どうも、りきぞうです。
大学のころから、世界史に親しんできました。
大学院時代は、本格的に人文書・歴史書にあたってきました。
きょうはつぎの本を紹介します。
目次
『世界の歴史1 人類の起原と古代オリエント』概要
まずは目次から。こんなかんじです。
1 人類のはじまり
2 食料生産のはじまり
3 文明の誕生
4 文化と文明
第2部 都市と帝国
1 メソポタミア文明の誕生
2 都市の境界をこえて
3 人びとのくらし
4 アッシリアとフリ人の勢力
5 国際関係の時代
6 大帝国の興亡
第3部 ナイルが育んだ文明
1 エジプト文明の成立
2 官僚制国家への道
3 オリエントの国際政治のなかで
4 栄光と衰退
第1部では、文明がおこるまでの人類史のおはなし。食糧&都市&文化について、大まかに述べています。
第2部は、メソポタミア文明について。シュメール人による文字の発明〜アッシリア帝国の滅亡まで。
第3部は、古代エジプト文明 ─ 。31の王朝を順々にみていきます。
概説書ということで、バランスよく説明しているかんじです。写真&地図も多く、初見の人でも、すんなりアタマに入る構成になっています。
とくに、エジプト文明については、全王朝を扱っているので、エジプトの歴史を把握するのに、ピッタリです。
いっぽう、メソポタミア文明については、専門性が高く、[シュメール人 → アッカド人 → アムル人 → ヒッタイト人]の背景知識がないと、シンドイかなぁと。
世界史の教科書を読みなおしたうえで、文章にあたると良いです。
『世界の歴史1 人類の起原と古代オリエント』詳細
以下、気になったトコをみていきます。つぎの2点です。
- バビロニアの自由
- 遊牧民(ヒクソス)が交易をうながす
それぞれ、みていきます。
バビロニアの自由
バビロン王朝というと、『ハムラビ法典』が有名です。
戒律が記され、きびしいルールを民衆におしつけた ─ こんなイメージがありますね。けれど、意外にも、民衆の自由を記述している法典もあります。
もともと、バビロン王朝が用いるシュメール語では、「自由=母のもとにもどす」という意味があります。そこから、王朝では、民衆の自由を担保するために、債務者の借金を〝帳消しにする〟制度をとっていました。
つまり「徳政令」をしいていたわけです。
すでに、BC.2000年〜、マーケットのしくみがあり、借金に苦しむ人がいた ─ これ自体、ひとつの驚きですよね。
さらに、ときの統治者が、自由の担保するために借金の帳消しをおこなっていたというんですから、なおさらです。
シュメール語では「自由」とは、文字どおりには「母のもとにもどす」、つまり、本来あるべき姿にもどすことを意味した。〔……〕前24世紀、ラガシュ都市国家の支配者〔……〕は、債務奴隷を「母のもとにもどし」、人びとを債務から解放していた。前2000年紀の諸王は、このような自由観を継承したのである。(p.241)6章
「メソポタミア文明では、人類が経験する、あらゆる問題があらわれている」なんて言われます。さもありなんといったかんじですね。
民衆をきびしくしばっていたわけではなく、徳政令をつうじて、それなりの自由を認めていた ─ 本書を読まないと、わからないとことですね。
遊牧民(ヒクソス)が交易をうながす
つづいて、エジプト文明について。
「ナイルの賜物」と言うとおり、エジプト文明はナイル川のおかげで発展します。
BC.1650年(第15王朝)くらいまでは、エジプト文明は、ナイル下流域で〝閉じたまま〟暮らしいました。
しかし、このころから、北方アジアから、異民族「ヒクソス」が進出してきます。
ゲルマン人がローマ帝国に侵入するように、さいしょは「傭兵」として、扱われていました。けれど、実権をにぎるようになり、とうとうエジプトに王朝をきずいてしまいます。
エジプト文明は〝乗っ取られた〟ことになりますが、この浸出が文明の発展につながります。
ヒクソスがあたり一帯を〝かきまわす〟ことで、エジプトの市場&文化が、北側「オリエント地域」にまで、広まります。
ヒクソスのエジプト支配によって、エジプト史の流れは大きな方向転換をとげた。エジプトは、これまでのナイル下流域のなかだけの相対的孤立をやめ、西アジアをふくむ、より広いオリエント世界の舞台〔……〕にひきずりだされたのである。(p.508)13章
これなんかは、ほかの地域&時代にも、あてはまることですよね。
西洋史&中国史では、異民族の遊牧民は、なにかと「悪者」にされます。けれど、侵入&進出によって、周辺諸国に、文化&技術が広まるのは、まちがいありません。
遊牧民の活動が、結果的に、人類全体の発展につながる ─ その事例を〝ヒクソス進出〟にみることができます。
こんなふうに、歴史のパターン(人間のパターン)を把握できるのも、世界史を学ぶ楽しさですよよね。
おわりに
本書は、「詳しさ」と「分かりやすさ」が、ほどよくマッチしています。
初見の方は、じゃっかんシンドイ箇所もありますが、あらかじめオリエント史の流れを把握しておけば、楽しんで読むことができます。
詳細を知るにも最適です。メソポタミア文明&エジプト文明を知りたい人は、チェックしてみてください。