どうも、リキゾーです。
このあいだ、水野和夫『なぜ人々はグローバル経済の本質を見誤るのか』を読みました。
本書は、詳細な統計データと長期の歴史的な視点から、いまのグローバル経済を分析したものです。
IT 化を背景に、資本が国境をこえる事態をあきらかにし、国内で格差がひろまる問題を指摘します。
あらためてグローバル化の問題を考えてたいひとにはオススメです。
目次
001. 内容
本書は、グローバル経済のなかみ & 日本への影響をあきらかにしていきます。
要点はこんなかんじ。
- 国民国家の衰退と帝国化
- 実物経済にたいする金融経済の優位性
- 格差の拡大
- 日本経済への影響
- 日本における格差
すこしおカタいですが、ひとつひとつみていきましょう。
国民国家の衰退と帝国化
IT 化により、資本(マネー)は国境をカンタンにこえます。
国境内でしかチカラを行使できない国民国家は権威を失います。
経済的には「国境」はなくなります。
そこで国家は、世界への影響力を「帝国」というカタチで保とうとします。
先進国であるアメリカは金融をつかって、ロシア・中国・インドなど新興国は鉄鋼・天然資源・安価な人材によって、存在意義を高めていきます。
実物経済にたいする金融経済の優位性
グローバル経済は金融を軸にひろまっていきます。
実物経済にくらべ、マネーはふくらみやすくなります。
資産価格が上昇しやすくなるいっぽう、実物経済に連動する賃金などは横ばい or 減少していきます。
資産を多くもつ資本家、大企業の経営者には有利になります。
そのいっぽう、仕事による所得で生活をおくる労働者にとっては不利になります。
格差の拡大
国民国家の影響力が失われていくため、国内ではさまざまな二極化が進みます。
大企業/中小企業、資本家/労働者、大都市/地方などです。
資本が容易に国境を超えるグローバル経済では、それぞれの境界はますます広がっていきます。
日本経済への影響
うえのように、グローバル化の特徴をふまえ、日本の現状をみていきます。

この図は、日本をふくめた先進国と、そのほかの国を状況をあらわしたものです。
右下の成熟国では、実質 GDP 成長率は 1.9 %(年率)です。
いっぽう、左上の中国は 6.5 %、インドは 4.4% です。世界の平均実質成長率 2.4 %を、大きく上まわっています。
ここからわかるのは、すでに日本は近代化をおえて、新興国に追われているということです。
ロシア・中国・インド・ブラジルなどの追随国が近代化の波にのり、先進国の生活水準にせまっているのです。
これから47年間、先進国の成長率を1.1 %(年率)とすれば、中国の所得水準は先進国の水準の 67 % まで追いつくと予想できます。
中国・インドが予想以上に成長率と人口上昇率を伸ばせば、日本を含めた先進国の成長率はゼロになる可能性もあります。
日本における格差
資本を多く保有する大企業・製造業を「グローバル経済圏」、中小企業・非製造業(主にサービス業)を「ドメスティック経済圏」とします。
そのうえで過去50年以上の付加価値の推移をグラフ化します。

この図からわかるとおり、すでに90年代のはじめから、ふたつのあいだで〝ひらき〟が生じています。
日本のばあい、雇用者の構成比については、後者(ドメスティック企業)のほうが高いので、国内の賃金は伸びません。
これがいまでも景気が回復しない or 実感できない要因です。
002. ひとこと
この本の出版から10年ちかくたっています。
しかし日本の現状は変わっていません。
格差の拡大については、まえほど話題にはならなくなりましたが、財政赤字は改善されず、賃金も伸びなやんでいます。
本書が指摘する事態が、そのまますすんでいます。
この本では具体的な対処法はしめしていませんが、グローバル化の本質をあきらかにしています。
良書ですので、ぜひチェックしてみてください。
ではまたー。