モリエール『才女気取り』感想&レビューです。

どうも、コント作家のりきぞうです。

きょうも、コント作品をレビューしていきます。

取りあげるのは、モリエール『才女気取り』。

モリエール初期の作品です。

以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。

ちなみに、鈴木力衛訳、全集本で読みました。

以下、引用のページ番号は、うえのの文献によります。

また2000年には、べつの翻訳も出ています。

わりと読みやすいです。

よければチェックしてみてください。

ストーリーの大まかな流れ

人物

ゴルジビュス……商人
マドロン……ゴルジビュスの娘、才女を気取る
カトー……ゴルジビュスの姪、才女を気取る
グランジュ……二人にフラれた男
クロワジー……二人にフラれた男
マスカリーユ……グランジュの下男
ジュドレ……クロワジーの下男

場所

ゴルジビュスの家(パリ)

あらすじ

そこそこ財産のある「グランジュ」&「クロワジー」。

それぞれふたりの女性「マドロン」と「カトー」に、結婚を申しこむ。

しかし、才女を気取るふたりは、「あんな俗物な人たちとは一緒になれない」とキッパリ断わる。

プライドを傷つけられたグランジュ&クロワジーは、教養人を気取るふたりに、復讐をたくらむ。

グランジュの下男「マスカリーユ」は、貴族のマネをしては、シャレた身ぶり&詩作などをして、とくいになっていた。

グランジュ&クロワジーは、貴族に変装したマスカリーユを、ふたりの女性のもとへ送りだし、カマをかけることに。

マスカリーユは、「侯爵」という肩書きのもと、

・軽快なしゃべり
・軽やかな身のこなし

をふりまき、「マドロン」&「カトー」に、それとない視線をおくる。

すぐさま惹かれる、ふたりの女たち。

下男とも知らず、「ようやくあたしたち才女のもとに、社交界の花形が訪ねてきた」と思いこみ……

ひとこと

当時のフランスは、読者文化が広まりはじめていました。

それともない、教養をひけらかす女性も増えていました。

そんな状況を皮肉るため、モリエールは、コントにしました。

格好のネタに、筆もすすんだでしょうね。

いつの時代も、知識をひけらかし、お上品にふるまう人はたくさんいます。

いまでいえば「意識高い系」ってやつです。

その意味では、普遍性のある作品ですね。

笑いのポイント

笑いのポイントをみていきます。

コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。

この作品ではプロットに注目してみます。

コントのプロットはとてもシンプル。

[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

コントの書き方 ─ プロットの構成について

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。

パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。

コントの書き方 ─ プロットの展開について

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「交錯」だとわかります。

「交錯」では、セリフやアクションによって真相をかくし、登場人物をカン違いさせる。それによって、スジ違いの発言であったり、行動に出る。

そのようすが見てる人を笑わせる。

この作品でも、貴族に扮した下男が、才女気取りの女たちをダマす。

下男にもかかわらず、詩を披露する、服装のセンスをひけらかす。

教養があるとホメられ、有頂天になるふたりの女たち。

このようすが、笑いをおこしていきます。

図にすると、こんなかんじ。

構図 ─ 交錯
貴族=マスカリーユ≠下男

・才女を気取るマドロン&カトーに詩を唄い、服装の良さをひけらかす
・ふたりの女性をほめまくる
・貴族の立場を利用して下世話な遊びに誘う
・ダンスなどをして騒ぐ

貴族≠マスカリーユ=下男

下男ともしらず、貴族が誘いにきた、と得意になるふたり。

勘違いしたようすが、笑いをおこしていきます。

マドロン  まぁ! あなた! 侯爵ですって! (……)きっと社交界の花形よ。あたしたちのことを聞きつけて来たんだわ。

カトー もちろんよ。

(p.136)

下男の身分にもかかわらず、貴族然とするマスカリーユは、詩をうたって、きかせる。

平凡でありきたりな中身でも、細かい言葉の言い回しをやたら褒めちぎる二人。

さらに、ガチョウの羽やリボンなど身につけた装飾品を趣味の良さをもちあげる。

こういう細かいトコが、リアリティをもたせ、より笑いをさそいます。

まとめ

こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。自分でつくるときにも役立ちます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた。

よきコントライフを〜。