どうも、コント作家のりきぞうです。
きょうも、コント作品をレビューしていきます。
取りあげるのは、モリエール 『恋は医者』。
中期の作品です。
以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。
ちなみに、鈴木力衛訳、全集本で読みました。
以下、引用のページ番号は、うえの文献によります。
また2000年には、べつの翻訳も出ています。
わりと読みやすいです。
よければチェックしてみてください。
目次
ストーリーの大まかな流れ
人物
スガナレル
リュサンド……スガナレルのむすめ
リゼット……リュサンドの女中
クリタンドル……リュサンドの恋人
場所
パリ、スガナレル家の一室
あらすじ
妻が亡くなり、気をおとすスガナレル。
それにくわえて、気がふさぎがちはむすめリュサンドも心配のタネに。
解決をまわりにたずねるが、疑いぶかい性格のため、アドバイスをもらっても、あいての下心をついてばかりで、聞く耳をもたない。
しかたなしに、むすめに気がふさぐ理由をたずねる。
きけば、じつは母を亡くしたから、落ちこんでいるのではなく、恋しているためにアタマを悩ましているとのこと。
不機嫌になる父のスガナレル。
予想どおりのリアクションに、むすめはさらに悩む。
見かねた女中のリゼットは策を練る。
スガナレルにむすめが病にふしたとダマし、リュサンドの想い人クリタンドルを医者に変装させ、じかに会わせることに。
なにも知らないスガナレル。
「元気になるおまじない」と称して、リュサンドにプロポーズするクリタンドルの行為をだまって見すごす。
本気でプロポーズされたと信じこむむすめをバカにするが……。

ひとこと
三幕のみじかい劇。
コンパクトで読みやすいです。
ストーリーも、[むすめの結婚に反対する父 → 反発するむすめ → 策をほどこす女中]といったながれで、モリエールがオハコとするモチーフ。
「またか……」とおもうが、オープニング、エンディング、幕間で、音楽の指示が具体的に書きこまれている。
なので、ストーリーやテーマで魅せるというより、演出メインで観客を楽しませるかんじ。
とはいえ、むすめの結婚をなんとか阻止しようとし、意固地になるスガナレルのキャラクターはおもしろい。
たとえばストーリーのはじめ、むすめの体調を回復させるためのアドバイスをもとめるシーン。
それぞれの人たちから意見をきいたあとのセリフは、ヘンクツぶりが発揮され、笑える。
スガナレル (……)いまの忠告は、いちいちごもっとも。だが、いささかの下心があるようですな。(……)ジョスさん、あなたは金銀細工師だ。あなたの忠告は、売れ残りの品を押しつけようとする商人の匂いがぷんぷんする。ギョームさん、あなたは壁掛けを売っていらっしゃる。どうやら商売になりそうもない品をお持ちのようですな。お隣の奥さん、あなたの好きな男が、うちの娘を憎からず思っているというのは評判ですぜ。(……)それから、わしの姪のリュクレース、(……)あの娘を修道院に入れてしまえというのは、わしの遺産をそっくりもらい受けようとねらっている女の、慈悲ぶかい忠告としか思えないね。
(p.163-164)
それぞれがスガナレルにどんなアドバイスをしたのか。
本文でチェックしてみてください。
そのほか、スガナレルが女中の策にまんまとひっかかる展開も楽しい。
たとえば、医者に扮する、むすめの恋人クリタンドルがこんなことを口にする。
クリタンドル (……)わたしが訪ねて来たのは結婚の申し込みのためだと申しました。するとたちまち、お嬢さんは相好をくずし、顔色もよくなり、目にも活気が出てまいりました。このまましばらくお嬢さんを騙しておおききなれば、やがて危険は去るものと思われます。
(p.195)
この意見について、プロポーズを治療法のひとつだと信じこむスガナレルは、クリタンドルの行為をだまって見すごす。
さらにむすめに同情する。
リュサンド 本気なの、お父さま?
スガナレル そうとも、そうとも。 (……)
リュサンド お優しい愛情のしるし、心からお受けいたしますわ。
スガナレル (傍白)やれやれ、ばかな娘さ! なんという気違い娘だろう!
(p.196)
そのままむすめと恋人は結婚し、エンディングをむかえる。
しっかりと笑いのキホンを築いてる作品。
サクッと基礎を学ぶにはいいかも。
笑いのポイント
笑いのポイントをみていきます。
コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。
この作品ではプロットに注目してみます。
コントのプロットはとてもシンプル。
[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。
なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。
パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。
ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「交錯」だとわかります。
「交錯」では、ある人物が、真相を隠したり、ワナをしかける。それにより、カン違いする人物が、スジ違いのセリフを吐いたり、行動に出たりする。
そのようすが笑いを引き起こす。
この作品でも、むすめの恋人クリタンドルを「医者」と思いこむスガナレルが、プロポーズを治療法のひとつと信じこむ。
そのままむすめと恋人の結婚をみとめてしまう。
この展開が笑いをおこす。
図にするとこんな感じ。
・リュサンドに近づく
・プロポーズする
・スガナレル、だまって見すごす
恋人 = クリタンドル ≠ 医者
まとめ
こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。
ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。ちがう記事ものぞいてみてください。
ではまた。
よきコントライフを〜。



