シェイクスピア『お気に召すまま』感想&レビューです。

どうも、コント作家のりきぞうです。

きょうも、コント作品をレビューしていきます。

取りあげるのは、シェイクスピア『お気に召すまま』。

後期の作品です。

以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。

ちなみに、河合訳、Kindle 版でよみました。

以下、引用のページ番号は、うえの文献によります。

ストーリーの大まかな流れ

人物

オーランド
オリバー……オーランドの兄
ロザリンド
シーリア……ロザリンドの従姉妹
公爵……ロザリンドの父

場所

公爵の宮廷&アーデンの森(フランス)

あらすじ

「オーランド」と「オリバー」は兄弟。

しかし兄オリバーは父の遺産をにぎり、弟オーランドをこき使う。

その境遇について、不満を訴えるオーランド。

目ざわりに思うオリバー。

弟を公爵のまえで披露するレスリングの大会に出場させ、「チャールズ」に倒してもらおうと企む。

一方の公爵家。

兄を追放した弟が、公爵の座におさまっている。

兄のむすめ「ロザリンド」も追いだすつもりだったが、弟のむすめ「シーリア」と仲がいいこともあり、そのまま宮廷に住んでいる。

レスリング大会当日。

チャールズの凶暴さを知るロザリンドとシーリアは、オーランドに棄権したほうがいいすすめる。

しかしまわりの予想に反して、弟オーランドはチャールズを倒してしまう。

オーランドにかけよるロザリンド。

ふたりは恋におちる。

公爵も勝利を祝うが、オーランドの父がかつての宿敵「サン・ローラン」とわかり、目の色をかえる。

機嫌をそこねた公爵は、怒りの矛先をロザリンドにむける。

数日以内に領内から出ていかなければ、罰をくだすと告げる。

命の危険をかんじたロザリンドは、男装したうえで、シーリアといっしょに、アーデンの森へ逃亡する。

オーランドもまた、兄オリバーからさらなる怒りをかい、家を焼かれ、アーデンの森へ。

再会するふたり。

しかしロザリンドは「ギャニミード」と名のり、そのすがたも男性で……。

ひとこと

喜劇ではおなじみの、変装によるドタバタ劇です。

ロザリンドが男性に化けることで、オーランドをはじめ、まわりをカンちがいさせ、ストーリーを盛りあげていきます。

ただ「訳者の解説」にもあるように、オーランドはホントはロザリンドが男装しているとわかっている。

彼(彼女)からの恋についての問いかけに、あえて知らないフリをしながら、喜んでこたえています。

観客もまた、そのようすを知ったうえで、オーランドとロザリンドの軽快なやり取りを聞き、ふたりの会話を楽しみます。

なので、プロットやストーリーで話を盛りあげるというより、シャレや掛詞(かけことば)など、セリフまわしで笑いを起こしていく作品だといえます。

またシェイクスピアによる、つぎの有名なセリフもこの『お気に召すまま』で登場します。

ジェイクィズ この世はすべて舞台。男も女もみな訳者に過ぎぬ。退場があって、登場があって、一人が自分の出番にいろいろな役を演じる。

(no.798)

かれは公爵の兄ともに、城から追放された貴族ですが、アーデンの森で暮らしいるうちに、すっかり世捨て人になり、こんなさめた考えを口にするようになります。

セリフは有名ですが、しゃべる本人は、劇の中では脇役。それが意外でした。

またジェイクィズ意外にも、道化や口が達者なコリンなどが登場し、気の利いたセリフをポンポン口にします。

シェイクスピアはストーリーだけでじゃなくて、知恵の宝庫だと言われるのもうなづけますね。

コリン 金と力と満足のないやつには、いい友だちが三人いないってことだ

(no.902)

道化 「もしも」っていうのは、唯一無二の仲裁役です。大した言葉ですよ、「もしも」っていうのは。

(no.1872)

笑いのポイント

笑いのポイントをみていきます。

コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。

この作品ではプロットに注目してみます。

コントのプロットはとてもシンプル。

[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

コントの書き方 ─ プロットの構成について

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。

パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。

コントの書き方 ─ プロットの展開について

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「交錯」だとわかります。

「交錯」では、1人の人物が、真相を隠したり、ワナをしかける。それにより、カン違いする人物が、スジ違いのセリフを吐いたり、行動に出たりする。

そのようすが笑いを引き起こす。

この作品でも、「ギャニミード」に男装するロザリンドが、恋する相手オーランドにワナをしかける。

この展開が笑いをおこします。

図にするとこんなかんじ。

構図 ─ 交錯
ロザリンド ≠ ギャニミード

・恋をしているかとたずねる
・オーランドの本心を聞きだす

ロザリンド = ギャニミード

フツーの喜劇なら、変装に気づかない周囲がダマされつづけ、そのようすが笑いをおこしていく。

ただし、オーランドはロザリンドの男装をわかっていて、おたがいにあえて演技したうえで会話をたのしむ。

さらにそのようすをみる観客も、そのねらいを自覚し、劇をたのしむ。

ありきたりな喜劇とはちがい、すこし高級な笑いをもとめる作品だといえますね。

まとめ

こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた。

よきコントライフを〜。