チェーホフ『タバコの害について』感想&レビューです。

どうも、コント作家のりきぞうです。

きょうも、コント作品をレビューしていきます。

取りあげるのは、チェーホフ『タバコの害について』。

後期の作品です。

以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。

ちなみに、松下訳で読みました。

以下、引用のページ番号は、うえの文献によります。

ストーリーの大まかな流れ

人物

ニューヒン……中年男

場所

田舎のクラブの舞台

あらすじ

妻に頼まれ、慈善活動のための講演をおこなうニューイン。

テーマは「タバコの害について」。

しかしなかなか本題にはいらず、家庭のグチばかり口にしてする。

尻にしかれる妻が来ていないのをいいことに、学校経営をして、威張りくさっている彼女をののしる。

33年間の結婚生活を悔やみ、いつのまにかトシをとった自分をなげく。

さいごに、妻のすがたをみつけ、ようやく「タバコの害」について演説をはじめるが……。

ひとこと

チェーホフらしいモチーフ。

人生をなげく人物があらわれ、思うようにいかなかった理由を妻 & 家庭におしつける。

そのほかの短編や演劇によく出てきますね。

ただし今回は、独白というスタイルをとり、見せ方を変えている。

人物の哀しみがストレートに表現され、はなしの流れもコンパクトにまとまっている。

ニューイン  (夢中になって)逃げるんだ、なにもかも放りだして、あとを見ずに逃げるんだ(……)このおれを、年とった憐れな愚か者、みじめな老いぼれの馬鹿者にしちまったこのやくざな、俗っぽい、安っぽい生活から逃げられさえすればいいんだ。あの愚かしい、くだらない、意地の悪い、悪い、悪い強欲ババアから、33年もおれをいびりつづけた家内から逃げるんだ

(p.236)

とちゅうで妻をみつけ、すかさず「タバコの煙害」の講演にシフトする。笑いのオチもちゃんとつけている。

ニューイン (モーニングをかなぐり捨てる)こいつを着て、おれはいつもいつも慈善目的の講演をやらされてきたんだ……こうしてやる!(モーニングをふみにじる)こうしてやる! (……) (わきのほうをチラッとみて、そそくさとモーニングを着る)けれども、舞台のそでには家内が立っています(……)(声を張り上げて)ただいま申しあげましたとおり、タバコには恐ろしい毒がふくまれているわけでありますからして、喫煙はいかなるばあいにもするべきではないのであります。

(p.236-237)

名作の『かもめ』や『ワーニャ伯父さん』を書いたあとに、こういうくだらない作品を書いている。

ますますチェーホフの謎は深まるばかり。

どんな性格だったんでしょうね。

笑いのポイント

笑いのポイントをみていきます。

コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。

この作品ではプロットに注目してみます。

コントのプロットはとてもシンプル。

[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

コントの書き方 ─ プロットの構成について

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。

パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。

コントの書き方 ─ プロットの展開について

ストーリーを単純化してみると、この作品は「反復」の構図をとっているとわかる。

「反復」では、状況や環境が変わっても、それまでと同じアクション、セリフ、出来事をくりかえすようすを描きます。

それによって笑いを引き起こします。

この作品でも、「タバコの害」について講演するはずのニューインが、自らの人生をなげくあまり、妻や家庭をののしる。

本題から外れていると気づくものの、ふたたび結婚生活の後悔があふれ、妻を罵倒しはじめる。

このくりかえしが笑いを引きおこす。

図にするとこんな感じ。

構図 ─ 反復
ニューイン = 妻をののしる

・講演のテーマから外れていると気づく
・結婚生活の後悔があふれる

ニューイン = 妻をののしる

ニューインのへんくつな言動が、笑いの軸になります。

まとめ

こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。

ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた。

よきコントライフを〜。