どうも、コント作家のりきぞうです。
きょうも、コント作品をレビューしていきます。
取りあげるのは、シェイクスピア『じゃじゃ馬ならし』。
喜劇では、初期のころの作品です。
ほかの作品にくらべると、わりとマイナーな部類にはいりますね。
以下、あらすじをみたあと、笑いのポイントをあげていきます。
目次
ストーリーの大まかな流れ

人物
ファーディナンド……王
ビローン……王につかえる貴族
ロンガヴィル……〃
デュメーン……〃
フランス王女
ロザライン……王女につかえる貴婦人
あらすじ
パデュア家の長女キャタリーナは「じゃじゃ馬」で有名。
いっぽうの妹ビアンカは、おとなしい女性で、たくさんの男性からプロポーズをうける。
しかし父親は長女の結婚が済むまで、次女の婚約は認めない。かわりに、家庭教師をつけ、花嫁修業させる。
そこをつけ狙い、ビアンカに恋するルーセンショーは語学教師に変装して、彼女に近づく。
パデュアに留学中の身でありながら、彼女との結婚をもくろむ。
そんななか、パデュアの町に、ペトルーチオがやってくる。性格は二の次、金持ちな女と結婚したい彼は、キャタリーナにアプローチ。
さいしょは拒んでいた彼女も、押しのつよいペトルーチオに負けてしまい、結婚することに。彼の別荘がある町へと連れていかれてしまう。
ほどなくして、ルーセンショーはビアンカにプロポーズするが……。
だいたいこんなストーリーだけど、このほかにも、ルーセンショーが語学教師に変装しているあいだ、召し使いのトラーニオが主人のルーセンショーに変装する。
そうして、ビアンカに近づくほかのライバルをひきつけ、主人とビアンカを2人っきりさせる。
主人も召し使いも変装するんだけど、ほかにもライバルのホーテンショーも、音楽教師に変装して、ビアンカに近づく。
こんなふうに、メインの登場人物が、変装するシーンがとても多い。
ラストのほうでも、ルーセンショーの父親、ヴィンセンショーが登場するが、そこでも彼に変装した男が、鉢合わせてしまい、ドタバタがおきる。
シェイクスピアの喜劇では、変装シーンはけっこう出てくるが、この作品では頻出する。
そのぶん、バレる瞬間や、事態が明らかになったときに、笑いがうまれやすいため、喜劇には都合のいい手法だといえる。
相関図は、こんなかんじ。

笑いのポイント
笑いのポイントをみていきます。
コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。
この作品ではプロットに注目してみます。
コントのプロットはとてもシンプル。
[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。
なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。
パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。
ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「交錯」だとわかります。
「交錯」では、人物が、真相をかくしたり、まわりの人たちにワナをしかける。
それにより、カン違いした人物が、スジ違いのセリフをはいたり、アクションをおこす。
そのようすが笑いを引きおこす。
この作品でも、ルーセンショーを語学教師と思いこんだビアンカが、勉強と称して、愛のコトバを復唱させられたりする。
図にするとこんな感じ。
・ルーセンショー、愛のコトバをおしえる
・ビアンカ、復唱する
ルーセンショー ≠ 語学教師
この作品では、変装シーンがたびたび出てくる。
そのため、ルーセンショーとビアンカのやり取り以外にも、だまし/だまされる場面がたくさんあります。
そのため、交錯の構図も多くみられる。
いっぽう、キャラクターに注目すると、「じゃじゃ馬」だったキャタリーナが、より「マッチョな」ペトルーチオと結婚することで、貞淑な女性に変化。
このプロセスが見どころのひとつです。
「じゃじゃ馬」のころのキャタリーナの結婚先について、父親とトラーニオはこんなやりとりしている。
バプティスタ まったく私が演じているのは貿易商人の役だ、いちかばちかの取引に目をつぶって飛びこむのだから。
トラーニオ しまっておいてもむだな商品でしょう、船に積めば利益になるか 、たとえ海の藻になってももともとだ。
それがペトルーチオと結婚してからこうなります。
以下、ペトルーチオの召使いの会話。
ピーター 旦那〔ペトルーチオ〕はじゃじゃ馬をもってじゃじゃ馬を制する気だろう 。 〔…〕
カーター 奥さんの部屋で貞節について説教している、それもどなる、わめく、毒づくで、かわいそうに奥さんは立つ瀬も目のやり場も口のききようもない、ただ夢から覚めた人のようにぼんやりすわっている 。
セリフまわしもふくめて、とても楽しめる作品です。
まとめ
こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。自分でつくるときにも役立ちます。
ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。ちがう記事ものぞいてみてください。
ではまた。
よきコントライフを〜。


