どうも、リキゾーです。
このあいだ、マーティン・フォード『ロボットの脅威』を読みました。
著者のマーティン・フォードは、アメリカのエコノミストで IT にたずさわる実業家です。
本書は、そのキャリアを活かし、IT とロボットの進化が、経済にどのような影響をあたえるか考察したものです。
テクノロジーと経済のカンケーについて知りたい方にはオススメです。
目次
001. 内容
要点はこんなかんじ。
- IT によって雇用は減っている
- IT 化で、ひとの労力が不要になっている
- 労働がなくなったときの対処法
ひとつひとつみていきましょう。
IT によって雇用は減っている
1970年代から、GDPの伸び率 & 賃金の上昇率が、連動しなくなっています。
経済学では、経済成長率がアップすれば、労働者にリターンがまわるとされています。
しかし統計ではそうなっていません。

これは、1947年を基点に、生産性と実質報酬の伸び率をグラフにしたものです。
実質報酬は、賃金 & 福祉給付を合わせたものです。
みてわかるように、1970年前半ごろから、ふたつの数値がひらいています。
生産性が向上しても、賃金がアップしていません。企業収益がふえても、労働分配率はひくいままです。
なぜこんなコトが起きるのでしょうか。
要因は、情報テクノロジー(IT)の導入です。
生産は、資本ストック & 労働力から成りたっています。
その成果は、資本の所有者への報酬 or 労働者への賃金のどちらかにかえってきます。
かりに、 IT が導入され、業務のキカイ化がすすんだとします。
すると、資本ストックはアップしますが、労働力はダウンします。
つまり生産性があがっても、資本へのリターンはふえますが、労働側にリターンはかえってきません。賃金としてかえってこないのです。
たとえば、リーマンショック以降でも、大企業は深刻な事態におちいらず回復しました。
しかし企業支出をみると、資本設備やソフトウェアへの投資はふえたいっぽう、賃金はさがりました。
さらにこれからは、テクノロジーのレベルはあがっていくので、設備投資はますます拡大していきます。
生産に占める「労働力」の割合はへり、賃金のダウン、失業率の上昇も、予想されます。
IT 化で、ひとの労力が不要になっている
なぜ情報テクノロジー(IT)は、雇用に深刻な影響をもたらすのでしょうか?
そのワケは、 IT の特性にあります。
ひとつは自動化がカンタンできるという点です。
IT は、ルーティンで予測可能な作業がとくいです。
工業はもちろん、反復作業の多いサービス業にも、すぐに応用されます。
ふたつめ、カンタンにコピーできる点です。
IT は、いったん設備や道具をつくってしまえば、低コストで同じモノをつくれてしまうのです。
これまでの産業とはちがい、生産者は、より安く最適な設備や道具を手にできます。
つまり、これまで生産に必要だった「労働力」に、資金をかけなくてもいいということです。
ある大企業がひとりの従業員を訓練し、その従業員をクローンで増やして労働者の群れを作るとしよう。その全員がすぐに元の従業員と同じ知識と経験を持つようになり、その後も学習して新しい状況に適応しつづけられる。情報テクノロジーに包まれた知能が複製され、組織全体に行き渡れば、人間と機械の関係は根本的に定義し直されるかもしれない。大多数の労働者の視点からすれば、コンピューターは生産性を高めるためのツールであることをやめ、実用的な代用品となる。結果的にもちろん、多くのビジネスや産業の生産性は上昇する──だが、労働集約性ははるかに低下する(p.105)
これら IT の特性が、労働者に深刻なダメージをあたえます。
労働がなくなったときの対処法
そのときの解決策はなんでしょうか?
それは、ベーシックインカム(BI)です。
シンプルに考えれば、生産において労働が不要になり、ひとが働かない事態になれば、それにあわせた制度をつくればいいわけです。
具体的には、生産性を向上させた企業や資本家に課税します。
その税収をもとに、お金を配るというものです。
たしかに BI には労働意欲をそぐという問題があります。
しかし消費者としての人間の役割を尊重してもいいのではないか。
とっぴな意見にみえますが、市場をまわすには、生産とおなじく、消費は不可欠な要素です。
キカイは消費しません。消費するのは人間だけです。
その役割にスポットをあててもいいでのはないか。
そのために、BI の導入を、まじめに考える必要があります。
002. ひとこと
IT 化とは、情報処理の自動化 & 複製化を、低コストでおこなうことです。
これまで経験したことのない事態です。
仕事にたいする考え方、保障制度も根本的にかわるのはまちがいありません。
そのことにおびえるだけでなく、具体的にイメージするには、参考になる本です。
よければチェックしてみてください。
ではまたー。