モリエール『飛び医者』感想&レビューです。

どうも、コント作家のりきぞうです。

きょうも、コント作品をレビューしていきます。

取りあげるのは、モリエール『飛び医者』。

制作年代は不明ですが、モリエールが若いころ、地方巡業しているときに、つくった喜劇とされています。

以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。

ちなみに、鈴木力衛訳、全集本で読みました。

以下、引用のページ番号は、うえのの文献によります。

また2000年には、べつの翻訳も出ています。

わりと読みやすいです。

よければチェックしてみてください。

ストーリーの大まかな流れ

人物

リュシール
ヴァレール……その恋人
スガナレル……ヴァレールの召し使い
ゴルジビュス……リュシールの叔父

場所

ゴルジビュスの自宅前

あらすじ

リュシールとヴァレールは恋人同士。

しかし、リュシールの育ての叔父「ゴルジビュス」は認めない。

財産もちの「ヴィルブルガン」との結婚をせまり、かのじょを家から一歩も出さない。

そこでヴァレールは、召し使い「スガナレル」を医者にしたて、ゴルジビュス宅に潜入させる。

リュシールを、ヴァレールとこっそり話ができる部屋へつれていき、自宅から連れ出すプランをたてる。

医師の権威をたてに、ゴルジビュスをだまし、リュシールを連れだす「スガナレル」。

けれど、そのかえりみち、変装まえのすがたを、ゴルジビュスにみられてしまう。

召し使いすがたのスガナレルは、「ナルシス」と名のり、自分には顔そっくりの兄がいるとウソをつく。

いまは絶縁状態で「顔もみたくない」とダマす。

しかし人情味のあるゴルジビュスは、兄弟の仲をとりもとうとする。

ことわりきれないスガナレルは、兄/弟の役をいったりきたりするハメになり……。

ひとこと

喜劇とされていますが、一幕もので、長さでいえば、ヴォードヴィルやコントにちかいです。

セリフやプロットもあっさりしてて、とても読みやすい。

このあとモリエールの作品では、スガナレルというキャラがたびたび登場します。

『飛び医者』はそのプロトタイプにあたる作品。

さいしょから計略好きで、人をダマすのを生きがいにしてます。

モリエール初期の作品ですが、この時点で、キャラクターがすでにであがっています。

笑いのポイント

笑いのポイントをみていきます。

コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。

この作品ではプロットに注目してみます。

コントのプロットはとてもシンプル。

[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

コントの書き方 ─ プロットの構成について

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。

パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。

コントの書き方 ─ プロットの展開について

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「交錯」だとわかります。

「交錯」では、1人の人物が、真相を隠したり、ワナをしかける。それにより、カン違いする人物が、スジ違いのセリフを吐いたり、行動に出たりする。

そのようすが、笑いをおこします。

この作品でも、召し使いすがたをみられたスガナレルが、ゴルジビュスにたいして、「先ほどリュシールを診た医者は、顔そっくりの弟だ」とウソをつく。

そして「憎んでいて、顔もみたくない」というウソが裏目に出て、ゴルジビュスの善意から、ふたりを引き合わせようとする。

それにより、医師に変装していた事実がバレないよう、スガナレルが、兄弟の役を交互に演じる。

この右往左往するようすが、笑いをひきおこす。

図にするとこんな感じ。

構図 ─ 交錯
召し使い = スガナレル = 医師

・医師は「兄」だとウソをつく
・兄弟の役をいったりいたり
・あわただしく衣装をチェンジ
・じょじょにバレていく

召し使い = スガナレル ≠ 医師

「交錯」による笑いのポイントは、真相が明らかになるまでのプロセス。

まわりの状況が変わり、ダマした人物が追いつめられたり、カン違いする人物がスジ違いの行動にでたり。

アタフタしたようすを、どれだけおもしろく描けるかで、作品のよしあしが、きまります。

本作ではほかに、スガナレルにたいして、むずかしいラテン語で話しかけたり、「兄弟が握手するすがたをみたい」などと要求することで、彼を追いつめていく。

窮地に追いこまれ、なんとかきりぬけようと、ドタバタするさまが、笑いをおこしていきます。

まとめ

こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。自分でつくるときにも役立ちます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた。

よきコントライフを〜。