バナナマン『private stock』感想&レビューです。

公演日
収録 ルスデン
ジャッキー設楽:マジックショー
バカ青春まったなし
ウソ
HOSPITAL

どうも、コント作家のりきぞうです。

きょうも、コント作品をレビューしていきます。

取りあげるのは、バナナマン『private stock』。

初期のライブから、バナナマンのふたりが、気にいった作品を収録したものです。

「バカ青春まったなし」は、キャラクターメインのコント。

青くさい口調で、青春ドラマにありがちな話が展開していきます。

パロディですね。

「ウソ」は、セミナーの講師と生徒のおはなし。

結婚詐欺 or 借金の持ち逃げなど、被害総額が2600万になる男が、ウソを見ぬくレクチャーを受ける。

「いまから話す内容が、ウソかホントか判断しなさい」など、それらしい課題を出していく。

けれどいつのまにやら、カネのカラむ展開になり、ついには数万円、ぼったくられてしまい……

設楽さんの性格が出ているコントですね。

納得しがたいロジックで、日村さんが餌食に。。

「hospital」は長尺コント。

バナナマン・コントといえば、フクスウの役がらを、ふたりだけでこなすのが、その特徴 ─ 。

これは、そのプロトタイプといえるような作品。

交通事故で病院に搬送された子ども ─ 。

両親と医師2人が、ストーリーを展開させていく。

初期のコントとあって、ストーリーの軸は、そこまでしっかりしていない。

とはいえ、日村さん演じる医師のキャラクターは、じゅうぶん笑いをおこしている。

手術をメンドーだと思ったり、手術を成功させても、どうして治ったのかよくわからないとか言ったり。

残酷につきはなす雰囲気が、なんともおもしろい。

個人的に好きだったのは「ルスデン」 ─ 。

以下、くわしくみていきます。

『ルスデン』

人物

日村
設楽 … 友人

場所

日村の部屋

あらすじ

深夜2時。

帰宅する会社員に電話。

メンドーに感じた日村は、留守電に吹きこまれるメッセージだけを聞くことに。

すると、友人の設楽らしき人物がさけぶ。

さらに、内容がわからないまま途中で切れてしまう。

怖くなった日村 ─ 。

くわしく知るために、もう一度、留守電を確認。

そこには、38件の伝言が残されていた。

はじめから1件ずつきいていく。

すると、設楽がさげぶまで経緯が、じょじょにあきらかになっていく。

ヤクザの女に手を出し、組員に恐喝される設楽。

日村に助けてもらうため、ヤクザに日村の電話番号と住所を教える。

ヤクザを連れた設楽が、自宅にやってくる事態に怯える日村。

しかし、留守電のメッセージは意外な展開を伝え……。

感想

バナナマンのコントのなかでもトップクラスの出来ばえ。

なによりスゴイのは、その構成力。

設楽の奇妙な叫び声で、観てる人のココロをつかみ、なぜ設楽が叫ぶまでに至ったのか、そのワケを明らかにしていく。

ナゾ解きのストーリー展開で、コントというよりもミステリーにちかい。

とはいえ、

・留守電をきいたとき、たまたま着替えをした日村が、パンツ一丁で右往左往する
・メッセージの途中で「母親」の声が吹き込まれている

などなど、コメディの要素も、くわえてある。

「怖い作品」って言われるけど、それはオチだけ。

「留守電のメッセージに振り回される男」としてみたとき、かなりこっけいで笑えます。

ポイント

笑いのポイントをみていきます。

コントで大事なのは、キャラクターとプロット。

コントのプロットはとてもシンプル。

[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

コントの書き方 ─ プロットの構成について

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」がある。

パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つ。

コントの書き方 ─ プロットの展開について

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「交錯」だとわかる。

「交錯」では、ひとりの人物が、真相を隠したり、ワナをしかける。それにより、カンちがいする人物が、すじちがいのセリフを吐いたり、行動に出たりする。

そのようすが笑いを引きおこす。

この作品でも、

・事件に巻き込まれたくない日村が、設楽からの助けを無視する
・メッセージを聞かないことにして寝てしまう
・自宅にいるのがバレないよう、居留守をつかう

などなど、アタフタぶりが、笑いをひきおこす。

図にすると、こんなかんじ。

構図 ─ 交錯
日村 ≠ 部屋にいる

・設楽、助けを求める
・日村、寝たフリ&居留守

日村 = 部屋にいる

この作品の奥深さは、はじめ日村は設楽をホントに助けようとしていた点。

助けようとしたが、留守電のメッセージがすでに2時間以上まえのもの。

日村の立場からすれば、助けようにも助けられない。

そのどうしようもない状況に追い込まれる姿が、より笑いを生み出している。

メッセージがもうすこしあとで吹き込まれ、まだ助ける見込みがあれば、日村は行動をおこせる。

とはいえ、それだと、笑いの強度は下がってしまう。

この絶望的な状況だからこそ、笑いが生まれる。

ちなみに、オチもみごとなので、ぜひチェックしてください。

まとめ

こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。

ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた。

よきコントライフを〜。