どうも、コント作家のりきぞうです。
きょうも、コント作品をレビューしていきます。
取りあげるのは、シェイクスピア『ヴェローナの二紳士』。
初期のころの作品で、修行時代に書かれた喜劇とされています。
以下、あらすじをみたあと、笑いのポイントをあげていきます。
目次
ストーリーの大まかな流れ

人物
プローテュース
ヴァレンタイン
ジュリア……プローテュースの恋人
シルヴィア……ヴァレンタインの恋人
場所
ヴェローナ → ナポリ(ミラノ)
あらすじ
親友のプローテュースとヴァレンタイン。
勉学のためヴァレンタインはナポリへ派遣される。
一方のプローテュースも、恋人ジュリアに愛をささげるため故郷にとどまるつもりだったが、父親からナポリ行きを強要される。
かなしみにくれるプローテュースは、ナポリに行くまえに「帰ってきたらかならず結婚しよう」と約束。
ひと足さきに、到着したヴァレンタインは、ナポリの大公のむすめ、シルヴィアと恋仲に。しかしシルヴィアには父親がきめたフィアンセがいるため、ふたりのカンケーは公然の秘密とされていた。
しばらくしてプローテュースもナポリに到着。さっそくヴァレンタインに会いに行くが、そばにいたシルヴィアを目にしたとたん、恋に落ちる。
ジュリアへの熱はさめ、シルヴィアへの想いにかられる。ヴァレンタインとの仲を知ったプローテュースは、ふたりの秘密のカンケーを密告する。
さらにジュリアも男に変装しをプローテュースをナポリまで追いかけ、ちかづく。変装に気づかないプローテュースは、ジュリアにシルヴィアへラブレターを渡すようにたのむが……。
シェイクスピアの数ある劇のなかで、この作品は「喜劇」に分類されている(ほか2つは「史劇」&「悲劇」)。
とはいえ、喜劇にしてはシリアスすぎる。
プローテュースが親友を裏切るシーンや、裏切られたヴァレンタインが森をさまよう場面などは、どうみても悲劇としか思えない。
その要因はおそらく、テキストベースで作品を追ったからだろうか。
じっさい舞台で演じるときには、役者のセリフまわしも陽気で、ぜんたいの雰囲気はあかるいものだったのかもしれない。
そうはいっても、プロットの展開は悲劇のながれとかわらないので、喜劇としてつくるには、演出家はかなり苦労するだろうな。。
笑いのポイント
笑いのポイントをみていきます。
コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。
この作品ではプロットに注目してみます。
コントのプロットはとてもシンプル。
[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」がある。
パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つ。

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「交錯」だとわかります。
「交錯」では、隠した気持ちや出来事がバレないように、ある人物が、コトバやアクションを取りつくろうようすをえがく。
ストーリーがすすむにつれ、 事態があきらかになっていき、人物のウソがバレていくが、そのときみせる、アタフタする姿だったり、スジちがいのセリフが、笑いを引きおこす。
この作品でも、シルヴィアへの想いを隠したプローテュースが、大公への密告というかたちで、ヴァレンタインをワナにはめる。
プローテュースはこの策略がバレないよう、さまざまな言い訳をたてて、取りつくろう。
また男装をしたジュリアは、正体をあかさないまま、プローテュースに近づくが、それにより、恋する相手から、べつの女性にラブレターをわたしてくるように頼まれてしまう。
このように、アタフタする姿や、スジちがいのセリフやアクションが、観てる人を笑わせる。
図にするとこんな感じ。
・ヴァレンタインをワナにハメて追い出す
・ジュリア、ラブレターを渡すよう指示される
プローテュースが好きな人 = シルヴィア
プローテュースがシルヴィアへ想いをひた隠しにすることで、ヴァレンタインは追放されてしまう。
またプローテュースの本音を知らないジュリアは変装して近づいたのがアダとなり、ラブレターを渡してくるようにたのまれてしまう。
このちぐはぐなやり取りが笑いをうむ。
ただしこの展開には笑えず、ヴァレンタインの境遇や、ジュリアのかなしみに同情してしまう人も多いはず。
その点がこの作品を喜劇にするかしないかのさかい目。
苦しんでいる登場人物に同情した時点で、それは喜劇ではない。
個人的にはどうしても悲劇に思えてならないんだよなぁ。
ちなみにラストでは、プローテュースの本音が全員に発覚したあとの展開もえがかれているので、興味ある人はチェックしてみてください。
まとめ
こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。自分でつくるときにも役立ちます。
ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。ちがう記事ものぞいてみてください。
ではまた。
よきコントライフを〜。