東京03『明日の風に吹かれないで』(第18回)感想&レビューです。

公演日 2016年7月
収録 新郎と友人
同意見
夢破れて
後継者
蓄積
プロポーズの返事
海の見えた家で

どうも、コント作家のりきぞうです。

きょうも、コント作品をレビューしていきます。

取り上げる作品、東京03『明日の風に吹かれないで』。

『新郎と友人』は、婚約者に逃げられた男のはなし。

ベタな設定とはいえ、角田さんの演技によって、笑いを誘う。

オープニングにふさわしいコント。

『後継者』は、ガンコな職人のはなし。

エラソーにしているものの、商売のウデがあまりにない ─ 。

かれの気質が、笑いをおこします。

職人の奥さんが、なにげに凶暴だったのも、さらに笑いをひきおこしていました。

『蓄積』は、友人2人に〝うっぷん〟がたまっていた男のはなし。

ふだんの、角田さん&豊本さんにたいする、飯塚さんのイライラが、あらわれているようなコントでした。

3人のカンケー性がうかがえます。

個人的に良かったのは、『同意見』『夢破れて』『海の見えた家で』 ─ 。

以下、くわしくみていきます。

『同意見』

あらすじ

松葉杖の販売会社。

先輩と後輩が、パソコンをみながら、よろこんでいる。

限定で出した新作が売れ、成績も好調。

そこで、調子に乗った後輩は、

「500本とはいわず、1000本、2000本売りましょう!」

と、いきまく。

すると、先輩の表情がいっぺん。

甘い見通しの後輩をどなりつける。

「だからおまえはダメなんだ!」
「そういうあと先を考えない発言を口にするな!」

しょげる後輩 ─ 。

そのとき、部長が帰ってくる。

入るなりいきなり、

「新作の松葉杖、1000、2000本売りだそう」

と提案。

あっさりオーケーを出す主任

その受けこたえに、納得いかない後輩は、

「このままだと、あやうく先輩を殺しそうなる」

と、言いのこし、オフィスを出て行こうとするが……

ひとこと

いつもの東京03なら、ここで先輩演じる角田さんの〝こびる態度〟によって、笑いを誘う。

とはいえ今回は、なぜ、自分の意見をそうそうに曲げて、部長の意見をあっさり受けいれるのか ─ 反論を展開します。

「こびへつらってはいない」
「部長は過去の実績と経験があるが、おまえはない」
「同じ言葉でも言う人によって意味合いが変わる」

あまりの正論に後輩は、追いこまれます。

これが笑いをおこす。

いつものなら、角田さんの〝手のひら返し〟が、笑いのキーになる。

今回ら、変化球によって、ちがった笑いを展開していましたね。

『夢破れて』

あらすじ

駅のホーム。

男3人がベンチにすわっている。

全員が、マンガのアシスタント ─ 。

そのうちのひとり「角田」が、マンガ家の夢をあきらめ、田舎に帰ることに。

ほかふたりは、見送りにきていた。

さいごに角田は、これまで頑張ってきた自分の思い出ばなしを語りだす。

「24時間、寝る間もおしんで、マンガを描いてきた」
「けれど、おれには才能がなかった。もう踏ん切りはついた」
「未練はない! やれることはやったんだ!」
「じゃあーな!」

と、勢いよくふりかえり、電車に乗りこもうとする。

が、遅延のため、電車はまだ来ていない……。

ふたたび、〝しれっと〟ベンチに座りなおす。

そのまま流れる時間 ─ 。

気まずくなった3人は……。

ひとこと

ビミョーな間&気まずい時間によって、笑いを誘うコント。

東京03のように、演技力がないと成立しないような作品です。

高度、かつ、おもしろい。

序盤は、絶妙な間をとることで、笑いをおこす。

いっぽう中盤では、夢やぶれたマンガ家(角田)の〝ダメダメな部分〟が、ポロポロ出てくる。

「さっき『24時間、寝る間もおしんで、マンガを描いてきた』みたいこと言ってたけど、そこまでおまえストイックではなかったらじゃん」

「ヘンな女に入れあげず、もうすこし頑張っていれば、マンガ家として、どうにかなっていたとおもうよ」

きわめて真っ当な指摘をうける、夢やぶれ人 ─ 。

展開は、いつもの東京03でしたね。

『海の見えた家で』

あらすじ

田舎のマンション。

主人・角田が、友人・飯塚&豊本を、自宅にまねく。

「海のみえるリビングから、ビールを飲もう」

そう誘われ、はるばる東京から2時間かけてやってきたふたり。

が、部屋からはいっさい海がみえない。

目のまえには、建設中のマンション ─ 。

どうやらさいきん、この建物が、リビングからみえる海をさえぎったようす。

それでも主人・角田は、〝リビングから海がみえるテイ〟で、ふたりをねぎらう。

怖くなった飯塚は、ツッコミをいれようか迷うが……

ひとこと

恒例の長尺コント。

今回は、角田さん演じる男が、〝不良物件〟を買ったところから、はなしがはじまります。

「海がみえていないのに、海がみえているようにふるまう」

現実を見たくないがゆえに、理想の世界を、友人2人におしつける ─ そのようすが、笑いをおこします。

「おまえたちも目を閉じてみろよ。ほーら、海が広がっているだろうぉー」

現実逃避するすがたに、かなしみをふくんだ、笑いをさそいます。

角田さんのジレンマのほか、じつは、友人・豊本さんにも、大きなヒミツがありました。

各人物の現状・心境を、バランスよく、シナリオにおとしこんでいるかんじです。

長尺コントならではの作品ですね。

まとめ


こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。

ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた。

よきコントライフを〜。