公演日 | 2010年5月 |
収録 |
プロローグ「小ピンチ」 絶体絶命戦士ピンチマン Brandnew 引力 ノーツー 大ピンチ 家族 走れネロス 告ぐ エピローグ「大チャンス」 |
どうも、コント作家のりきぞうです。
きょうも、コント作品をレビューしていきます。
取りあげるのは、バカリズム『ピンチ!』。
『小ピンチ』、『大ピンチ』、『大チャンス』は、連作コント。
ほかの作品をあいだにはさみつつ、ひとつ出来事を複数の視点から描いています。
シナリオ上、ロジカルな構成になってます。
とびとびではなく、とおしでみるといいかもです。
…
個人的に良かったのは、「家族」、「告ぐ」 ─ 。
以下、くわしくみていきます。
『家族』
あらすじ
カノジョの父に、結婚のあいさつをするカレシ。
父親は反対しつづけるが、妻や弟は認めるようフォローする。
くわえて、祖父、祖母、複数の同居人まで登場し、同じくフォロー。
さらに、野球少年、見知らぬ男、武士、こけし、ハト、ミトコンドリアまでフォローしはじめて……。
ひとこと
むすめの結婚をみとめるよう、ぞくぞくと登場人物がやってくる。
バカリズムさんおトクいの「フリップ芸」で、ありきたりなプロポーズコントを笑いにかえます。
うまいなぁ。
『走れネロス』
あらすじ
王様にとらわれ、処刑を言いわたされるネロス。
妹の結婚式をみるまで、3日間の猶予をおねがいする。
みとめない王様に、友人のソリヌンティウスを身代わりにさしだすとつたえる。
親友かと思いきや、ソリヌンティウスは〝そこそこ〟知っている〟ていど。
事情を説明せず、王様のもとおいて、そそくさと逃げる。
さらに、ソリヌンティウスもほかの身代わりをさしだすと言い出して……。
ひとこと
タイトルどおり『走れメロス』のパロディ。
コントのプロットにはパターンがありますが、「反復」の構図をうまく利用しています。

このあと〝身代わりが身代わりを呼ぶ展開〟がくりかえす。
プロットだけではありません。
身代わりなのに〝そこそこの知り合い〟だったり、〝新人のバイト〟だったり、まったくカンケーない人を連れてくる。
ここがバカリズムさんのおもしろさ。いいかんじにヒネっています。
『告ぐ』
あらすじ
スピーカーをもった刑事。
ビルに立てこもる犯人に、
「銃をもっておとなしく出てきなさい」
と警告。
反応がない犯人。
すると、刑事はふとしたギモンをいだく。
「きみたち」とは言ったものの〝犯人は複数なのか?〟〝単独犯ではないのか?〟
さらに「銃をもって」と言ったが、〝銃をもっているのか?〟〝ナイフしかもってないんじゃないか?〟
まわりの住人にまちがえをみせたくない刑事は、同僚、さらには、犯人にまで確認するが……。
ひとこと
こちらもうまいですね。
笑いばなしとしてバカにはできますが、〝ささいなことが気になり、本来の目的をわすれる〟という事態をあらわしているとすれば、かなり知的な作品だといえます。
おカタい言葉でいえば〝手段の目的化〟。
犯人を警告するはずのスピーカーがアダとなり、犯人の確保から遠ざかる。
こんな視点でみると、バカにできない作品だとわかります。
まとめ
こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。
ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。
ちがう記事ものぞいてみてください。
ではまた。
よきコントライフを〜。