シソンヌ『シソンヌライブ trois(トゥロワ)』感想&レビューです。

公演日 2015年12月
収録 姉弟
職員室
立てこもり
名店への道
ガソリンスタンド
汚し屋
スポーツ交差点
町の美容室

どうも、コント作家のりきぞうです。

きょうも、コント作品をレビューしていきます。

取りあげるのは、シソンヌ『シソンヌライブ deux(ドゥー)』。

これまで2回の単独ライブをおこなってきました。

この3回目で、シソンヌのライブ公演が、本格的にスタートします。

その意味で、記念すべきライブといえます。

『リューヤの思い』では、車の運転さばきで、カノジョへの想いを表現。演出による笑いです。

『先生の本性』は、じろうさんの「異常さ」を感じられる作品になっています。

どのコントも10分程度ですが、どれもなかみが濃いものばかり。

コント好きなら、かならず観ておくべき作品です。

個人的に良かったのは、「息子の目覚まし時計 」「ことわれない女」「インドカレー」 ─ 。

以下、くわしくみていきます。

『息子の目覚まし時計』

あらすじ

むすこが行方不明になった夫婦。

2年たっても忘れられない妻は、子どもの部屋をそのままにしておく。

しかし夫は、「すこし変えてほしい」とたのむ。

「むすこへのキモチがさめたのか」と、ののしる妻 ─ 。

そのとき、亡きむすこの部屋から、目覚まし時計が鳴りだして……

ひとこと

ややベタなかんじはあるけど、コンパクトでサラッとみれます。

序盤にはふさわしいです。

目覚ましのアラームまでそのままにしていることで、母親の悲しみを表している。

モノにすがりつくようすをコッケイにみせて、笑いにかえる。

シソンヌは、こういうシメっぽいテーマをコントにするのがほんとうにうまい。

かれらの笑いがどういうものか ─ この作品をみればまずわかる。

『野祭』

あらすじ

山奥に住むオヤジさんのトコに男がやってくる。

20年ぶりにおとずれ、なつかしさにひたる。

オヤジさんは、あしたの「野祭(のまつり)」に男を誘う。

こころよく応じる男 ─ 。

けれど祭りの内容は、村人同士で野菜をもって殴りあうというもの。

黒く塗りつぶしたジャガイモを投げつけたり、ピーマンをかぶせたバクダンで木っ端みじんにしようとたり。

心臓の病をかかえながらも、オヤジさんはやる気まんまんで、参加しようとするが……。

ひとこと

めちゃくちゃ笑った。

オヤジ演じるじろうさんの狂気が、かいまみれるコントですね。

なにも知らない男が「殺人祭り」にまきこまれるという設定。

これがプロットの軸となり、笑いをもらたします。

人を殺すために、

・ジャガイモを品種改良する
・バクダンづめのピーマンを栽培する

などなど、農村でくらす人びとの狂気をみせつつ、笑いをひきおこしていきます。

オヤジの狂ったキャラが、魅力的なコント。

強烈のなまりも、Good でした。

『母と息子』

あらすじ

初期の認知症をわずらう母親。

それでもある程度マトモな母親は、むすこを心配させないためにジョーダンをとばす。

「ぼけてる」という字を書いた半紙をカベにかけたり、リモコンをわざと隠したりする。

服を着替えない、置き忘れが多くなる、外に出るのがおっくうになる。

初期症状の具体例をあげつつ、わずらうまえから、同じような行動をとっていたエピソードをはなし、笑いをとる。

心配するむすこを、すこしでもなごませようとするが……


演劇性を重視するシソンヌのコントでは、このように「ペーソス(哀しみ)」を含んだ作品が登場します。

ほかの芸人さんにくらべて「ひと味ちがう」と思わせるのは、不幸な要素をストーリーにおりまぜるトコ。

この作品でも、母親はほんとうに初期の認知症をわずらい、「じつは認知症ではありませんでした」という、安易な展開にはしません。

それだと、ヘタな同情をかい、笑いをおこしにくくなるからです。

シソンヌの場合、個性的なキャラ or フレーズによって、ベタなストーリー展開を、カバーしている。

とはいえ、強烈なキャラは、演技力がないと成り立たない。

人物設計&演技力が、ハイレベルに達してるからこそ、コントが成立する。

つよいペーソスをふくんだ作品をみせられるだけでも、ふたりの実力がわかります。

まとめ


こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。

ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた。

よきコントライフを〜。