【書評】『世界の歴史 27 自立へ向かうアジア』感想&レビュー

どうも、りきぞうです。

大学のころから、世界史に親しんできました。

大学院時代は、本格的に人文書・歴史書にあたってきました。

きょうは『世界の歴史 27 自立へ向かうアジア』を紹介します。

本書は、中央公論新社から出ている「世界の歴史シリーズ」の第27巻です。

『世界の歴史 27 自立へ向かうアジア』の概要

まずは目次から。こんなかんじ。

第1部 戦争と革命の中国
1 中華民国の成立
2 戦勝国となった中国
3 国民革命の展開
4 南京国民政府の時代
5 抗日戦争、そして〝惨勝〟

第2部 非暴力と自立のインド
1 南アジアの十九世紀 ─ 植民地とは何だろうか
2 二十世紀のインド ─ 第一次大戦終了まで
3 ガンディー時代 ─ 第一次大戦終了から第二次大戦開始まで
4 インドから出て行け(クイット・インディア)運動
5 独立と国民国家の形成

本書のテーマは、近現代史 ─ 。

中国&インド地域をメインに、第一次大戦から第二次大戦前後の時代をあつかいます。

「国共合作」や「クイット・インディア運動」など、世界史の教科書でも有名なできごとについても、詳しく説明しています。

また孫文やガンジーなど、近現代史を動かした重要な人物についても、活躍の背景などにもふれながら、ていねいに記述しています。

概説書ではものたりない人には、おすすめの1冊。文体もかんたんなので、読みやすいです。

『世界の歴史 27 自立へ向かうアジア』のポイント

わたしが気になったのは、つぎの2点。

  • 「五四運動」の影響
  • インドの独立を支持した英国人

それぞれ、みていきます。

「五四運動」の影響

「五四運動」とは、日本がドイツから、山東省の権益を引き継いだできごとをきっかけに、北京の学生たちが反抗運動です。

教科書でも有名な事件ですね。

日本ではかんたんに説明される事件ですが、中国の人たちにとっては、たいへん影響をおよぼした運動でした。

というのも、五四運動をきっかけに、ナショナリズム機運が一気に高まってくるからです。

これにより「上から」ではなく、「下から」の民主化運動が、本格的に展開されます。

それまでも欧米列強の圧力をうけて、一部の王朝官僚が近代化政策にのりだすことはありました。とはいえそれらは、内実をともなわず、かたちだけの施策ばかりでした。

しかし、五四運動のあとの民主化の動きは、既得権益にとらわれない民衆たちの反抗であり、地に根づいた改革運動でした。

そしてここから孫文ひきいる「国民党」が、勢力を拡大していきます。さらに、民主化の流れから、共産主義に加担する人たちもあらわれます。

小規模ながら、のちに中華人民共和国を築くことになる毛沢東も、本格的に政治運動に参加します。

その意味で五四運動は、中国政治を語るうえで、避けられないできごとといえます。

五四運動が中国近現代史にあたえた影響は大きかった。〔略〕これは第一次世界大戦後の世界におこった大変化〔略〕すなわちナショナリズム高揚の、中国におけるひとつの発現にほかならなかった。

─ 2章 p.72

独立を支持した英国人

つぎはインド地域です。

中国と同じく、インドでもイギリス支配から抜け出そうと、反抗運動が高まってきます。

といっても、インドで注目したいのは、民主化にさいして、英国の改革派から、現地のインド人に統治をまかせようとする流れが、出てくることです。

もともと〝ガス抜き〟程度に、人びとの意見を反映する場である「インド国民議会」が、英国側によって、つくられていました。

イギリスの急進派は、この国民議会を糸口に、インド統治を現地出身者にゆだねようとします。

たとえば、国民議会の書記長であったヒュームは、イギリス本国にたいして、つぎのような要求すべきと考えていました。

・カナダなどで達成されていた代表・責任政府の確立
・地方の違いを超えた国民の統一
・インド人官僚の登用
・選挙権の獲得

これらの項目の実現を訴えうえで、総督以外のすべての官職は、現地インド人にまかせるべきだと、ヒュームは主張していました。

もちろん、現地人のなかには「インド生まれのイギリス人」もふくまれます。けれど、むかしからインドで暮らしていた民族に、統治をゆだねようとする動きは、はっきりとあらわれてきたわけです。

その意味では、初期のインド民族運動の流れは、民衆の反抗だけでなく、イギリス国内の急進派とセットでみていかないと、じゅうぶんにとられることできません。

同じ民族運動といっても、植民の歴史によって、民主化の方向は変わってくる ─ そんなことがわかる事例かなと思います。

インド国民議会の運動がプラスにせよマイナスにせよ、いかに当時のイギリス人の思想状況と関係が深いかがわかってくる。インドの民族運動が、いっぽうでは、イギリス政府と対立しながら、イギリス国内の野党・反政府勢力を一貫してどこかで信頼しているようすがみえるのも、歴史をひもとくとわかってくるのである。

─ 6章 p.277

おわりに

以上のように、本書では第一次大戦前後のアジア地域をあつかっています。

この時代を知るには、もってこいの内容です。

よければ、チェックしてみてください。

では、また。