どうも、リキゾーです。
大学院では、経済問題について研究していました。
いまでも、この分野の本を、月10冊以上チェックし、知識をストックしています。
このあいだ、冨山和彦『なぜローカル経済から日本は甦るのか』を読みました。
グローバル経済や、日本経済の方向性について、理解を深めたい人にはオススメです
目次
1. 『なぜローカル経済から日本は甦るのか』の要点
日本経済を「グローバル経済圏=G型」「ローカル経済圏=L型」にわけたうえで、それぞれの特徴をのべていきます。
労働人口が減ることを考えると、これからの日本は「L型」の流れを取るべきだとして、具体案を示していきます。
以下、ポイントです。
- G型の経済圏とは?
- L型の経済圏とは?
- ほとんどの産業はローカル型
- 政府の具体的な戦略
ひとつひとつみていきます。
2. 『なぜローカル経済から日本は甦るのか』の内容
G型の経済圏とは?
「G型」とは、グローバル経済圏のことです。
主な産業は、医療品・情報・電子機器です。
企業が生きのこるには「規模=スケール」が大事。資本蓄積により商品の価格が決まり、業績につながります。
完全競争の世界で、比較優位のしくみがつねに働いています。世界企業を相手に、価格競争をおこないます。
働き手に視点をうつすと、拠点をかまえる地域の雇用が増えることはありません。
グローバル企業からしたら、利益が出れば、人件費も上がります。そのためコストを下げるために、人件費がより安い地域に拠点を移します。
グローバル企業がある地域にとっては、長期的にみれば雇用の改善は見込めません。
その地域に本社が残るにしても、高スキルで少数の人材が求められます。
たとえばマザー工場長や経営者のトップ役員などです。普通の能力の人たちに対する労働需要はないのです。
まとめると、G型経済は「資本集約的」といえます。
グーグルがもつサーバー施設など、規模の大きい設備や、価値の高い人材、高付加価値の人的資本でまわるシステムだといえます。
L型の経済圏とは?
主な産業は、交通、物流、観光、飲食などサービスです。
じかに人が接する仕事なので「密度の経済性」がキモになります。
小さな地域でつながりをつくり、それが事業の価値につながります。
たとえばローカル経済ではバスの交通量を増やしても売り上げは伸びません。
G型のように「規模の経済」を追求しても意味がない。
それより同じ場所で商売をしている会社、「密度の経済性」で動く会社のほうが売り上げは安定します。
また経済環境は不完全競争市場です。比較優位の法則もなく、退場するはずの産業が市場が残り続けます。
企業がしがみついているよう見えますが、顧客はいるのに供給が追いつかず、非効率な会社が残っているというのが現状。
辞めたくても辞められない中小企業の社長さんがたくさんいます。
まとめると、L型経済は「労働集約的」といえます。
人口規模により売り上げが決まります。
人口が多ければ人材があまり、失業率が高くなります。少なければ人手不足に陥ります。
ほとんどの産業はローカル型
G型 / L型の視点からみたとき、日本はどうすればいいでしょうか。
前提として、ほとんどの地域はローカル型です。
これは日本に限らない。
世界的に経済はグローバル化しているようにみえるが、これは錯覚。
たしかにスマホ業界では、『Samsung』と『Apple』で市場規模の50%ちかくを占めています。
G型です。
しかし小売り業では、ウォルマート、カルフール、セブン&アイホールディングスなど、グローバル企業といわれる会社でも、3つをあわせた売上高は、小売業全体の10%にも届かない。
L型です。
小売業に限らず、たいていの産業はローカル型の市場環境です。
グローバル経済圏に属するようにみえる銀行業でも、その地域の家庭から預金を集めることで成り立っています。
これは教育産業、通信産業なども同じです。
政府の具体的な戦略
うえの状況をふまえれば、社会をゆたかにしたいなら、政府や地方自治体は、L型の経済圏に、資源と労力をかえたほうがいい。
とくにこれからの日本では、労働力不足がすすんでいきます。需要にたいして供給が間に合わない状況がつづきます。
見方をかえれば、ローカル経済のほうが、成長の余力があるということです。
であるなら、生産性の向上が、イチバンの課題になります。
労働力に余力がある今の時点でも、世界に比べて日本の労働生産性はとても低いからです。

労働生産性を上げないと、長時間労働に陥る危険があります。
長時間労働というと、悪意のある企業が労働者を酷使してを身も心もボロボロにするイメージがあります。
しかし日本の場合は、単純に労働人口が絶対的に不足しているのです。産業または会社全体が人手不足に陥り、自ずと長時間労働に追い込まれていくのです。
雇用が失くなる心配より、低賃金かつ長時間労働に陥ることが、懸念材料といえます。
3. 『なぜローカル経済から日本は甦るのか』のまとめ
この本では、グローバル型/ローカル型に分けて経済圏の特徴をのべています。
なんといっても、たいていの産業・会社は「ローカル型」と指摘したトコがおもしろいです。
まわりを見ても、世界をまたにかけるビジネスマンなどは滅多にお目にかかれません。
たいていの人は小さな規模でビジネスをしています。
となれば、政策でも、グローバル人材を育てたり、世界企業を育てるより、地域に利益につながるヒト&コトを支援したほうがいいはず。
世界を相手にたたかう企業なんて、国がサポートしなくても自然と立ちあがってくるはずですし。
個人としても、英語やらプログラミングなど、世界で通用するスキルを伸ばすより、活動する地域の人たちとどれだけ密な信頼関係を築けるかのほうがたいせつな気がします。
なにはともあれ、日本経済の方向性について考えたい人には、おすすめの1冊です。
よければチェックしてみてください。
ではまたー。