モリエール『人間嫌い(ル・ミザントローブ)』感想&レビューです。

どうも、コント作家のりきぞうです。

きょうも、コント作品をレビューしていきます。

取りあげるのは、モリエール『人間ぎらい』。

中期の作品で、彼の代表作と言われています。

以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。

ちなみに、鈴木力衛訳、全集本で読みました。

以下、引用のページ番号は、うえの文献によります。

一般的には、内藤訳のほうが普及しています。

また、2000年には、べつの翻訳も出ています。

わりと読みやすいです。

よければチェックしてみてください。

ストーリーの大まかな流れ

人物

アルセスト
セリメーヌ……アルセストの恋人
フィラント……アルセストの友人

場所

パリ、セリメーヌの家

あらすじ

真っ正直なアルセスト。自分はもちろん、他人にたいしても、正しさ & 公正さをもとめる。

ウソがつけず、いつもホンネを口にする。お世辞も、愛想よく接することもできない。

そのために、まわりから恨まれやすく、裁判ざたをおこす。

そのいっぽうで、ハデで、浮気性で、人間関係にしたたかなセリメーヌに恋をしている。

アルセストはセリメーヌにたいして、ひっきりなしにお客さんを招くのをやめるよう説得する。

さらに、お世辞を連発し、そのウラでかげ口をたたく彼女の性格をなおそうとするが……。

ひとこと

極端に「誠実さ」「公正さ」をもとめるアルセスト。

この特異な性格がストーリーを動かしていく。

たとえば「融通がきかし、友だちにも恋人もお世辞のひとつでも言ってみたら?」という友人にたいして、こんなセリフを口にする。

アルセスト 愛情が深ければ深いほど、お世辞を言ってはならないんだ。真の愛情は、なにひとつ容赦しないところに、はっきりあらわれる。自分の意見に盲従し、なにかにつけて愚にもつかなぬおべんちゃらを言い、誤った言動をあおりたてるような恋人は、ぼくなら片っぱしから追い出してやるよ。

(p.188)

とはいえ、モリエールの代表作と言われているが、そこまでおもしろい作品ではありません。

ひとつひとつのセリフが長く、会話のやりとりも回りくどいかんじです。

プロットの軸もあやふやで、ストーリーとしても、やや盛り上がりに欠けます。

哲学者「ルソー」は、この作品を高く評価していました。

けれど、それは「公正」「誠実」というテーマに注目したから。

エンタメとしてみれば、そこまでレベルは高くありません。

じしつ、興行としての成果もふるわなかったようで、モリエールが力を注いだわりには、評価も低かった。

もちろん「性格喜劇」の傑作と言われるので、キャラクターに注目すれば、そこそこ楽しむことはできます。

たとえば、「正直さ」をもとめるアルセストが、セリメーヌのウラの顔を知ってもなお、恋ごころをすてられないセリフ ─ 。

アルセスト ぼくたちを賢人と呼ぶのは間違いで、だれの心のなかにも人間が住んでいることを証明してさしあげましょう。

(p.234)

ここなんかは、キャラとして、おもしろいです。

モリエールの人柄がみえかくれして、それなりに興味ぶかいですね。

笑いのポイント

笑いのポイントをみていきます。

コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。

キャラクターに注目すると、まわりの「柔軟さ」にくらべ、過剰なくらい「正しさ」を追いもとめるアルセストの性格が、笑いの軸になっている。

相手をほめるべき状況でも、真っ正直にけなしてみたり、お世辞まみれの世の中に嫌気がさして、山ごもりをしてみようとしたり……。

アルセストの極端な「潔癖さ」が、まわりの雰囲気から浮き、それが笑いをおこす。

プロットに注目すると、アルセストの恋人セリメーヌが、バカ正直な彼を出しぬいて、ウラで好き勝手にふるまう。

かげ口をたたかれているとも知らず、セリメーヌの「清らかさ」を信じ、彼女にたいして「公正さ」ををもとめる。

ダマさせるようすが笑いをひきおこす。

コントの「展開」にはパターンがあり、「反転」「逆転」「交錯」の3つに分けられる。

コントの書き方 ─ プロットの展開について

ストーリーをたどっていくと、この作品は「交錯」の構図をとっているとわかる。

「交錯」では、ひとりの人物が、真相を隠したり、ワナをしかける。それにより、カン違いする人物が、スジ違いのセリフを吐いたり、行動に出たりする。

そのようすが笑いを引き起こす。

この作品でも、セリメーヌのウラの顔をしらないアルセストが、もちまえのバカ正直さをふりかざし、まわりに彼女の「潔癖さ」を訴える。

それにより、滑稽さがうまれる。

図にするとこんな感じ。

構図 ─ 交錯
ウソつき&毒舌家 ≠ セリメーヌ

・セリメーヌにホレるアルセスト
・彼女の「潔癖さ」を訴える

ウソつき&毒舌家=セリメーヌ

とはいえ、のべたとおり、この作品はキャラクターで笑いを取ろうとしています。

なので、プロットはそこまで洗練されていません。

「公正さ」というテーマを追求するあまり、エンタメとしての楽しさは半減しているようにみえます。

思想的な視点でみれば、それなりの深さはあるのかもです。

けれど、個人的にはテーマとしても、あまりピンときませんでした。

このあたりは好みの問題ですね。。

まとめ

こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。自分でつくるときにも役立ちます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた。

よきコントライフを〜。