モリエール『ゴリ押し婚(強制結婚)』感想&レビューです。

どうも、コント作家のりきぞうです。

取りあげるのは、モリエール『ゴリ押し婚』。

初期から中期ごろの作品です。

以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。

ちなみに、鈴木力衛訳、全集本で読みました。

以下、引用のページ番号は、うえのの文献によります。

また2000年には、べつの翻訳も出ています。

わりと読みやすいです。

よければチェックしてみてください。

ストーリーの大まかな流れ

人物

スガナレル
ドリメーヌ……スガナレルの婚約者
ジェロニモ……スガナレルの友人

あらすじ

52歳で、はじめて結婚を考えるスガナレル。

はなしをきくジェロニモは「やめたほうがいい」と説得する。

けれど、スガナレルは聞く耳をもたない。

体力&知力をじまんし、結婚生活に自信をみせる。

スガナレル このわたしが嫁をとるのはもう不自然、そう見えますかな? やれ、トシはいくつ、そんな話はまっぴら、それよりいま現在のわたしを見てください。これくらいピチピチと元気旺盛な男は、三十代にもまずいないでしょう?

(p.38)

しかし婚約者のドリメーヌは、彼に会うなり、今後の結婚生活のあり方について、いきなり自分の考えを述べはじめる。

ハデなくらしをもとめる彼女に、スガナレルはドギマギするが、さらに、ドリメーヌがほかの恋人をかこっていることが判明する。

自信は消えうせ、スガナレルは彼女の父親に、結婚のことわりを申しこもうとする。

しかしドリメーヌの一家は、なにより「たてまえ」を重んじる人たちばかり。

スガナレルの申し出に、父親はにこやかに了承するが、すぐさまその報復として、剣術の達人であるドリメーヌの兄を送りこむ。

スガナレルに剣を投げわたし、決闘を申し込むが……。

ひとこと

金もちのスガナレルが、ドリメーヌ一家に手玉にとれる ─ これが、笑いの軸です。

ずるがしこドリメーヌもなかなか魅力的。

けれどそれ以上に、「礼儀」をやたら重んじる父親&兄のキャラクターが、ほんとおもしろい。

アルシダス ほかの人たちなら、騒ぎ立てもするでしょう、あなたに食ってかかるかもしれません。しかし、万事おだやかに事を運ぶのがわたくしどもの流儀です。で、作法どおりお伝えにまいりました、お差し支えなければわれら両人、首の斬り合いをするのがなによりと存じますが。

スガナレル 迷惑千万なごあいさつですな!

(p.66)

ふたりのヘンクツな性格をベースに、こんなやり取りがつづいていく。

サラッと受けながすスガナレルのセリフも、すばらしいです。

なめらかなセリフまわしを学びたいなら、モリエールのシナリオを研究するといいかもです。

笑いのポイント

笑いのポイントをみていきます。

コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。

この作品ではプロットに注目してみます。

コントのプロットはとてもシンプル。

[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

コントの書き方 ─ プロットの構成について

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。

パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。

コントの書き方 ─ プロットの展開について

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「逆転」だとわかります。

「逆転」では、ひとつの出来事をキッカケに、それまでの立場が反転するようすを描く。

人物の地位や権威をひっくり返すことで、笑いを生み出していく。

この作品でも、スガナレルが、まわりの反対を押しきり、ドリメーヌを強くもとめる。

けれど、「金づかいの荒さ」「恋人との浮気」にうろたえ、結婚を断ろうとする。

しかしドリメーヌの家族からの強要(=ゴリ押し)により、したくもない結婚をすることになる。

結婚をのぞむ者が、反対に、結婚を強制される。

優位な立ち位置のスガナレルが、フリな立場におとされる。

この反転ぶりが、笑いをおこしていきます。

図にするとこんな感じ。

構図 ─ 逆転
スガナレル > ドリメーヌ

・ドリメーヌの浮気が発覚
・礼儀をだいじにするドリメーヌ一家
・ことわるスガナレルに決闘をもうしこむ
・スガナレルに結婚を強いる

スガナレル < ドリメーヌ

また、サブプロットとして、結婚をやめようと考えるスガナレルが、ふたりの哲学者やジプシー女に相談するはなしが挿入される。

マトをえないアドバイスに、イライラするスガナレル。

これはこれでおもしろいが、セリフまわしにしまりがなく、ストーリーの展開としては、すこし余計かもです。

ここをカットすれば、よりコンパクトにまとまり、もっと読みやすくなっていたはず。

まとめ

こんなふうに、プロットに注目すると、よりコントを楽しめる。

また、おもしろい作品にたいして、自分ならどこを削るか、どの点を改良するか ─ 。

こんな視点をもって読んでいくと、じっさいに自分で作品をつくるときに役にたちます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた。

よきコントライフを〜。