| 出版年 | 1832〜1836年 |
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グランド・ブルテーシュ奇譚 ことづて ファチーノ・カーネ マダム・フィルミアーニ 書籍業の現状について |
どうも、りきぞうです。
きょうも、古典作品をレビューしていきます。
取りあげるのは、バルザック『グランド・ブルテーシュ奇譚』。
バルザックは、フランスを代表する小説家。
バルザックといえば、『ゴリオ爺さん』『谷間の百合』など、長編が有名です。
いっぽうで数多くの短篇も残しています。
本書は、1832〜1836年までに発表された作品を、訳者「宮下さん」の好みで、組んだものです。
どれも読みごたえが作品です。
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「ファチーノ・カーネ」は、とある酒場でのワンシーン。
結婚パーティーによばれた学生 ─ 。
そこで演奏した盲目のクラリネット奏者にであう。
なにかを感じた学生は、年老いたかれに、これまでのいきさつをたずねる。
すると、もともとはイタリアの貴族で、これまでさまざま犯罪をおかしてきた事実をつげる。
さらに、いまからいっしょに、本国イタリアに渡れば、おまえを「大金もち」にしてやると誘われる……。
こちらは、どこか『ゴリオ爺さん』のモチーフにちかいストーリー展開。
とはいえ、『ゴリオ〜』とはちがって、学生のほうはきわめて冷静で、老人のほうも、どこか〝妄想がかって〟いる。
現実感がないおはなしながら、盲目の老人が経験したエピソードが、ほんと波乱で、おもしろい。
かれの体験談をたのしむ作品です。
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「書籍業の現状について」は、評論。
バルザック本人が、当時の出版業界・メディア事業について、考察した文章です。
当時もまた、大衆が活字を読みはじめたいっぽうで、人びとの要求に合わせて、出版社も、〝わんさか〟立ちあがっていた。
供給過多の状況のなかで、作家・編集者は、どのようにふるまうべきかについて考察しています。
ひるがえって、いまのネット環境による「情報過多時代」を考えるうえでも、たいへん参考になります。
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個人的によかったのは、「グランド・ブルテーシュ奇譚」、「ことづて」。
以下、[あらすじ → ポイント]の順でみていきます。
目次
『グランド・ブルテーシュ奇譚』
あらすじ
フランスの町「ヴァンドーム」。
とあるいっかくに、荒れはてた屋敷・邸宅が建っている。
医師「ビアンション」は、こっそり忍びこんでは、それまでに起きたできことを想像するのを趣味にしていた。
そんなとき、まちの宿でくつろいでいると、とある弁護士がたずねてくる。
かれは屋敷の管理人で、ビアンションにたいして「不法侵入にあたるから、これ以降、勝手に入りこむのはやめてほしい」と忠告する。
せっかく楽しみを失った医師は、さいごに、あの屋敷が滅びた経緯をたずねる。
すると、弁護士は「待ってました」とばかりに、邸宅の末路を語りはじめる。
もともとは、裕福な老夫婦「メレ夫婦」が住んでいた。
さきに夫が亡くなり、のちに妻がひとりで住むように。
けれどワケあって、老婦人は屋敷を手放し、かのじょは近くの病院で亡くなる。
いっぽうでメレ老女は、わたしが死んでもしばらくは「屋敷の改修は、ぜったいおこなわいように」遺言をのこす。
その言葉をまもり、弁護士は、いまでもそのままの状態に保ちながら、管理していた。
つづけて医師は、「なぜ老女は改修をみとめないのか」とたずねる。
それにたいして、あいまいな答えをかえす弁護士 ─ 。
くわしいことをのべずに、宿をあとにする。
しゃくぜんとしない医師は、宿の女中に、真相を知っているか、とたずねる。
すると女中は、ひみつにすることを条件に、老女と邸宅のカンケーについて語りだす。
おしどり夫妻でとおっていたメレ夫婦 ─ 。
けれどあるとき、ヴァンドームのまちに、スペインから美男子の若者が「亡命者」として連行されてくる。
そんなとき、その若者が逃亡する事件がおきる。
メレ氏は、気にも止めていなかったが、ある夜、家に帰ってみると、妻が不審な態度をみせる。
ピンときたメレ氏は、「婦人専用の小部屋」に目をつける。
きわめて冷静に、召使いたちに、いますぐ大工をつれてきて、あの部屋をふさぐよう指示 ─ 。
同じく冷静さをたもつ婦人は、〝コトの真相〟が発覚しないように、さまざまな手をうつが……
ポイント
医師「ビアンション」の視点から展開する、ある老夫婦のおはなしです。
[弁護士 → 女中]と話し手が変わり、老夫婦と邸宅の末路が語られる。
ルポタージュのような構成で、ぐいぐい引き込まれます。
ヨーロッパ、とくにフランスでは、コキュ(寝取られ夫)のおはなしが定番。
けれどこちらは、カンのするどい夫が、主人公。
読みすすめると、〝うまくやりこめられる〟のかぁと思うが、まったくちがいました。
「ほら、ここにおまえの十字架がある」メレ氏はいった。「あそこにはだれもいませんと、神の前で誓いなさい。そうすればおまえを信じて、部屋を開けはしないから」
(no.443)
こう問いただす夫は、浮気している妻を追いつめます。
ラスト、このセリフにひっかけるかたちで、夫が妻に発する一言が、ほんとに恐ろしく、残酷で、不気味です。
ゾクゾク系のおはなしがすきなひとなら、きっと満足するはず。
『ことづて』
あらすじ
乗り合い馬車で、知り合った2人の若者。
恋愛ばなしで盛りあがり、意気投合する。
ふたりとも、35-40歳の婦人に恋をしており、おたがいに身の上ばなしを語りあう。
主人公の「わたし」は、かれとは無二の親友になれそうだと感じる。
しかしとつぜん、馬車がかたむき、その衝撃で、「かれ」は、道端に放り出されてしまう。
さらに運がわるいことに、もう一台の馬車がとおり、かれを下敷きに、ひいてしまう。
瀕死のかれは、「わたし」に、自分が恋をしている婦人に、メッセージ(ことづて)&遺品を届けてほしい、とたのむ。
ためらうことなくうけおった「わたし」─ 。
とはいえ、よくよく考えてみれば、これほど〝荷が重い〟頼まれごとはない。
恋する婦人に、「愛する人が亡くなった」ことを告げる ─ ある意味、死の請負い人とかわらない。
それでも、なにかの縁と感じた「わたし」は、ある地方に住む婦人のもとをたずねる。
うまく目当ての人をみつけた「わたし」は、「恋人の死」をつたえようとするが……
ポイント
こちらも、ぐいぐい読みすすめてしまった作品。
なにより、みしらぬ女性に、「恋人・愛人の死をつたえる」(=ことづて)という設定が絶妙で、さきを追わずには、いられなかった。
さらにおもしろいのが、婦人の夫が、きわめて「凡庸(ぼんよう)」で、妻の浮気にまったく気づいていないトコ。
というよりも、食いものがイチバンの興味・関心で、お医者さんから、食事をひかえるように警告されているほど。
美人の婦人&ロマンチックな恋とは対照的に、どこかコッケイ。
途方もない苦悩のただなかに喜劇的なものが置かれるという、まったく異なった二つの様相から、それをのぞき込むことになったのである。
(no.818)
ト書きでこうのべるように、このあたりのコントラストも、よかった。
まとめ
バルザックといえば長編小説のイメージです。
けれど、短編もなかなかです。
なんというか、味があるというか。
どれも初期作品ながら、ひきつける文章で、構成もうまいです。
よければ、チェックしてみてください。
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こんなふうに、プロット&キャラに注目してみていくと、より古典作品をを楽しめます。
ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。
ちがう記事ものぞいてみてください。
ではまた〜。


