モリエール『守銭奴』感想&レビューです。

どうも、コント作家のりきぞうです。

取りあげるのは、モリエール『守銭奴』。

中期から後期の作品です。

以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。

ちなみに、鈴木力衛訳で読みました。

以下、引用のページ番号は、うえの文献によります。

また2000年には、べつの翻訳も出ています。

わりと読みやすいです。

よければチェックしてみてください。

ストーリーの大まかな流れ

人物

アルパゴン
クレアント……アルパゴンのむすこ

マリアーヌ……クレアントの恋人

場所

アルパゴンの家(パリ)

あらすじ

マリアーヌに恋するクレアント。

しかし彼女の家は貧しく、マリアーヌの持参金を期待できないため、ケチの父親アルパゴンは認めない。

お金の支援をうけ、許可をもらおうとするが、事態はさらに悪化。

父アルパゴンもマリアーヌの美しさに魅了され、彼女と結婚すると言いだす。

極度の「締まりや」で金はいっさい出さない。しかも恋人まで自分のものにしようとたくらむ。

むすめのクレアントは、よそから借金をしたり、妹やまわりの人たちと協力して、アルパゴンから金をむしり取ろうとするが……。

ひとこと

ストーリーの軸は、クレアントとマリアーヌの結婚だが、笑いの軸は、アルパゴンのキャラクター。

父親のドケチっぶりが、笑いのカギとなります。

たとえば、無益の結婚に反対する。

また、ファッションにかけるお金にまで口を出す。

さらには、身のまわりの世話については、「食事」「馬の飼育」など、ひとりの人物に何役もおしつける。

そのためまわりの人たちからこんな陰口をたたかれる。

フロジーヌ 盗むといっても、相手があの人なら、功徳を施したような気持ちになるでしょうな。

(p.55)

高利貸しで財を成すアルパゴン。

とうぜん身内にもきびしい。

むすこのクレアントが借金をする相手が、自分だと発覚したときには、立場をわきまえず、相手をののしる。

アルパゴン こいつ、ろくでなしめ! おまえなのからこんなけしからん真似をしでかそうっていうのは?

クレアント 驚いたな、お父さんですか、こんな恥知らずな仕打ちをなさるのは! (……)

アルパゴン おまえなのか、こんなたちの悪い借金で破産したいというのは?

クレアント お父さんですか、こんなべらぼうな高利で金もうけをしようっていうのは?

(p.58-59)

このシーンは何度みても笑っちゃいますね。

なにがおかしいって、損だと気づいた瞬間、加害者である自分をわすれ、目のまえの不利益に、カラダがおもわず反応してしまうから。

会話のやり取りも、劇を盛り上げます。

クレアントの妹エリーズの結婚が話題にのぼるシーン。

彼女の資産を考えずに、相手は結婚をのぞんでくれています。

この縁談について、ひそかにエリーズを想うヴァレールと、会話するときはこんなかんじ。

ヴァレール 〔……〕お嬢さまとしては、こんなふうにおっしゃりたいのかもしれません、結婚は女の一大事だし、一生涯幸福になるのも不幸になるのも、それひとつにかかってる。〔……〕

アルパゴン 持参金なしに。

ヴァレール ごもっともです、それで万事は決まります。それはもうよくわかっておりますが、でもこうも言えるんじゃございませんか。こんな場合には、なによりもまず娘の気持ちを尊重しなければならない。これほど年が違い、気立てやものの考えかたにも開きがあると、とかく忌まわしいことがおこりがちで……

アルパゴン 持参金なしに。

ヴァレール なるほど。これには返事もしようもございません。それはよくわかっております。反対するなんて、とんでもないことで。でも世間には金を出す出さないより、まず娘を満足させてやりたいと考える父親もたくさんいるようでございます。損得のために娘を犠牲にするなど、思いもよらず、結婚生活が円満にゆくよう、そればかり注意する、そうすれば、世間体もよし、いつまでも家庭に波風が立たず、喜びにあふれ、そして……

アルパゴン 持参金なしに。

ヴァレール ごもっとも。そう言われては、だまって引き下がるより仕方ありません。(……)

(p.40-42)

ケチな性格がつよいばかりに、頭のなかでは「持参金なし」しか浮かんでこない。

アドバイスがきいておきながら、このフレーズをくりかえす。

反復のようすにくわえ、アルパゴンのキャラを理解する観客は、ついつい笑みがこぼれてしまう。

笑いのポイント

笑いのポイントをみていきます。

コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。

この作品ではプロットに注目してみます。

コントのプロットはとてもシンプル。

[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

コントの書き方 ─ プロットの構成について

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。

パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。

コントの書き方 ─ プロットの展開について

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「反復」だとわかります。

「反復」では、状況や環境が変わっても、それまでと同じアクション、セリフ、出来事をくりかえすようすを描きます。

それによって笑いをおこします、

この作品でも、ドケチのアルパゴンが、いかなるときでも、損得勘定でアクションをおこし、節約のことばかり口にする。

このながれが観ている人を笑わせる。

図にするとこんな感じ。

構図 ─ 反復
アルパゴン=ドケチ

・トクしないアドバイスには聞く耳をもたず
・つねに利益と節約を口にする
・トクのない、むすこの結婚に反対する

アルパゴン=ドケチ

このほか、食料代をおさえた結果、持ってる馬がガリガリになっていたり、隠しもっていた金庫が盗まれて絶叫したり。

ドケチがもたらす笑いが、何度もおこる。

いっぽう、ビンボーなマリアーヌに惚れてしまったり、どこか矛盾した部分も。

このあたりに「守銭奴」アルパゴンの奥深さがあります。

ちなみに、解説によれば、当時は興行的にもまずまずだったようで、一般ウケもかなりよかったらしいです。

たしかに、ほかのモリエール作品にくらべても、笑いの演出がたくさんしかけてあり、何にも考えずに笑える。

さいしょにモリエールの喜劇をみるなら、本作がおすすめです。

まとめ

こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた。

よきコントライフを〜。