【書評】村川堅太郎『世界の歴史 2 ─ ギリシアとローマ』(中公・旧版)感想&レビューです。

どうも、りきぞう(@rikizoamaya)です。

大学院では、キャリア論と社会保障を研究していました。

社会人なってからは、予備校講師 → ウェブディレクター → ライターと、いろんな職業にたずさわってきました。

働き方についても、契約社員 → 正社員 → フリーランスと、ひと通り経験してきました。

働くなかで思うのは、自分の市場価値をアップするには「教養」が大切だということ。

「できるなぁ」
「発想がすごいなぁ」

と、思う人は、キホン、教養を身につけています。

なかでも、重要なのは「世界史」です。

ここ数年、ビジネスマンの基礎知識として「世界史」が注目をあつめています。

ネット時代をむかえ、グローバル化が加速しているからです。

外国との交流が増えたことで、日本だけではなく、地球全体の歴史を知る必要が出てきました。

とはいえ、世界史は範囲も広く、どこから手をつければ良いか、わからないですよね。

分量も多くて、なんだかムズかしそう。。

そこでおすすめしたいのが、大手出版社から出ている「シリーズ本」を読むこと。

なかでも、こちらのシリーズは、さいしょに手にとってほしいです。

中央公論社が出した「世界の歴史」シリーズで「旧版」にあたるものです。

中公は、2000年代に、あらたに「世界の歴史」シリーズを刊行しました。

こちらを「新版」とよび、以前のシリーズは「旧版」といわれます。

じつは〝読みやすさ〟でいえば、「旧版」のほうがすぐれています。

「新版」のほうは、どちらかといえば「研究者」「玄人」むけ。

世界史の流れを理解・把握するには適していません。

すでに絶版なのが難点ですが、古本屋 or ネット通販をつかってゲットしてほしいと思います。

そこできょうは、第2巻にあたる

を紹介したいと思います。

「2」では、古代ギリシャ&ローマをあつかいます。

村川堅太郎『世界の歴史 2 ─ ギリシアとローマ』(中公・旧版)の概要

まずは目次から。

こんなかんじです。(※ こちらの都合で、番号をふりました。)

1 よみがえった伝説
2 ポリスの誕生
3 民主主義への道
4 古代民主政治
5 ペロポネソス戦争
6 ポリス社会のおとろえ
7 アレクサンダー大王
8 ヘレニズム時代
9 イタリア統一まで
10 海を越えて
11 内乱の百年
12 ローマ帝政の開幕
13 福音のおとずれ
14 五賢帝の時代
16 混乱の世紀
17 キリスト教の発展と迫害
18 帝国の建て直し
19 古代のたそがれ

1〜6で、ギリシャ地域をあつかいます。

7〜8で、覇権がポリスから「マケドニア」に移った流れをみて、ヘレニズム時代の特徴をあげていきます。

9〜19は、古代ローマ。ローマの起源から「西ローマ帝国」の滅亡までをたどっていきます。

500ページちかくあり、文庫にしては分量は多め。

1冊で、ギリシャ&ローマのくわしい流れをみることができるので、かなりおトクです。

通読するには根気がいります。とはいえ、文体もやわらかく、こムズかしい用語はつかっていません。

なので、スラスラ読むことができます。

『世界の歴史 2 ─ ギリシアとローマ』(中公・旧版)の詳細

以下、気になったトコを、カンタンにのべていきます。

貨幣経済の発展

古代ギリシャといえば、政治・文化・芸術の面で、注目されます。

いっぽう、経済のしくみも発達しており、おカネまで導入していました。

つまり「貨幣経済」でした。

そのため、アテネでは

カネこそ人なり

なんていう格言もうまれます。

市民階層の人たちも、交易・商売に、積極的に手を出していきます。

しかし、いまと同じように、事業に失敗して、借金を背負い、貧しくなる人たちも ─ 。

みずからのカラダ(身体)を担保に、富裕層・貴族層に、カネを借りる者まであらわれます。

じょじょに、アテネ国内の「借金問題」が深刻になっていきます。

ソロンの改革

この時期、「平民 / 貴族」のあいだの問題を解決し、調整する人たちが出てきます。

・僭主
・調停者

とよばれました。

かれらは、両者のあいだに立ち、おたがいの要求にこたえていきます。

なかでも活躍したのが「ソロン」でした。

教科書などでは、かれは「民主政」をおしすすめた人として有名です。

いっぽう、経済問題にたいしても、大胆な政策を打ちました。

それが、

・借財の帳消し(=重荷おろし)
・身体を担保にした、借金の禁止

です。

これにより、市民間の〝極端なお金の貸し借り〟はなくなり、身分差が解消されます。

ビジネスの失敗により、市民が奴隷に落ちることもなく、市民共同体が安定するようになりました。

「重荷おろし」によって一挙に、自由な小農民の階級が市民のなかで確固たる地位を占めたうえに、市民同士の貸借関係から、市民が奴隷となる危険は、永久になくなった。市民と奴隷とは、ここにはっきりと別の身分とされ、市民共同体の枠は〔……〕確立した。(p.059)

とはいえ、「市民 / 奴隷」の区別は、きびしくなります。

つぎの古代ローマでも、市民 / 奴隷の区分はありました。けれど、たとえ出身が奴隷であっても、身分の影響は、[子供 → 孫]にまではおよびません。

いっぽう、古代ギリシャでは、奴隷の子どもは奴隷で、世代間をまたいで身分差がうまれます。

それくらいギリシャでは、市民 / 奴隷の区別は、ゲンカクでした。

このあたりも、本書のくわしい記述をみて、わかることですね。

ペロポネソス戦争で勝利したあとのスパルタ

通史では、ペロポネソス戦争で、アテネに勝利したスパルタが、ギリシャ地域の覇権を握ることになっています。

しかし、スパルタによる「ギリシャ統治」は、短命におわります。

なぜでしょうか。

本書では、

孤立主義と海外派遣の矛盾

をあげています。

もともとスパルタは、〝自国優先〟の特徴がつよく、外交には積極的ではありませんでした。

それが、「盟主(めいしゅ)」として、アテネに不満をもつ、ポリスをまとめる役をにないました。

戦時中は、フクスウのポリスをうまくまとめていました。

けれど、平時にもどると、外交に長けていないため、ポリスとのやり取りがギクシャクするようになります。

結果、ギリシャ地域での覇権が、長くつづきませんでした。

スパルタの財政をにぎるペルシャ帝国

いっぽう、ペロポネソス戦争によって、財政が〝ひっ迫〟していたのも、1つの要因です。

約30年にわたる戦争のおかげで、戦費がかさみ、財政はボロボロでした。

じっさい、(もともとは敵国だった)隣国「ペルシャ帝国」から、お金の援助をうけていたくらいです。

その意味で、〝手を引いていた〟のはペルシャで、ギリシャ情勢は、この帝国にかかっていた、といえるかもです。

専制君主政のローマ

つづいて、ローマ ─ 。

「国家成立〜西ローマ帝国・滅亡」まで、ローマの政体は、

・王政

・共和政

・帝政

・専制君主政

と、移行していきました。

気になったのは、専制君主政の内実です。

「3世紀の危機」( ≒ 軍人皇帝時代)をへて、ローマ国内は、乱れに乱れました。

ひとたび皇帝が、武力・暗殺によって亡くなれば、〝我さきに〟皇帝を名のり、争った時代です。

「四分割統治(テトラルキア)」をしき、混乱をおさめようとしたのが、皇帝「ディオスレティアヌス」でした。

これをキッカケに、ローマは、西 / 東に分かれ、それぞれの地域を統治していきます。

ポイントは、ディオスレティアヌスの改革により、もはや古き良き「五賢帝」の時代 ─ つまり、共和政をベースにした帝政には、後もどりできなくなったこと ─ 。

以前のように、ヨーロッパ一帯を、市民の支持をうけた皇帝が、ひとりで統治できなくなった点です。

ローマは、中東・中国地域の「専制国家」と同じように、民衆の支持に依存しない、「専制君主国家」になりかわりました。

独自性という面では、この時代のローマには魅力を感じない、といえます。

〔……〕ふたたび、統一と秩序をとりもどした帝国も、アウグストゥスや五賢帝の時代の状態に復帰したわけではなかった。皇帝は、もはやローマ第一の市民ではなく、専制君主であり、市民は臣民となった。(p.445)

このころ、わたしたちが「古代ローマ」にイメージする「共和政」「帝政」のイメージは、失われていました。

これまでギリシャ、ローマ社会をつうじて〔……〕存続してきた共和政と市民の原理は、ここにほとんど姿を消してしまったわけである。(p.445)

本書により、くわしい通史をみることで、「後期・ローマ」の内実が、わかります。

おわりに

旧版ながら、この「世界の歴史」シリーズは、かなり読みやすく、おすすめです。

ムズかしい用語を、ほとんどつかわず、一般の人がみても、わかるように書かれています。

なにより、知的好奇心をうながすように、歴史をたどるため、読んでいて飽きません。

ざっくり、かつ、ある程度、くわしく世界史の流れを知りたい人には、もってこいの1冊です。

よければチェックしてみてください。

ではまた〜。