どうも、コント作家のりきぞうです。
きょうも、コント作品をレビューしていきます。
取りあげるのは、シェイクスピア『十二夜』。
喜劇のなかでは後期の作品です。
円熟期に書かれ、現在では高い評価をうけています。
以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。
ちなみに、河合訳、Kindle 版でよみました。
以下、引用のページ番号はこちらの文献によります。
目次
ストーリーの大まかな流れ
人物
オーシーノ
オリヴィア
ヴァイオラ
セバスチャン
マルヴォーリオ
場所
イリリア
あらすじ
イリリアの領主オーシーノは、伯爵家の女主人に好意をよせる。しかし何度もラブレターをおくるものの、返事はつれない。
そんななかイリリアに、メッサリーン家のむすめ、ヴァイオラがやってくる。
船のアクシデントにあい、双子の兄セバスチャンと離れ離れになった彼女は、かなしみにくれていた。
オーシーノの評判をきき、仕えたいとおもいたつ彼女は、男装をし、ちかづく。
そしておもいどおり、小姓としてそばにつくことになるが、オーシーノに魅了され、恋におちる。
しかし男であるオリヴィアにたいし、オーシーノはヴァイオラとの仲立ちを依頼する。
好きなあいてから、ほかの女性との仲介を頼まれたヴァイオラのキモチは複雑。
本性を明かしてはならないというジレンマをかかえながら、それとなく好意をつたえる。
ヴァイオラ 僕たち男は女よりも口が立ち、誓いも派手だが、真の思い以上に見せかけている。男はいつだって、愛していると誓うばかりの気まま勝手。
(No.862)
それでも、オリヴィアのもとにむかうが、今度はオリヴィアが、男装すがたのオリヴィアに恋におちる。
さらにそこへ、死んだはずの兄セバスチャンがやってきて……。

ひとこと
喜劇ではおなじみのパターン。
双子がもたらすカン違いばなしです。
シェイクスピアもこの展開が好んだようで、ほかにま『まちがいの喜劇』でも、双子を登場させ、交錯劇をつくりあげています。
そちらでは2組の双子を登場させ、フクザツなプロットを組んでいました。こちらでは、双子はオリヴィア & セバスチャンのふたりだけで、そのぶんストーリーがスッキリしています。
カン違いするようすが明確で、読んでいてわかりやすい。
また、オリヴィアにしかえる、マルヴォーリオという執事が登場。
ひそかにオリヴィアを想い、あわよくば貴族の地位をねらう彼だったが、その下ごころを、侍女マライアに見透かされ、ニセのラブレターによりすっかりダマされてしまう。
オリヴィアもまた自分に想いをよせていると思いこんだ彼は、すっかりその気になり、ラブレターの指示どおり、黄色いのくつ下をはき、趣味のわるいくつ下留めをつける。
マルヴォーリオ (……)なにしろ、どう読んだってお嬢様が私に惚れていることは明白だからな。そういえば最近 、私の黄色の靴下をお気に召して、十字の靴下留めも褒めてくださった。そしてこうして愛を告白して、私にお嬢様のお好みの姿をするように、なかば命じるようにして仕向けていらっしゃるのだ。運命の星よ、ありがとう。私は幸せ者だ。人と異なる恰好をするぞ。偉そうにして、黄色い靴下をはいて、十字の靴下留めをするぞ、たった今から!
(no. 986)
彼のダマされぐあいがサブプロットを構成し、ストーリーに厚みをもたせています。
シンプルかつフクザツで、ふたつのバランスがすばらしい。
評価が高いのもうなづけますね。
笑いのポイント
笑いのポイントをみていきます。
コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。
この作品ではプロットに注目してみます。
コントのプロットはとてもシンプル。
[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。
パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「交錯」だとわかります。
「交錯」では、セリフやアクションによって真相をかくし、登場人物をカン違いさせる。それによって、スジ違いの発言であったり、行動に出る。
そのようすが見てる人を笑わせる。
この作品でも、ヴァイオラが男装することで、オーシーノ & オリヴィアが、カン違いする。
オリヴィアは女であるヴァイオラにホレてしまい、それを知ったオーシーノは、部下の裏切りと思いこみ、手をかけようとする。
このようすが観ている人を笑わせる。
図にするとこんな感じ。
・男装のヴァイオラにホレるオリヴィア
・裏切りとみなすオーシーノ
・自分にホレていると知らずに手をかける
女 = ヴァイオラ ≠ 男
また「交錯」には、ある人物が、真相を隠したり、ワナをしかける。それにより、カン違いする人物に、スジ違いのセリフをはかせ、アクションをおこさせるといったパターンがある。
執事マルヴォーリオがダマされるようすでは、こちらの構図をとっている。
図にするとこんなかんじ。
・ニセのラブレターをみるマルヴォーリオ
・オリヴィアが自分に恋してるとカン違い
・てがみの指示どおり、趣味のわるい服装をまとう
・オリヴィアにそれとなくアピール
オリヴィアの恋する相手 ≠ マルヴォーリオ
まとめ
こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。自分でつくるときにも役立ちます。
ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。ちがう記事ものぞいてみてください。
ではまた。
よきコントライフを〜。