでの立場が反転するようすをえがく

人物の地位 or 権威が、ひっくり返ることで、笑いをおこしていきます。

この作品でも、はじめに先輩が後輩を心配するシーンをおく。

つぎに、先輩/後輩の立場をひっくり返す「先輩にかわって、後輩がたすける」というできごとをすえる。

これにより、笑いをおこしていく。

さいごに、先輩のゆがんだプライドをえがきながら、商談をダメにする。

図にするとこんなかんじ。

構図 ─ 逆転
先輩 > 後輩

・先輩、後輩が商談に成功できるか、心配する
・先輩がミスをおかす
・後輩がたすける

先輩 < 後輩

プロットだけでなく、

・豊本さんが、放心状態になったときの表情
・角田さんが、テンパったときにみせるロボットのような動き

など、演技の面でも、ぞんぶんに笑わせてくれます。

また先輩・角田が、商品名「アントレーヌ・ショコラータ」を「あんこレーヌ・ショコラータ」に呼びまちがえる。

それにたいして、店主・飯塚は、

「さっきから名まえが間違っている」
「じゃっかん和菓子よりに変わってますけど!」

と、皮肉まじりのツッコミをいれる。

こうした言葉のかけあいも、ほんとにすばらしいです。

『家庭訪問は三つ巴』

人物

教師(飯塚) … アヤコの担任
アヤコの父(豊本)
居酒屋の大将(角田)

場所

家庭のリビング

あらすじ

家庭訪問のためアヤコの自宅に来た教師。

父親らしき男がとりつぐ。

「母親のケイコは、いないよ」 ─ そう告げる。

帰ろうとする教師だったが、ごういんに男が引きとめる。

しかもはなしからさっするに、男は、生徒の父親ではなく、近所の居酒屋の大将 ─ 。

ケイコがやっているスナックの常連 ─ 。

ほんとうの父親は、事業が行き詰まり、家族を置いて出ていったらしい。

あらためて、家庭訪問にやってくるとつたえる教師 ─ 。

しかし中年オヤジは、帰ろうとする教師をひきとめ、みずからの恋愛ばなしをはじめる。

父親が不在・失踪しているすきに、どうやらケイコと付き合おうとしているらしく……

ひとこと

大将演じる角田さんが、ほんとにいい味をだしています。

かれの演技をみるだけでも、いっけんの価値ありのコントですね。

プロットの展開も、すばらしいです。

ポイント

笑いのポイントをみていきます。

コントで大事なのは、キャラクターとプロットです。

この作品ではプロットに注目してみます。

コントのプロットはとてもシンプルです。

[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

コントの書き方 ─ プロットの構成について

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」がある。

パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つ。

コントの書き方 ─ プロットの展開について

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「逆転」とわかる。

「逆転」では、ひとつのできごとをキッカケに、それまでの立場が反転するようすをえがく

人物の地位 or 権威が、ひっくり返ることで、笑いをおこしていきます。

この作品でも、大将の立場を逆転させ、笑いをおこしている。

「スナックに通うことで、ケイコ親子を経済的に支えている」
「だからケイコと付き合う資格がある」

大将は、そう主張する。

しかし、うえの立場にいると思っている大将のもとへ、ほんとうの父親が帰ってくる。

それにより、大将は劣勢に追いこまれる。

これにより、笑いがおこる。

さいごは、父親が、母親&子どものもとへもどってくる、というながれ。

父親の登場がキッカケで、大将の立場が、だんだんと劣勢になっていく。

図にするとこんなかんじ。

構図 ─ 逆転
大将 > ケイコの夫(父親)

・ 借金を清算して夫が帰宅
・大将が電話でケイコに告白しようとするが、つながらず

大将 < ケイコの夫(父親)

ちなみに、先生の飯塚をめぐって、はなしの展開に、もうひとひねりあります。

くわしくは、ぜひ本編でチェックしてみてください。

まとめ


こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。

ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた。

よきコントライフを〜。