東京03『自己泥酔』(第19回)感想&レビューです。

公演日 2017年5月〜9月
収録 自慢話の話
エリアリーダー
トヨモトのアレ
ステーキハウスにて
小芝居
悲しい嘘
謝ろうとした日

どうも、コント作家のりきぞうです。

きょうも、コント作品をレビューしていきます。

取りあげるのは、東京03『自己泥酔』。

19回目の単独ライブを収録したものです。

前回までの「〜ないで」のタイトルを一新。

『自己泥酔』とシンプルになりました。

おそらく造語ですが、内容を反映させたタイトルになっています。

今回は、どの作品もおもしろく、ピックアップするのが、むずかしかった。

読むさいの負担を考えて、レビューでは作品を2本くらいにしぼるのが、おしいくらい

それくらいどれもハイレベルでした。

ちなみに、けっこう年代もバラバラの人たちといっしょに観ていたんですが、みんな大笑いでした。

そのなかで年配の方が、むかしのてんぷくトリオによく似ているとおっしゃっていました。

わたしも井上ひさしさんの脚本だけは読んだことはあるんですが、たしかに相通じるトコがあります。

日常ベースの視点、ミクロな世界観などは、「てんぷくトリオ」のモチーフでしょう。

さらに今回は、演技がとくにすばらしかった。

なんていうのかな、中年をむかえて、ほんと味が出てきたというか。

そもそも東京03のコントは、年齢層高めのキャラクターが登場するので、その役と彼らの年齢がマッチしてきたんだろうなぁ。

東京03『自己泥酔』の概要

「自慢話の話」「エリアリーダー」は、恒例の会社もの。

ともに上司役の角ちゃんがカッコつけるトコをみせて、豊本さんにいや~なツッコミをうけるパターン。

いっけん良いことを言ったり、良いことをしてるんだけど、それには「カッコつけたい」っていうねらいがある。

それを見抜いて、豊本さん演じる部下がネチネチとえぐる。

「トヨモトのアレ」は、会社全体に自分の不倫がバレてしまった男のはなし。

はい、そうです、トヨモトさんではなく「豊本さん」自身にも、こんなことありましたよね……。

役にのせながらも、本人をしっかりいじっています。

飯塚さんからすれば、ネタにしないわけないよね。

「小芝居」は恋愛もの。

上司の女性と婚約した会社員が、それまで相談にのってもらった同僚に結婚の報告をする。

しかし上司にはその同僚には相談していたコトを内緒にしている。

そのため、上司が報告するときには、はじめて聞いたような演技をしてほしい、とたのむ。

しかたなしに同僚は演技することに。

この作品は、だれがみても 100% 笑います。

笑いの構図からみると、「交錯」にあてはまります。

コントの書き方 ─ プロットの展開について

もちろん3人の、こまやかな演技があってこそ、なせるわざ。

すばらしいです。

ラストの「謝ろうとした日」も、恒例の長尺コント。

20分くらいあります。

いろんな偶然が重なる、いわゆる〝すれ違いコント〟です。

田舎でうだつの上がらない店を経営する男 ─ 。

そんなかれが、元同級生で東京で成功している男に嫉妬する、というおはなしです。

SNSのマイナス面も盛りこまれ、テーマも現代性があります。

ペーストもきいていて、Good 。

コントではなく、質の高い喜劇ですね。

キャラクター&プロットについて、とくに好きだったのは、『ステーキハウスにて』&『悲しい嘘』 ─ 。

以下、くわしくみていきます。

『悲しい嘘』

あらすじ

入院するカノジョのもとにカレシがくる。

重病を伝えるカノジョのあきこ。

婚約中にもかかわらず、「好きな人ができた」と別れを切りだす。

察するカレシ。

これからの闘病生活の負担を背負わせたくないばかりに、ウソをついてると思う。

しかしカノジョは、「ほんとうに好きな人ができたから別れるんだ」と、念をおして、告げて……

ひとこと

「恋愛もの」でありがちストーリーを、ちがった視点で描いたパロディです。

重病をかかえて凹んでいるはずなのに、恋する気持ちには正直なカノジョ。

そこに人間のおかしみを感じますね。

「病」と「笑い」をみごとに両立させている。

悲劇/喜劇の境界線を揺さぶる作品といえます。

『ステーキハウスにて』


人物

客(角田)
店員(豊本)
店長(飯塚)

場所

ステーキハウスのレストラン

あらすじ

ハンバーグを食べ終える直前にワイングラスをこぼす客。

拭いてもらうために店員を呼ぶが、今度はその店員がデキャンタごと、こぼしてしまう。

赤ワインで白いジャケットが、びしょびしょに。

どなる客。クレームをつけまくる。

クリーニング代、料理代、くわえて、5000円分の「お食事券」まで要求する。

エラソーにふるまう客 ─ 。

そのとき店員が「俳優の角田晃広さんですよね……」とボソり。

じつは、チョイ役ながらも、テレビでは温厚キャラで、売りだしている客 ─ 。

知名度のない自分を、まさか知ってるとは思わずに、あせる。

エラソーな態度は一転。

きゅうに腰が低くなり……

ひとこと

角ちゃんの素の性格を活かしたコント。

そのためか本人もノリノリで演じてます。

会場のお客さんも爆笑してましたが、わたしもぞんぶんに笑わせてもらいました。

ちなみに、そのあとの特典映像で飯塚さんに、一人芝居の部分に時間を取りすぎたってツッコまれてましたね。

でもしつこいかんじはなく、やればやるほど笑ってしまいました。

ポイント

つづけて、笑いのポイントをみていきます。

コントで大事なのは、キャラクターとプロット。

この作品ではプロットに注目してみます。

コントのプロットはとてもシンプル。

[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

コントの書き方 ─ プロットの構成について

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」がある。

パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つ。

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「逆転」とわかる。

「逆転」では、ひとつの出来事をキッカケに、それまでの立場が反転するようすを描きます。

人物の地位 or 権威をひっくり返すことで、笑いをひきおこしていく。

この作品でも、エラソーにクレームつける客が、店員が「役者の自分を知っている」とわかる瞬間に、態度を一変させる。

横暴なふるまいから、こびへつらうかんじに。

図にすると、こんなかんじです。

構図 ─ 逆転
客 > 店員

・ワインをこぼされ、クレームをつける客
・店員、客に「役者さんですよね?」と伝える
・温厚キャラで売っている役者が、あせる。

客 < 店員

このあと店長は、客のクレームどおり、「5,000分のお食事券」をもってくる。

こびへつらう役者は、それを渡されるとあせり、さらには、卒倒する。

そのときの角ちゃんの〝リアクション芸〟にも注目です。

まとめ


こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。

ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた。

よきコントライフを〜。