公演日 | 2008年11月 |
収録 |
残業 転ばない男 ハムレット 美談 パーティー 放課後 タイの夜 |
どうも、コント作家のりきぞうです。
きょうも、コント作品をレビューしていきます。
取りあげるのは、東京03の『機微』。
8回目の単独ライブを収録したものです。
10年以上まえの作品ですが、いまと同じように〝日常ベース〟のコントが収められています。
この時点で、東京03の軸は決まっていたんだろうなぁ。
…
『転ばない男』など角ちゃんのヘタりっぷりがよく出ている作品です。
『タイの夜』は長尺コント。
見応えのある作品で、コントというよりも、ちょっとした喜劇です。
…
個人的に好きだったのは、『ハムレット』&『美談』 ─ 。
以下、くわしくみていきます。
目次
『ハムレット』
人物
役者① (飯塚)
役者② (豊本)
監督(角田)
場所
稽古場
あらすじ
指導をする監督。役者2人の演技はいっこうによくならない。
しびれを切らした監督。お手本をみせる。
しかし席を立ったものの、台本をもつ手はふるえ、声も弱々しい。
バカにする役者たち。けっきょく手本を見せずに引っ込む。
もう一度、指導スタート。
あいかわらず役者の演技はダメなまま。
ゲキをとばす監督。ふたたび席を立ち、手本を見せようとするが……
ひとこと
わかりやすいですね。
だれが観ても笑っちゃうんじゃないかな。
でも、ツウの人からすると、物足りないかも……
ポイント
ここで笑いのポイントをみていきます。
コントで大事なのは、キャラクターとプロットです。
この作品ではプロットに注目してみます。
コントのプロットはとてもシンプルです。
[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」がある。
パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つ。

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「反復」だとわかる。
「反復」では、状況や環境が変わっても、それまでと同じアクション、セリフ、出来事をくりかえすようすを描きます。
それによって笑いをひきおこす。
この作品でも、監督が手本となって演技指導しようとするが、失敗する。
もう一度、ヘタな演技をする役者に手本をみせようとするが、これまた失敗 ─ 。
おなじミスをくりかえすことで、笑いをひきおこす。
図にすると、こんなかんじです。
・あいかわらず、役者ふたりが、ヘタクソな演技
・監督、ふたたび、お手本をみせようとする
・手がふるえて、声も小さい
監督 = お手本、みせられず
「反復」による笑いは、けっこうわかりやすい。
セリフでもアクションでもいいので、プロットの最初にボケを入れ、後半にそれと同じ種類のボケをかさねる。
とはいえ、カンタンなぶん、ベタになりやすい。
そこを、東京03は、演技でカバーしています。
なので、笑いがたえることはありません。
『美談』
人物
同僚① (豊本)
同僚② (飯塚)
同僚③ (角田)
あらすじ
社内のマドンナと付き合えることになった豊本。美談をかたる。
しかし、そのエピソードに角田がケチをつける。
「それをキッカケに、豊本とマドンナが付き合うことになった」
「なぜそれを言わないんだ?」
ハラをたてる角田だったが、「自分から言うのはカッコわるい」と飯塚がつっこむ。
動揺する角田は……。
ひとこと
自分が付き合うキッカケをつくった。しかし相手は言ってくれない。
黙っているか。アピールするか。
そんなビミョーな心理をネタにしたコント。
設定がうまいですねぇ。
ポイント
ここでもプロットの「展開」に注目してみます。

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「逆転」だとわかる。
「逆転」では、ひとつの出来事をキッカケに、それまでの立場や地位がひっくり返るシーンを描いて、ストーリーを展開させる。
人物が反転するようすが笑いを引き起こす。
この作品でも、角田が「自分がウラにまわってサポートしたから」とほのめかす。
しかしだんだんと「自分のおかげで付き合えた」と言って、アピールしはじめる。
自画自賛をキッカケに、「そういうのはふつう自分からは言わない」とつっこまれる。
図にするとこんなかんじ。
・角田が〝豊本 & マドンナをとりもったこと〟をアピール
・自画自賛がエスカレートしていく
・そのようすを飯塚がつっこむ
同僚 > 角田
「逆転」の構図では、立場をひっくりかえす出来事が、キモになる。
序盤をフリにつかい、中盤あたりで反転のキッカケをもってくると、プロットがきれいにきまる。
このコントでも、中盤あたりで、角田の自画自賛がはじまり、自慢するようすを飯塚につっこまれる。
東京03のばあいには、なにげない会話からはじまり、大きな事件をおこさずに人物の立場をひっくりかえす。
そのため、とても洗練された作品にみえる。
ハイレベルです。
まとめ
こんなふうに、プロットとキャラクターに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。
ではまた。
よきコントライフを〜。