【書評】『世界の歴史 28 第2次世界大戦から米ソ対立へ』感想&レビュー

どうも、りきぞうです。

大学のころから、世界史に親しんできました。

大学院時代は、本格的に人文書・歴史書にあたってきました。

きょうは『世界の歴史 28 第2次世界大戦から米ソ対立へ』を紹介します。

本書は、中央公論新社から出ている「世界の歴史シリーズ」の第28巻です。

『世界の歴史 28 第2次世界大戦から米ソ対立へ』の概要

まずは目次から。こんなかんじ。

1 第二次世界大戦の勃発
2 連合国の反攻と枢軸諸国の敗戦
3 植民地と第二次世界大戦
4 戦後世界秩序の形成と米ソ冷戦の始まり
5 植民地支配の解体と冷戦の影
6 米ソ核戦争の脅威と雪どけの模索
7 冷戦と第三世界の挑戦

テーマは、第二次大戦とその後の世界 ─ 。

世界大戦の流れと、植民地地域の動きを描いていきます。

アメリカやドイツなどの先進国と、東南アジアなどの植民地諸国の展開をバランスよくあつかっています。

この時代をざっくり見通すには、最適な1冊です。

個人的には「ベトナム戦争」をくわしく描いているのが良いなぁと思いました。

『世界の歴史 28 第2次世界大戦から米ソ対立へ』のポイント

わたしが気になったのは、つぎの2点。

  • 「無条件降伏」要求の意味
  • 「第三世界」台頭の背景

それぞれ、みていきます。

「無条件降伏」要求の意味

ご存知のとおり、第二次世界大戦の後半では、連合国側(イギリス・フランス・アメリカなど)が戦況を有利にはこびます。勝負がわかってきたところで、イギリスとアメリカは、ドイツにたいして「無条件降伏」を要求します。

これは名前とおり、負けを認めたら、相手の要求を〝すべて受け入れる〟というものです。たいへん厳しい内容なので、そうかんたんにドイツがのみこむとは思えません。

じじつ、要求が厳しすぎたことで、ドイツは敗北をみとめず、ずるずると戦場状態をつづけ、大きな被害をもらすことになりました。

もうすこし連合国側の要求がゆるかったら、戦争は早く終わり、ホロコースト(ユダヤ人虐殺)の被害も、抑えられていたかもしれません。

では、なぜイギリスやアメリカは「無条件降伏」という厳しい要求をおしつけたのか?

それは「ソ連対策」のためでした。

じつはソ連は、イギリスとアメリカが、融和策に転じて、ドイツの手をむすぶことをいちばんに恐れていました。そのためにソ連は、兵力を出して、ドイツを倒そうとはしてくれませんでした。

イギリスとアメリカからしたら、ドイツを背後からおさえるソ連の力は、どうしても必要です。

そこで両国は「本気でドイツを倒そうとしているんだ」ということをアピールするために、あえて「無条件降伏」をドイツに要求します。

こうすることで、もはやドイツにたいして手をゆるめず、講和を結ばないと、ソ連に示すことができます。

「無条件降伏」の要求には、こんな意図がありました。

米英両首脳によるカサブランカ会議〔1943年1月〕の席上で、ローズヴェルトがもっとも困難な終戦方式である「無条件降伏」を枢軸側に要求した背景には、米英がドイツにたいする非妥協的な姿勢を示すことによって、ソ連の不信感を緩和させようとする意図があった。

─ 2章 p.113

このあたりは教科書では、なかなか分からないところですよね。こういうトコが、歴史書を読む意味だったりします。

「第三世界」台頭の背景

第二次大戦後、世界は「冷戦体制」への突入していきます。ソ連を代表とする社会主義国側と、アメリカを代表とする資本主義国側の対立です。

1960年代ごろまでに、世界の国々は、どちらかの陣営に組みこまれます。しかしそのいっぽうで、どちらのグループにも属さない国家があらわれます。

それらの国々を「第三世界」といいます。具体的には、ユーゴスラビアやインド、アフリカの一部諸国です。

ではなぜ、ソ連とアメリカ、どちらの陣営にも属したくない国々が出てきたのか?

本書では3つの要因をあげています。

なかでも大きく影響したのが、「局地戦の激化」です。

冷戦体制のもとでの争いは、米ソによる代理戦争のかたちをとりました。本人の政治理念はともかく、どちらの陣営を支持すれば、大国からお金と軍事力の支援をうけられるからです。

これが問題でした。

というのも、アメリカやソ連からすれば、代理戦争のかたちをとるため、みずからの領地に大きな被害はうけません。

そのために紛争が起こったエリアにたいして、大量の軍事兵器を投入できます。結果、小規模の争いであっても、いつのまにか大規模な戦争へと発展しまうわけです。

第三世界の国々が恐れたのが、この「局地戦の激化」でした。

つまり、社会主義陣営&資本主義陣営のどちらにも属してはならないと、訴えたわけです。いわゆる「灰色地域」をつくるためにできあがったのが、第三世界の国々でした。

東西両陣営の競争は、二つの陣営のどちらにつくのかが明確ではなかった「灰色地域」をめぐって、激化することになった。〔略〕東西両陣営の大国のあいだに〔略〕その地域以外には拡大しないという暗黙の了解が存在すれば、大国は、いわば「安心」して、その紛争地域に、核兵器を除くあらゆる近代兵器を投入することが可能になってしまうからである。

─ 7章 p.351-352

じつは大国の援助をうけることで、かえって地域紛争を広げてしまう例は、いまでもみられます。

パレスチナの紛争などは、いちばんの典型です。冷戦体制における負の遺産は、いまでも残っているわけです。

おわりに

以上のように、本書では第二次大戦後の世界をあつかっています。

この時代を知るには、もってこいの内容です。

よければ、チェックしてみてください。

では、また。