| 発売日 | 2019年12月 |
| 収録 |
サプライズ 合唱 目標 自転車 誘われ待ち こたつ 市役所 花束 イヤホン 田舎の家族 |
どうも、コント作家のりきぞうです。
きょうも、コント作品をレビューしていきます。
今回とりあげるのは、かが屋『カロ』。
『合唱』は、音楽指導の先生と生徒のはなし。
合唱の練習中、生徒全員をしかりつけるいっぽう、先生は、加賀だけをベタボメ。
ひとりだけ認められる気まずさが、ちょっとした笑いをさそいます。
誘われ待ちは、正夢のおはなし。
空想っぽいストーリーですが、かが屋さんならでは、日常生活の〝あるある〟をうまく、取り入れています。
イアホンは、あした離れ離れになる友人2人のはなし。
コントながら、どこかほんわかしたキモチにさせられます。
…
個人的に好きだったのは、「目標」、「自転車」、「市役所」 ─ 。
以下、くわしくみていきます。
目次
『目標』
あらすじ
りつけている。
書かれた内容は、
・デートをする
・キスをする
などなど。
かれはそこに赤ペンで、◎ or 花まるを、つけていく。
つづけて、自分の部屋に兄をよぶ。
それとなしに、赤ペンで丸をついた紙をみせつける。
恋愛について〝先をこされ〟、とまどい、あわてる兄は……
ひとこと
繊細なつくりのコントです。
兄と弟のしずかな駆け引きも、いいかんじですよね。
さらにうまいのが、「告白をする」と書かれた紙にたいして、赤丸をつけていないトコ。
と、指摘する兄にたいして、弟は
いやぁ、シナリオの構成が、ほんとにうますぎる。
『自転車』
あらすじ
男が、買い物をするために、道端に自転車をとめる。
ちょっとして、お湯をそそいだカップラーメンをもってかえってくる。
すると、自分の自転車のまえで、カップルが、別れる / 別れないのはなしをはじめる。
ケンカのすえ、カレシがフラれることに。
自転車のまえで、ヒザをくずし、泣きさけぶ男。
カップ麺をもったまま、ゆっくーり、自転車のカギをはずし、その場から離れようとするが……
ひとこと
こちらはシナリオの設定が、すばらしい。
「気まずさ」を軸に、笑いをさそっていく。
かが屋さんらしいと思うのが、その後の展開 ─ 。
フラれた男が、自転車の男にたいして、「カノジョを追いかけたほうがいいですかね?」
と問いかける。
「ですねぇ……」と返答するかれにたいして、「自転車を貸してください!」とたのむ。
カップ麺がのびるので、ほんとうは家に帰りたい男 ─ 。
けれどやさしさから、ついつい自分の自転車を貸してしまう。
このあたりの心情のようすは、かが屋さんにしか出せない雰囲気 ─ 。
ファンが増えるのも、納得です。
『市役所』
あらすじ
市役所で受付をする女性 ─ 。
そこへ、受付の番号札をもって、カレシらしき男が、やってくる。
きのう、夕食をつくってもらったのに、先輩の誘いを優先し、〝ぶっち〟した約束をあやまりにくる。
仕事中にくわえ、約束をやぶった事実を許せないカノジョ ─ 。
すこし話したあと、「もう一度、番号札をもってきてください」とつきはなす。
ごていねいに番号札をとって、ふたたび順番待ちをするカレシ ─ 。
自分の番がまわってきた瞬間、カノジョにたいして、「婚姻届をください」と、いきなりプロポーズをするが……
ひとこと
イチバン好きだった作品。
シナリオの構成からみても、かなりつくりこんでいる印象をうけました。
こちらもはなしの[設定 → 展開]が、ほんとうにうまい。
婚姻届の受付をやっているカノジョのところに、カレシが「届け」をもらいにやってきて、プロポーズをする ─ 。
このメタ的な設定が、笑いの軸になります。
さらにかが屋さんがうまいのが、このメタ的な設定を利用して、プロポーズするカレシにたいして、
「そういうサプライズをねらうトコがキライ」
と指摘させる点。
メタ的な展開をわかったうえで、その事態にたいしても、ツッコミを入れる。
二重三重のつくりになっている構成 ─ 。
雰囲気だけではなく、練り練ったシナリオづくりをしているとわかります。
まとめ
「やさしさ」「かなしみ」をふくみつつ、笑いをおこしていく ─ 。
それがかが屋さんの特色です。
けれどそのうらでは、綿密に組み立てられたシナリオ&プロットがあります。
これがおふたりのすごいトコ。
なにげない日常をみせつつ、背後ではフクザツな構成を組み立てる。
すごいコンビだなぁと思います。
…
こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。
ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。
ちがう記事ものぞいてみてください。
ではまた。
よきコントライフを〜。


