【書評】『世界の歴史2 中華文明の誕生』

どうも、りきぞうです。

大学のころから、世界史に親しんできました。

大学院時代は、本格的に人文書・歴史書にあたってきました。

きょうはつぎの本を紹介します。

『世界の歴史2 中華文明の誕生』概要

まずは本書の目次から。こんなかんじです。

第1部 新石器、殷・周 ─ 族的秩序が崩れるまで
1 本書前半をひもとく前に1 ─ 天下と正統
2 本書前半をひもとく前に2 ─ 原中国の制度と理念
3 新石器時代
4 殷王朝と周王朝
5 春秋戦国時代

第2部 皇帝、四海を制す
1 辺境の覇者 ─ 秦の勃興
2 下一統 ─ 始皇帝の登場
3 長安の都 ─ 漢帝国の成立
4 登りつめた漢帝国 ─ 前漢から新へ
5 洛陽の盛衰 ─ 後漢
5 天下三分の計 ─ 三国時代

第1部では、中国文明のおこりから、春秋戦国時代の終焉までをあつかいます。

はじめに、「天下」「正統」の意味など、中国史をみるさいの視点を提示 ─ 。そのうえで、[新石器時代 → 殷 → 周 → 春秋戦国]の流れをたどっていきます。

第2部では、秦王朝から三国志時代までをあつかいます。

・始皇帝の中央集権政策
・項羽 vs 劉邦の対立
・武帝の内政&外政

などなど、世界史でも〝キモ〟となるできごとをわかりやすく解説しています。

第1部/第2部の書き手が違うこともあってか、難易度にかなりの差があります。

第1部は、かなり専門性が高く、ある程度の背景知識がないと、読みとおせません。とくに、古代中国での「数」「天界」のとらえ方については、あまりに〝ニッチ〟すぎて、とちゅう投げ出したくなります。。

いっぽう、第2部は、語り口もやさしく、すんなりアタマにはいってきます。扱っている内容も、世界史の教科書で記されていることがほとんど ─ 。副読本としても、ちょうどいいです。

ショージキ、1冊の本にまとまっているくらいなら、難易度をそろえてほしいと感じました。

初見の方は、まず第2部を目をとおす ─ そのあとに、第1部の細かい議論にあたるのが、良いと思います。順々に読んでいくと、かなりの確率で挫折します。

『世界の歴史2 中華文明の誕生』詳細

以下、気になったトコをあげていきます。

つぎの2点です。

  • 周王朝と諸侯の関係性
  • 都市の重要性

それぞれ、くわしくみていきます。

周王朝と諸侯の関係性

古代中国史では、[夏 → 殷 → 周]ときて、周王朝がつよい権勢をほこっていた、と習います。まわりの有力者(諸侯)にたいして、影響力を及ぼしていた、と。

しかしこの見方は、「秦王朝」以降の考えに引きづられています。

じっさいには、権威があったといっても、土地を与えて統治を認めるほどの力はありませんでした。

土地を提供するといっても、それは、周王朝に出向くための物資をあたえる意味合いがつよかった。遠方の諸侯があいさつにむかうさい、かれらの交通費がかからないよう、近場に泊まる場所を与える意味合いのほうがつよかったわけです。

田猟地のうち、殷の支配秩序下にあった諸族の名とみられるものは、じつは諸侯が出仕するための物資を提供するために、近傍に設定された地であった可能性が濃くなろう。(p.148)4章

諸侯たちに影響力をあたえていたといっても、経済面よりも、権威による拘束力のほうが大きかった。

殷・周ともに、直接統治がおよぶのは、ごく限られた範囲であり、〔……〕都の近傍に設定された諸族の食邑への霊的威信行為をとおして、観念的に〔……〕関係を維持していたのである。(p.148)4章

周王朝の力は、中国一帯に広まっていたイメージがあります。けれど、そんなことはありません。「始皇帝」以前、秦王朝が中央集権制をしくまでは、中央の力はよわかった。

のちの時代の〝枠組み〟で、歴史をみると、錯覚をもたらす ─ そのあやまりの典型といえます。

都市の重要性

春秋戦国時代では、土地よりも「都市」のほうが重要でした。

史書に「一五城を取る」「二城を抜く」「5城を返す」などと記されているように、当時の対外戦争は、〝面〟ではなく、〝点〟(都市)の争奪戦であった。(p.301)6章

というのも、〝喰わか喰われるか〟の世の中では、効率よく軍事力&経済力をのばすことが、カギだったからです。

へんぴな土地を獲得しても意味はなく、こちらの物資&資産を増やす、都市の奪還が生き抜くためには、たいせつだったんですね。

国境は有って無きがごとくであり、諸王の強弱は、領土の広さではなく、どれほどの数の都市を支配下においているかで決まった。(p.301)6章

わたしたちは、土地面積の多い/少ないで、権勢の強弱を判断しがちです。教科書でも地図をつかって、王朝の支配領域をあらわしていますしね。

しかし当時の見方でいえば、領土は問題じゃありません。春秋戦国時代での〝えもの〟といえば、土地ではなく「都市」でした。それぞれの有力者(=覇王)は、領土拡大ではなく、敵国の都市奪還を目指していたんですね。

このあたりの視点も、歴史書を読まないと、イメージしにくいところであり、また、歴史にふれるおもしろさだったりもします。

おわりに

本書は、「詳しさ」と「分かりやすさ」が、ほどよくマッチしています。

第1部は、初見の人だと、シンドイかなぁと思います。とはいえ、まえもって古代中国史史の流れを把握しておけば、楽しんで読むことができます。

詳細を知るにも最適です。中国王朝の根底に流れる考え方など、詳しく知りたい人は、チェックしてみてください。