どうも、りきぞうです。
大学のころから、文学に親しんできました。
大学院時代は、人文社会系にすすみ、海外の古典文学を、片っぱしから読んでいきました。
同じように、海外文学に、ふれてみようかぁと思っている人も多いかと。
とはいえ、
・たくさんあって、どれから目を通せば良いのか、わからない
・とくにおすすめの作品は、どれ?
─ こんな悩み&疑問をいだく人も多いはず。
答えは、つぎのとおり。
りきぞう
・年代順に読んでいくと、世界文学の流れが、よくつかめる
・時間がない人は、『オデュッセイア』『ハムレット』『ドン・キホーテ』『カラマーゾフの兄弟』の4冊がおすすめ
古典とはいえ、その作品は、膨大です。
そのなかでも、個人的におすすめな本を「20冊」ほどピックアップしてみます。
一覧をあげると、こんなかんじ。
・ホメロス『オデュッセイア』
・オウィディウス『変身物語』
・ダンテ『神曲』
・ボッカチオ『デカメロン』
・シェイクスピア『ハムレット』
・セルバンテス『ドン・キホーテ』
・スウィフト『ガリヴァー旅行記』
・ジェイン・オースティン『高慢と偏見』
・エミリー・ブロンデ『嵐が丘』
・バルザック『ゴリオ爺さん』
・ディケンズ『デイヴィッド・コパフィールド』
・メルヴィル『白鯨』
・フローベール『ボヴァリー夫人』
・トルストイ『戦争と平和』
・ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』
・チェーホフ『かもめ』
・プルースト『失われた時を求めて』
・カフカ『変身』
・ガルシア=マルケス『百年の孤独』
リストアップした作品にふれておけば、海外文学の古典は、ある程度カバーできます。
そのうえで、年代順にくだりながら読めば、全体の流れが把握できます。
とはいえ、時間がない人は、
・シェイクスピア『ハムレット』
・セルバンテス『ドン・キホーテ』
・ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』
の4冊に目を通すのが良いです。
文学作品はもちろん、ほかの芸術作品にも影響をあたえたからです。
以下、目次にそって、[著者 → あらすじ]をあげつつ、みていきます。
海外文学の古典を読むうえで、参考にしてみてください。
※ ちなみに、ほとんどはヨーロッパの作品からピックアップしました。今後、中東・中国からもリストに取りいれる予定です。()
目次
???『ギルガメッシュ叙事詩』
| 成立年 | BC.2000年ごろ? |
| 構成 | 12枚の書版 |
著者
具体的な著者は、わかっていません。
世界最古の文学作品とされます。
最古の写本は、BC.1000年ごろに書き写された「シュメール語版ギルガメシュ諸伝承」です。
BC.2000年〜BC.3000年のあいだに、文字化されていたと考えられますが、オリジナルは残っていません。
テキスト化以前は「口承」で伝わっていたとされます。
12枚の書版から構成されます。
あらすじ
ウルク市の王「ギルガメシュ」は、英雄であると同時に暴君でもあった。
横暴さに困り果てた住人たちは、天神「アヌ」に訴える。
アヌは、女神「アルル」に、ギルガメシュのライバルをつくり出すように命じる。
粘土から「エンキドゥ」をつくり、荒野にそえた。
さいしょ、みずからの使命に気づいていないエンキドゥだったが、巫女から「ギルガメシュ」のことを聞かされる。
「仲間になれる」と思ったエンキドゥは、市街地・ウルクに向かう。
同じ時期、夢でエンキドゥがやってくることを知るギルガメッシュ ─ 。
ふたりは、じかに会うまえから、お互いを意識する。
しかし、向かう途中、ギルガメシュが「他国の花嫁を奪った」というはなしをを耳にする。
その暴挙に怒りをあらわにしたエンキドゥは、ギルガメッシュに会った瞬間に、闘いを挑む。
結果は、五分五分。
争うなかで、お互いの力を認める、ギルガメシュとエンキドゥだったが……
ひとこと
4000年以上まえのはなしと思えないくらい、ストーリーがしっかりした作品です。
「夢」「使命」「ライバル」「冒険」など、ひとむかしの少年ジャンプをみているような、おもしろさがあります。
さらに後半になると、ギルガメシュ/エンキドゥの運命が分かれていき、そこも見どころになっています。
分量もほどよく、2日もあれば、読了できます。
ぜひ世界最古の文学作品を、堪能してほしいと思います。
ホメロス『オデュッセイア』
| 成立年 | BC.800年ごろ? |
| 構成 | 全24歌 |
著者
著者は、ギリシャ詩人「ホメロス」です。
とはいえ、ひとり実在したのか、複数の人物が順々で名乗っていったのか、はっきりしていません。
さいきんでは、前者の「実在説」が、有力だそうです。
『オデュッセイア』は『イリアス』の続編にあたります。
どちらも、BC.800年ごろに成立したとされています。
長編の叙事詩では、古代ギリシアで、もっとも古い文学作品です。
あらすじ
トロイア戦争に参加した英雄「オデュッセウス」は、みずからの策で、トロイアを滅ぼすことに成功する。
しかし、滅亡させたことで、神々の怒りにふれたかれは、故郷「イタケ」に帰ることが許されない。
いっぽう故国では、オデュッセウスの妻と、むすこ「テレマコス」が、無法者の手にかかり、危機に陥っていた。
一刻もはやく、帰還が望まれるオデュッセイア ─ 。
しかし、神々の試練 or ワナにより、帰ろうにも、帰れない。
それでも、みずからの智謀を発揮し、障害をのりこえていくが……
ひとこと
個人的には、『イリアス』より断然おもしろいです。
『イリアス』では、トロイア戦争の背景&展開をあつかいます。
戦争シーンは迫力がありますが、それまでの人物関係・事件までのあらましが長く、かなり退屈です。
いっぽう『オデュッセイア』は、トロイア戦争の参謀「オデュッセウス」の冒険譚となっています。
ストーリー展開が早く、先が知りたくて、ついついページをめくってしまいまうす。
また、かれが危機をのりこえるさいのふるまいは、わたしたちが生きるうえでも、学ぶトコがたくさんあります。
ヨーロッパの創作家・思想家が、なにかと引用 or アレンジするのも、わかるような気がします。
オウィディウス『変身物語』
| 成立年 | AD.10年ごろ |
| 構成 | 全15巻 |
著者
著者は、オウィディウス。
古代ローマ人で、BC.43年〜AD.17年ごろに生きた人です。
ローマ初代皇帝「アウグストゥス」の支援のもと、『愛の歌』『恋の技法』など、さまざまな詩をつくりました。
本書『変身物語』も、そのひとつです。
叙事詩の形式で詠まれた、物語作品です。
構成は、全15巻。
ギリシア・ローマ神話の登場人物たちが、
・植物
・鉱物
・星座
などに変身 ─ 。
それぞれのエピソードを集めた、おはなしになっています。
あらすじ
作者みずから、顔を出し、
↓
・大洪水
↓
・月桂樹になったダプネ
↓
テーベの建国
の順番で、ギリシャ・ローマ神話の「変身譚」を語っていく。
冒険・男女の愛憎・殺人事件など、人間と変わらない神々が、さまざまな悲劇/喜劇をくりかえす。
ひとこと
ギリシャ神話は名まえ or 時代背景を読みとるのがムズかしいです。
けれど『変身物語』は、前提知識がなくても、そのままで読みすすめることができます。
というのも、どのエピソードも、エンタメ性が高く、それ自体のストーリーで、楽しめるからです。
つながりはありますが、キホン「1話完結」なので、短編小説のように味わえます。
ダンテ『神曲』
| 成立年 | 1300年ごろ |
| 構成 | 全3部 |
著者
著者は、ダンテ。
都市国家「フィレンツェ」の詩人・哲学者で、1265年〜 1321年ごろに生きた人です。
ルネサンス文化の先駆者とも言われています。
本書『神曲』は、
・煉獄篇
・天獄篇
の3部構成。
古代ローマの詩人「ウェルギリウス」と導かれて、主人公「ダンテ」が、[地獄(Inferno) → 煉獄(Purgatorio) → 天国(Paradiso)]を渡り歩く内容になっています。
創作の背景には、ダンテが幼少期に出会い、24歳で早死した「ベアトリーチェ」の存在があります。
かのじょへの絶対賛美から、『神曲』はつくられた、とされます。
あらすじ
ユリウス暦1300年の聖金曜日(=復活祭前の金曜日)。
森に迷い込んだ「ダンテ」は、古代ローマの詩人「ウェルギリウス」に出会う。
かれに導かれて、[地獄 → 煉獄 → 天国]と、彼岸の世界を巡っていく。
それぞれの階層では、ギリシャ神話&聖書&歴史上の人物が、登場。
現世でのふるまいに合わせて、おのおの、あつかいをうけている。
たとえば、
・恋ゆえに死地にむかった「アキレウス」
・みだらな婦人「クレオパトラ」
かれらは「地獄の階層」で、「肉欲の罪」により、暴風にさらされている。
地獄に堕ちた人物をみたのち、ウェルギリウスは「煉獄山」へ連れていく。
山を登るにつれて、ダンテ自身の罪が清められ、清浄な精神をとりもどす。
山頂にたどりつくと、ウェルギリウスと別れる。
同時に、淑女「ベアトリーチェ」と再会し、かのじょの導きで天界へと登っていく……
ひとこと
かなり壮大な物語です。
とはいえ、ショージキ、すべて読み通すのは、かなりシンドイです。
とくに、煉獄篇の中盤あたりから、ストーリーが〝一辺倒〟になり、飽きが出てきます。
いっぽう「地獄篇」は、神話&歴史上の人物が、たくさん登場 ─ 。
なじみのある人物が、あの世で、どんなあつかうを受けているのか ─ ダンテなりの解釈が入っていて、かなり楽しめます。
個人的には、地獄篇を読んで、それなりに満足したら、『神曲』を離れて良いかなぁと思います。
ポッカチオ『デカメロン』
| 成立年 | 1350年ごろ |
| 構成 | 全100話 |
著者
著者は、ジョヴァンニ・ボッカッチョ。
中世フィレンツェの詩人・散文作家で、1313年〜1375年に生きた人です。
幼少期からダンテ作品に親しみ、かれの影響を受けて、創作活動をおこなったとされます。
じつは、ダンテ『神曲』は、はじめ「戯曲(Commedia)」というタイトルでした。
それに「神聖なる(Divina)」の付け、『神曲(La Divina Commedia)』の名を定着させたのはボッカッチョです。
本書『デカメロン』も、『神曲』の影響を受けています。
後年の人から、ダンテの『神曲』に対して、『人曲』とも呼ばれたりします。
ダンテは「あの世」をあつかいましたが、ポッカチオは「この世」─ わたしたちが生きる悲喜こもごもを描いたからです。
「デカメロン」とは「十日物語」の意味。
ポッカチオが生きた1348年に、ペストが大流行。
感染を逃れるため、男3人+女7人が、フィレンツェ郊外の山荘にこもる。
退屈しのぎため、ちょっとした小話をするというかたちで、おはなしがスタートします。
10人が10話ずつ語り、全100話から構成されます。
あらすじ
10日間、10人が、それぞれ小話を語っていく。
1日ごとにテーマが決められ、語り手は、それに合わせて話していく。
具体的なテーマは、つぎのとおり。
・苦難のあと、成功 or 幸福を得た人物
・熱望したもの or 失ったものを手に入れた人物
・不幸な恋人たち
・不幸のあと、幸福で出会った恋人たち
・うまい返答で、危機を脱した人物
・夫をだました妻
・お互いにだます男女
・自由テーマ
・気高く、寛大にふるまった人物
ひとこと
はなしの設定が、「ペストから逃れ、引きこもる山荘で語り合う」ということで、「コロナ時代」のいま、ふたたび注目されはじめた作品です。
とはいえ、内容をみれば、そこまでペストにまつわるはなし、というわけではありません。
どちらかといえば、恋愛 or 結婚など、男女の愛憎を描いたものが、多いです。
片意地はらずに、気楽に読むのが、おすすめです。
キホン、1話完結なので、短編小説のように味わうのがベターです。
シェイクスピア『ハムレット』
| 成立年 | 1600年〜1602年ごろ |
| 構成 | 全5幕 |
著者
イギリスの劇作家・詩人で、1564年〜1616年に生きた人です。
戯曲ながらも、するどい心理描写で、英文学の土台を築きました。
あらすじ
デンマークの王子「ハムレット」 ─ 。
亡き父王の亡霊があらわれ、みずからの死因が「おじの策略」によるものだ、と告げられる。
復讐を果たすため、おじのまえで、かれは狂人を演じる。
しかし内向的で道徳心のつよいかれは、恨みをはらすため、ほんとうに「おじを殺害するのか」悩み、苦しむ。
いっぽう、かれの変わり果てたすがたをみた、恋人「オフィーリア」も、正気を失っていき……
ひとこと
シェイクスピア「4大悲劇」のうちの1つです。
悩み、苦しむときに出たセリフ「To be, or not to be」は、あまりに有名ですね。
ハムレットの〝モンモンぶり〟もさることながら、個人的には、恋人「オーフィリア」の〝狂いっぷり〟のほうが、すさまじい気がします。
分量もほどよく、2、3日あれば、読めてしまえます。
セルバンテス『ドン・キホーテ』
| 成立年 |
前編:1605年 後編:1615年 |
| 構成 |
前編:全45章 後編:全74章 |
著者
スペインの作家で、1547年〜1616年に生きた人です。
下級貴族の次男として生まれました。
青年のころに、スペイン海軍に入隊し、『レパントの海戦』(1571年)に参加しました。
かれの人生は、スペイン帝国の衰退期とかさなり、作品にも反映されている、といわれます。
あらすじ
「騎士道物語」を読みすぎた「50すぎのオジさん」 ─ 。
みずからを、ストーリーに登場する「騎士」と思いこむ。
妄想を抱いたまま、従士「サンチョ・パンサ」をつれて、スペイン各地を放浪 ─ 。
思い込みが災いして、出会う人びと、さまざな騒動を起こしていく。
ひとこと
『ドン・キホーテ』は、1605 年に前編が、1615 年に後編が出版されました。
冒険小説ですが、ただの「ロードストーリー」ではありません。
「小説のスタイルを確立した」と言われるほど、重要な作品です。
・セリフまわし
など、いまではあたりまえになっている形式が、本作に詰め込まれています。
「本を読みすぎて、自分が「騎士」だと思いこむ」なんて聞くと、バカバカしいように思えます。
とはいえ、よくよく考えてみると、わたしたちは「なにかを思いこんで」生きています。
宗教・家族・制度など、なにかを信じていないと、生きていけないからです。
そんな人間の「性(さが)」を指摘した作品として、読み継がれています。
ジェイン・オースティン『高慢と偏見』
| 出版年 | 1813年 |
| 目次 | 全61章 |
著者
イギリスの作家で、1775 年〜1817 年に生きた女性です。
牧師の子どもして生まれ、『サウサンプトン』や『チョートン』などの田舎・郊外で、生涯を穏やかに過ごしました。
ほかの作家さんと異なり、波乱万丈の人生ではありません。
そんなライフスタイルを反映するように、かのじょの作品には、コレといった事件は起きません。
けれど、全作をつうじて、機知・皮肉・するどい人間描写であふれています。
あらすじ
ベネット家には、未婚のむすめが5人。
資産もないため、母親は、お金もちの相手と結婚させようといそぐ。
そんなとき、ちかくの邸宅に、資産家の「ビングリー」がやってくる。
チャンスとばかりに、むすめとのつながりをもたせる母。
期待どおり、長女ジェインと、ビングリーは惹かれあう。
いっぽう、ビングリーの友人・ダーシーにたいしては、母も、次女エリザベスも〝最悪の印象〟をもつ。
同じく資産家だが、エラソーで、愛想がなく、身分の低い相手をさげすむ ─ 。
さらに、ダーシーのわるいウワサを耳にするエリザベスは、ダーシーを「高慢なヤツ」とみなす。
けれど、ダーシーのほうは、エリザベスに惹かれ、告白 ─ 。
おどろくエリザベスだったが、高慢とみなす相手のプロポーズをことわる。
しかしその後、ダーシーにたいする印象・判断を〝くつがえす〟ようなできごとが、つぎつぎ起こり……。
ひとこと
メインテーマは、認知と錯誤です。
恋愛小説のカタチをとっていますが、
というコトをあつかいます。
文体はカンタンなのに、あつかうテーマは深い。
古典にふさわしい作品です。
分量ですが、全部で61章あります。
長さもほどほどで、ちょうどいいです。
エミリーブロンデ『嵐が丘』
| 出版年 | 1830年 |
| 構成 | 全34章 |
著者
イギリスの作家で、1818年〜1848年に生きた人です。
『ジェーン・エア』で有名なシャーロットは、かのじょの姉です。
本作『嵐が丘』は、生前唯一の作品です。
あらすじ
1801年、青年「ロックウッド」は、いなか町「スラッシュクロス」の屋敷に移り住むことに。
引っ越してきた初日、挨拶のために、近隣の邸宅にすむ「嵐が丘」をたずねる。
そこで、
・若い婦人「キャサリン・リントン」
・召使い風の男「ヘアトン」
と出会う。
奇妙な3人は、かれのまえで、どうどうと悪口を言いあう。
興味をいだく「ロックウッド」は、3人の過去を、女中「エレン(ネリー)」から聞きだす。
そこには、ヒースクリフと、館にまつわる愛憎・復讐の物語があり……
ひとこと
2つの「家」をめぐる愛と憎しみのおはなしです。
ヒースクリフの〝悪人っぷり〟は、筋金入りです。
読んだあと、げんなりします(笑)
個人的には、ドストエフスキー『悪霊』の「スタヴローギン」と並んで、トップクラスで「イヤな奴」です。
いい気分はしませんが、先が気になり、ついついページをめくってしまいます。
バルザック『ゴリオ爺さん』
| 出版年 | 1835年 |
| 構成 |
第1章 ヴォケール館 第2章 社交界デビュー 第3章 トロンプ=ラ=モール/死神の手を免れた男 第4章 爺さんの死 |
著者
バルザックは、近代ヨーロッパ期の人物。
1800年代、フランスのパリ&郊外を舞台にした、小説を書きました。
『人間喜劇』と称して、世の中に存在する、あらゆる「人物」「場面」「思想」を描くことに生涯をささげました。
短編・長編をあわせて、約90作品を執筆しました。
本作『ゴリオ爺さん』も、そのうちのひとつです。
いきおいのある文体で、ぐいぐい読み手を引っぱっていきます。
あらすじ
下宿アパート「ヴォルケール館」にくらす住人たち ─ 。
大学生「ラスチニャック」は、パリで成り上がりを目指す若者。
いっぽう、小汚いオヤジ「ゴリオ」は、商売で稼いだ金を、すべて2人のむすめにつぎ込んでいる。
しかし、社交界に生きる姉妹は、父親をむげにあつかいます。
それでも、自分の生活レベルを落としてまで、ゴリオは、社交界で生きる娘たちに、お金を渡しつづける。
そんななか、ラスチニャックは、ゴリオのむすめ「デルフィーヌ」と知りあう。
出世の階段をあがるため、夫人と愛人関係をむすびます。
いっぽう、40過ぎの住人「ヴォートラン」から、たんまり持参金の入る、結婚ばなしをもちかけられる。
しかしそれは、どこか詐欺まがいで、犯罪のニオイが。
地位向上のため、ラスチニャックは、どちらを選択すべきか、アタマを悩まし……
ひとこと
見どころは、
&
・過剰にむすめを保護する、ゴリオの狂気
─ 。
いっぽう、ラスチニャックの良心をゆさぶる、悪役「ヴォートラン」も、魅力的。
かれは、本作の第2部『幻滅』でキーパーソンになります。
個人的には『幻滅』のほうが、圧倒的におもしろいです。
『ゴリオ〜』を読んだら、こちらも手にしてほしいです。
ディケンズ『デイヴィッド・コパフィールド』
| 出版年 | 1850年 |
| 目次 | 全64章 |
著者
イギリスの作家で、1812〜1870年に生きた人です。
イギリスでは「国民作家」としてとおり、主著『オリバー・ツイスト』『二都物語』『大いなる遺産』は、何度も映画化されています。
文体もさることながら、ストーリー構成がすばらしく、いったん読んだら、抜け出せない ─ それがディケンズの魅力です。
あらすじ
シングルマザーのもとで生まれた「コパフィールド」。
女中「ペゴディー」と母親といっしょに生活をおくる。
父は、生まれる直前に亡くなっていた。
しばらくして、夫のいない寂しさから、母親は、マードストンという男と再婚する。
しかし、強権的かつ暴力的な夫をまえに、母も、コパフィールドも、苦しい生活を強いられる。
結果、精神を病んだ母親は亡くなり、コパフィールドは「孤児」の身になる。
それにともない、マードストンの口利きで、炭坑現場へと出稼ぎにおくられる。
けれどあまりの辛さから強制労働の仕事場から抜けだし、いまではただひとりの身内である伯母「ベッチィ」のもとにすがりつく。
コパフィールドも、死んだかれの両親に、良い印象をもっていないベッチィ ─ 。
しかし、ボロ切れ一枚でやってきた甥っ子のまえに同情したかのじょは、養子として引きとることに。
身なりを整え、カンタベリー近くの学校へ入学させる。
下宿先には、弁護士「ウィックフィールド」を住居をえらぶ。
そこには、弁護士のむすめ「アグネス」も同居していた。
同じ年代の少年少女ということで、以後、強い信頼関係で結ばれる。
いっぽう、父親の弁護士のもとには、事務員「ヒープ」が働いていた。
みずからをさげすみ、遠慮がちにふるまっているが、ひそかに弁護士の事務所と、むすめのアグネスをねらっていて……
ひとこと
文庫本で5冊分。
とっても長い物語です。
あらすじは、うえのとおりですが、それでも2巻のはじめまでしかのべていません。
以後、アグネス/ヒープが、善悪のキャラとしてすえられ、おはなしがすすんでいきます。
くわえて、
・ペゴディーの兄「ミスター・ペゴディー」
・薄幸の夫婦「ミコーバー夫妻」
との関わりが挿入され、物語がフクザツに展開していきます。
めちゃくちゃ長い小説ながら、ディケンズが得意とする〝見事なプロットの展開〟から、
ついつい先を読みすすめてしまいます。
「長いために、退屈」なんてことは、まずありません。
ちなみに本作は、ディケンズ自身の自伝的な要がつよく、ところどころ本人が体験したエピソードが登場します。
そのために、みょうにリアリティがあり、これが本作の魅力にもなっています。
メルヴィル『白鯨』
| 出版年 | 1851年 |
| 構成 | 全3巻 |
著者
アメリカの作家で、1819年〜1891年に生きた人です。
1840年、捕鯨船「アクシュネット号」の乗組員となり、太平洋へむけて出港 ─ 。
きびしい航海は、1843年までつづきます。
この体験をもとに、本作『白鯨』は執筆されました。
あらすじ
19世紀後半、アメリカの船団は、世界の海洋で、積極的に捕鯨をおこなっていた。
大捕鯨基地・アメリカ東部「ナンタケット」にやってきた「イシュメイル」 ─ 。
港の宿で出会った「クイークェグ」ともに、捕鯨船「ピークォド号」に乗りこみ、海に出る。
出航のあと、船長「エイハブ」と出会う。
かれは「モビィ・ディック」というあだ名の白いマッコウクジラに片足を食いちぎられ、鯨骨製の義足をつけていた。
船長は、白鯨・モビィ・ディックを「悪魔の化身」とみなし、復讐を果たそうと、執念を燃やしていた。
かれの狂気は、「スターバック」「スタッブ「「ラスク」など、ほかの船員にも伝染し、船全体には〝妙な雰囲気〟が漂っていた。
数年にわたる航海のあと、船団は日本の沖合いで、宿敵「モビィ・ディック」と遭遇 ─ 死闘のすえ、エイハブは海にひきづりこまれ、ピークォド号も沈没し……
ひとこと
あらすじだけわかりやすいですが、はなしの展開もフクザツで、言い回しも難解です。
じっさい、生前、本作はまったく評価されませんでした。
しかし1930年代以降、再評価がおこります。
「白鯨」の象徴性などが議論され、ちょっとしたブームになります。
いったいなにをあらわしているのか ─ 一度読んだだけだと、よくわからないかもです。
けれど、解説を読みつつ、再度すると、本作の魅力が、だんたんと理解できるようになります。
フローベール『ボヴァリー夫人』
| 出版年 | 1857年 |
| 構成 | 全3部 |
著者
著者は、フランスの作家で、1821年〜1880 年に生きた人です。
外科医の子どもとして生まれ、青年期はパリ大学に入り、法律を勉強しました。
その後、病をキッカケに、隠遁生活に入り、執筆活動をスタートします。さらに、複数の海外旅行をはさみ、4年半かけて『ボヴァリー夫人』を書きあげることになります。
その後、1856年10月〜12月のあいだに『パリ評論』に掲載のあと、翌 1857 年に1冊の本として刊行されます。
文芸誌にのったあと、「風紀紊乱」の罪で起訴されましたが無罪におわりました。この裁判がキッカケで、『ボヴァリー夫人』が注目、ベストセラーとなりました。
あらすじ
田舎で結婚生活をおくる「エマ・ボヴァリー」が主人公。
平凡な毎日から、倦怠(退屈)に苦しみ、華やかな世界にあこがれる。
そのキモチがわざわいして「不倫」「借金」に追いこまれ、服毒自殺によって人生を終える。
それなりの恋愛を経て、結婚した「エンマ」 ─ 。
あまりの「退屈さ」から、ここにはない理想の生活をもとめて、つぎつぎ結婚相手を変えていく。
しかし「倦怠」は解消されない。
エンマがさいごになってとった行動は……
ひとこと
ありきたりなストーリーながら、
によって、読者をぐいぐいひきつけます。
さいしょは「言いまわしが、まどろっこしいなぁ」と感じるかもです。
とはいえ、ふしぎとそれがクセになり、さきを追わずにはいられない ─ そんな作品です。
3回ほど読みましたが、再読のほうが、表現・言葉づがいがじっくり味わえて、より楽しめます。
一度読んだ人も、日をおいて、ながめると違った発見があります。
ちなみに、わたしは「伊吹訳」(岩波文庫)で読みました。
文体がカンケツで、すらすら読めます。
いまなら、最新の「芳川訳」(新潮文庫)もアクセスしやすいです。
こちらも読みやすい文章にしあがっています。
トルストイ『戦争と平和』
| 出版年 | 1869年 |
| 構成 | 全4巻 |
著者
ロシアの作家で、1828〜1910年に生きた人です。
『アンナ・カレーニナ』『復活』など残し、ロシア文学の土台を築き上げました。
後年は、非暴力主義者として、政治活動にも尽力しました。
あらすじ
1805年7月、ロシアは、イギリス・オーストリア・神聖ローマ帝国と手をむすび、ナポレオンひきいるフランスに対抗 ─ ナポレオンとの戦争は、間近にせまっていた。
そんななか、旧知の仲である「ピエール」と「アンドレイ」の身にも、さまざな事件が起きようとしていた。
お人好しの貴族「ピエール」には、亡くなった叔父から莫大な遺産が入る。
いっぽう、リアリストの貴族「アンドレイ」には、フランス遠征への要請・通達が届く。
ナポレオン戦争をつうじて、ふたりの運命は、目まぐるしく変わっていき……
ひとこと
トルストイ初期〜中期の作品です。
いわずとしれた長編小説で、説明は不要かもです。
「文庫4冊分」と分量は多めながら、ストーリーテンポがよく、あっというまに読めてしまいます。
なにより戦地における、アンドレイの心理描写がすばらしく、一度読んだら、忘れられない。
性格がことなるふたりが、どんな運命を歩むのか ─ 大河小説の原点だけあって、読む人を引き離さない内容になっています。
中毒性でいえば、トップクラスですね。
ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』
| 出版年 | 1888年 |
| 構成 | 全4部 |
著者
著者は、ドストエフスキー。
ロシアの作家で、1821年〜1881年に生きた人です。
本書は、ドストエフスキー後期の小説。
文句なしに、かれのベスト作品です。
あらすじ
・イワン
・アリョーシャ
の3兄弟をめぐる物語。
かれら父親の殺害を軸に、物語が展開していきます。
ひとこと
・プロット
・キャラクター
・セリフまわし
など、小説をおりなす要素が、みごとに調和し、一大巨編をきずいています。
ショージキ、『カラマーゾフの兄弟』を読むと、ほかの小説が〝かすんで〟みえてしまうほどです。
個人的にも、500作品以上読んできたなかで、トップ5にはかならず入ります。
文庫4冊分と分量もけっこうあります。
ですが、のってくると、一気に読めてしまえます。
こちらもまずは、思想・哲学などを考えずに、ひとつのミステリーとして読むのが、楽しむコツです。
チェーホフ『かもめ』
| 出版年 | 1896年 |
| 構成 | 全4幕 |
著者
著者は、チェーホフ。
ロシアの作家で、1860年〜1901年に生きた人です。
無数の短編小説を書きました。
いっぽうで、いくつか戯曲も残しています。
本書は、チェーホフ・4大喜劇とされ、かれの代表作でもあります。
ひとこと
チェーホフ中期〜後期の作品です。
うえ3つは短編ですが、こちらは戯曲となります。
小説と同じように、とぎすまされた言葉で、たんたんとストーリーを引っぱっていきます。
・かれの恋人で女優志望「ニーナ」
のゆくえを描きます。
ほかの短編と同じく、たいした事件・出来事はおこりません。
けれど、わずかなセリフで、トレープレフ&ニーナの葛藤を、たんたんと表現します。
なんともいえない笑いどころ&セリフをあって、「くすっ」とさせられます。
笑いと失望が、うまく調和させるのが、チェーホフの魅力です
プルースト『失われた時を求めて』
| 出版年 | 1913年 |
| 構成 | 全7編 |
著者
著者は、フランスの作家で、1871 年〜1922 年に生きた人です。
裕福な医者の子どもとして生まれ、青年期にはパリ大学で、法律と哲学を学びました。
お金もちの家庭から、職には就かず、社交生活をくりかえしました。
『失われた時を求めて』は、30代後半から、(死ぬまえの)51歳まで書かれました。
ひとこと
『失われた時を求めて』は、30代後半から、(死ぬまえの)51歳まで書かれました。
最近の翻訳では、文庫本で「14冊」の分量にのぼります。
めちゃくちゃ長いですね。
挫折せずに読むポイントは、さいしょから順々に進まないことです。
かなりの確率で、挫折します(笑)
というのも、ふつうの小説とちがって、ストーリー性を重視していないからです。
どちらかといえば、主人公「私」が、さまざま現象・出来事にふれて、思考・考察していくエッセイにちかいです。
なので、物語として読むと、退屈になって、投げ出してしまいます。
そのため、『失われた時〜』のポイント&チャプターをあらかじめ把握してから、手にとるのがベターです。
一応、2回読みとおした経験からいえば、
の順で進むのが良いです。
まず2篇ですが、こちらは「私」ではなく、知人「スワン」が主人公となっています。
『失われた時〜』は、キホン、「一人称小説」です。
いっぽうこちらは「スワン」の恋模様を、第三者目線で描いています。
つまり第2篇だけは、「三人称小説」なわけです。
そのため、ほかのチャプターにくらべて、ぐっと読みやすくなっています。
ここで『失われた時〜』のテーマ・モチーフにふれておくと、あとのはなしが、アタマに入りやすくなってきます。
つぎに、第4篇です。
こちらは、主人公「私」が、失恋したあと、リゾート地で、あらたな恋に出会うおはなしです。
あの『失われた時〜』独特の、〝一人称目線〟の記述がつづいていきます。
主人公「私」が出会う出来事が描写され、それにたいする思考・考察が、つぎつぎ展開される ─ 『失われた時〜』を読むさいの挫折ポイントはここにあります。
この記述スタイルに慣れないと、本を投げ出すことになります。
とはいえ第4篇では、「リゾート地での恋」ということで、はなしがとっつきやすい。
また、ほかのチャプターにくらべて、文章構造がフクザツではないので、あるていどすらすら読んでいけます。
くわえて、
・未来の恋人「アルベルチーヌ」
・画家「エルスチール」
などなど、その後のストーリーでキーとなる人物たちと出会うシーンでもあります。
なので第2篇を読んだあとは、すぐさま第4篇にすすむのが良いと思います。
ショージキ、この第4篇だけでも、『失われた時〜』のオリジナリティを十分に体験できます。
その後は、有名な第6篇『消え去ったアルベルチーヌ』を読んだあとに、ラストの『見出された時』でしめると良いかなぁと。
カフカ『変身』
| 出版年 | 1915年 |
| 構成 | 全3章 |
著者
著者は、プラハの作家で、1883 年〜 1924 年に生きた人です。
プラハ出身ですが、チェコ語ではなく、ドイツ語で作品を発表しました。
商人の子どもとして生まれ、青年期は、プラハ大学で、哲学・化学・法学を学びました。
保険会社に勤めるいっぽうで、『変身』や『観察』などの短編集をのこしました。
あらすじ
りとりの青年が、朝に目覚めたら、虫(≒ ゴキブリ)になっていた。
それまで自分を頼りに慕ってくれた、妹・父などの家族は、はっきりとした嫌悪感をしめす。
家庭内で虐げるばかりではなく、他人とも合わせないようにして……
ひとこと
あらすじはすでに知っているかもですね。
ちょっとまえまでは「不条理小説」なんてカッコよく言われていました。
けれどなんてことはありません。
・介護で寝たきりの老人
など、家庭内での〝厄介もの〟を、暗に示しているわけです。
不条理でもなんでもなく、リアリズムに徹したおはなしです。
カフカというと、ムズかしいイメージがありますが、おとなの寓話としてみると、ふつうに楽しめます。
ちなみにわたしは、「丘沢訳」で読みました。
ガルシア=マルケス『百年の孤独』
| 執筆年 | 1967年 |
| 構成 | 全23章 |
著者
著者は、ガルシア=マルケス。
コロンビアの作家で、 1928年〜2014年に生きた人です。
「マジック・リアリズム」という手法を駆使して、神話とも小説ともいえない物語を展開しました。
本書『百年の孤独』は世界中でヒット。
以降、先進国を中心に「南米文学ブーム」が起こります。
あらすじ
コロンビアのコミュニティ。
そこでは近親相姦がつづいていたので、「豚のしっぽ」のはえた奇形児が生まれてしまう。
悲劇を起こさないため、ウルスラは性行為を拒み、禁止する。
ひとりの男が、そのふるまいをバカにし、さらには、従兄弟で夫である「ホセ・アルカディオ」が、男を殺害してしまう。
殺したにもかかわらず、ふたりのまえにあらわれる男から逃げるため、夫婦は、生まれた土地をはなれて、ジャングルをさまよいあるく。
そのとちゅう、「マコンド」と名づけた、新しい住居をみつける。
くわえて、これ以上、「豚のしっぽ」が生まれないように、結婚相手は、血縁関係のい者にかぎることを家の教訓とする。
以後「マコンド」では、ふたりの子孫たちが、さまざまな人間模様を演じながら、繁栄するが……
ひとこと
蜃気楼の村「マコンド」の隆盛&衰退を描いた物語です。
100年間にわたるおはなしで、小説というより、一大叙事詩といったかんじです。
あつかう範囲もひろく、人物関係はフクザツであるものの、いわゆる「マジックリアリズム」という手法で、ぐいぐい読者をひっぱっていきます。
おそらく3日もあれば、一気に読めてしまえます。
それくらい〝中毒性の高い〟作品です。
いっぽう、小説家の保坂和志さんがのべているように、あとからふりかえって、いったい何が書いてあったのか、よく思い出せない小説でもあります。
それだけ、その瞬間の〝物語への没頭度〟が高く、時間をおくと、すっかり忘れてしまう状況におちいります。
なんだか損した気分になるかもですが、瞬間の楽しみを思えば、ぜんぜんイヤな気もおきません。
ぜひ手にとってみてください。
まとめ
まとめると、
りきぞう
・年代順に読んでいくと、世界文学の流れが、よくつかめる
・時間がない人は、『オデュッセイア』『ハムレット』『ドン・キホーテ』『カラマーゾフの兄弟』の4冊がおすすめ
海外文学の古典を読むうえで、参考にしてみてください。
ではまた〜。




















