モリエール『ドン・ジュアン』感想&レビューです。

どうも、コント作家のりきぞうです。

取りあげるのは、モリエール『ドン・ジュアン』。

中期の作品です。
以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。

ちなみに、鈴木力衛訳で読みました。

以下、引用のページ番号は、うえの文献によります。

また2000年には、べつの翻訳も出ています。

わりと読みやすいです。

よければチェックしてみてください。

ストーリーの大まかな流れ

人物

ドン・ジュアン
スガナレル
エルヴィール……ドン・ジュアンの恋人

場所

海岸、森、邸宅(など)

あらすじ

女たらしのドン・ジュアン。

婚約者のエルヴィールをすて、べつの女をゲットするため、旅に出ている。

追いかけてきたエルヴィールにたいして、「あなたを修道院から連れ出したことで、神の裁きがおそろしくなった」とテキトーな言いわけをでっちあげる。

ナンパしてるところを目撃した恋人マチュリーヌには「むこうが勝手にホレた」「迷惑している」とやり過ごす。

だらしないドン・ジュアンに、付き人のスガナレル は、あきれ顔。

そのうちほんとうに神さまからバチがあたると警告する。

それでも、妹をギスモノにした罪で、報復にやってきたエルヴィールの兄弟との決闘もうまく回避、父親からの「お叱り」を受けながす。

悪徳のかぎりを尽くすドン・ジュアン。

怖いものなしの彼だったが、旅のとちゅう、いぜん自分が殺した騎士たちの墓にたどり着く。

亡き姿をかたどった石像がおかれ「本人とは似ても似つかない」とバカにするが、その石の目がスガナレルをにらみつける。

バチがあたると予感するスガナレルは、これ以上の悪事をやめるよう警告するが……。

ひとこと

「性格喜劇」といわれるだけあって、ドン・ジュアンのキャラクターが前面に出ている作品。

ずるがしこく、「悪党」にふさわしい人物だが、なかでも「偽善」についての考えは、注意をひきます。

ドン・ジュアン 頭をぴょっこりと下げ、信心ふがそうなため息をつき、目の玉をくりくりさせれば、あとはなにをしようと結構世間体がつくろえるんだ。この都合の好い隠れ家に逃げこんで、おれは身の安泰を計ろうと思うんだ〔……〕

(p.122)

悪徳のなかでも偽善がいちばん「おトク」だと言いはなち、卑劣な付き人のスガナレルもビックリさせます。

セリフの背景には、モリエールが前年に『タルチュフ』という「ペテン師」をあつかった喜劇を発表したものの、王国から上演禁止の命令をくだされたできごとがあります。

たしかに当時の状況を反映しているかもです。

けれど、ドン・ジュアンの指摘は、いつでもどこでもあてはまります。

古典とはいえ、いま読んでも、共感できますね。

作品の方向性としては、観てる人を「いましめる」内容です。

とはいえ、彼のコトバは、ここちよく、ホンネをついています。

たとえば、やりたい放題のむすこにアタマを悩ませる父親にたいしては、こんなセリフをはきます。

ドン・ジュアン さあさあ、できるだけ早くお死になさい、それがいちばん利口なやり口だ。世間は廻り持ち、息子と同じくらい生きているおやじを見ると、胸がむしゃくしゃするよ。

(p.105)

いまの高齢者がきいたら張りたおしたくなる発言ですね。

けれど、どこかマトをえているように思えます。

笑いのポイント

笑いのポイントをみていきます。

コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。

この作品ではプロットに注目してみます。

コントのプロットはとてもシンプル。

[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

コントの書き方 ─ プロットの構成について

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。

パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。

コントの書き方 ─ プロットの展開について

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「反復」だとわかります。

「反復」では、状況や環境が変わっても、それまでと同じアクション、セリフ、出来事をくりかえすようすを描きます。

それによって笑いを引き起こします。

この作品でも、ドン・ジュアンが悪徳をくりかえし、まわりの人たちをつぎつぎにダマしていく。

図にするとこんな感じ。

構図 ─ 反復
ドン・ジュアン = 悪党

・恋人をすてる
・父親をバカにする
・偽善でもって、神を利用する

ドン・ジュアン = 悪党

ただし、この喜劇では「反復」の構図が前面に出ているわけではありません。

どちらかといえば、キャラクターメインで、プロットによる笑いは、おさえられているかんじ。

「反復」を意識する作品なら、場面ごとに、まったくおなじセリフやアクションをくりかえす。

こうすることで、効果的に笑いを生みだすことができます。

もちろんモリエールくらいになれば、それくらいの技能はあります。

けれど、本作では「性格=キャラ」にスポットをあてて制作しているわけですね。

まとめ

こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。自分でつくるときにも役立ちます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた。

よきコントライフを〜。