どうも、コント作家のりきぞうです。
取りあげるのは、モリエール『スカパンの悪だくみ』。
後期の作品です。
速書きでつくられたようですが、かれのすべての喜劇のなかで「ベスト3」に入る作品だとおもいます。
創作するうえで、参考にしたい部分もけっこうありました。
以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。
ちなみに、鈴木力衛訳で読みました。
以下、引用のページ番号は、うえの文献によります。
また2000年には、べつの翻訳も出ています。
わりと読みやすいです。
よければチェックしてみてください。
目次
ストーリーの大まかな流れ
人物
オクターヴ
レアンドル
アルガント……オクターヴの父
ジェロント……レアンドルの父
スカパン……レアンドルの付き人
イアサント……オクターヴの恋人
場所
ナポリ
あらすじ
父親が海外にいるあいだ、ナイショでイアサントと婚約するオクターヴ。
不運にも、帰国の知らせが届く。
さらに父は、叔父ジェロントのむすめと結婚させようと考えている。
つよい父にはかなわないオクターヴは、イアサントと結婚できるよう、悪知恵のはたらくスカパンに策を練ってもらう。
おなじくスカパンの主人レアンドルも、父ジェロントにナイショで、まちに滞在するジプシーに囲われる女と恋仲となり、結婚を考えている。
彼女を引きとるには多額の金が必要だが、おカタい父親がサポートするはずもない。そこで事態を打開するために、付き人のスカパンに知恵を出してもらう。
ふたりのリクエストに応じるスカパン。
まず、オクターヴの父アルガントには、むすこの婚約は、力づくで結ばされたもので、もし破断を申しでれば、フィアンセの兄である騎士が復讐にやってくるとおどす。
つぎに、ジェロントには、金をむしり取ろうと考え、むすこのレアンドルが「トルコの軍艦」を見学している最中に、スパイ容疑でつかまり、身代金を要求されているとホラをふく。
それぞれの作戦がうまくいき、オクターヴもレアンドルも、結婚できるかとおもいきや……。

ひとこと
イチバンの笑いのどころは、ふたりの父アルガント & ジェロントをダマす場面。
とくに、むすこがトルコ人に囚われ、身代金を要求されるジェロントが、金を出し渋るシーンは、かなりおもしろい。
ジェロント 人でなしのトルコ人め! (……) スカパン 旦那さま、ご自分で早く考えてくださいまし、あの大事な大事なお坊ちゃまを囚われの身から救い出す方法を。
ジェロント なんだってまた軍艦なんぞに乗り込んだんだ?
スカパン こんなことにはなろうとは思いも寄らなかったからで。
ジェロント おい、スカパン、大急ぎでそのトルコ人のところへ引っ返し、こう言ってやるがよい、警察の追手をかけるぞ、とな。
スカパン 警察を海のまっただなかに! 冗談じゃありませんぜ。
ジェロント なんだってまた軍艦なんぞに乗り込んだんだ?
スカパン 運の悪いときは誰でも仕方がないもので。
ジェロント な、スカパン、ここでひとつ忠実な召使として役目を果たしてもらいたい。
スカパン なんでございますか?
ジェロント トルコ人のところへ引っ返して、こう言うんだ、わしに倅を返してほしい、お望みの金が集まるまで、おまえが身代わりを勤めるから、とな。
スカパン もし、旦那さま、気をつけてものをおっしゃってください。トルコ人だって間抜けじゃなし、若旦那の身代わりに、スッピンカンのわたしを受け取るはずはありません。
ジェロント なんだってまた軍艦なんぞに乗り込んだんだ?
(p.74-75)
くりかえし「なんだってまた軍艦なんぞに乗り込んだんだ?」と述べることで、反復の笑いをもたらす。
キモチの面でも、現実を受けとめられないようすがにじみ出ている。その混乱ぶりがホントにおかしい。
本人にとっては不幸だが、ハタからみると笑える。
こういうパターンの喜劇を書けたら、ほんとに満足だろうなぁ。
笑いのポイント
笑いのポイントをみていきます。
コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。
この作品ではプロットに注目してみます。
コントのプロットはとてもシンプル。
[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。
なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。
パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。
ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「交錯」だとわかります。
「交錯」では、ある人物が、真相を隠したり、ワナをしかける。それにより、カン違いする人物が、スジ違いのセリフを吐いたり、行動に出たりする。
そのようすが笑いを引きおこす。
この作品でも、スカパンが策を練り、アルガント & ジェロントをひっかける。身の危険をおぼえさせてたり、金をまきあげる。
ふたりがはめられていくようすが笑いをひきおこす。
図にするとこんな感じ。
ジェロント = 身代金を要求される
・スカパンの悪だくみ
アルガント ≠ 騎士に報復させる
ジェロント ≠ 身代金を要求される
けっきょく「アルガント ≠ 騎士に報復させる」「ジェロント ≠ 身代金を要求される」となり、ふたりの父親にバレてしまいます。
気づくまでのプロセスは、本文をチェックしてみてください。(わりとあっさりしてますが)。
ちなみに、もうひとつ個人的に笑ってしまったのが、アルガントがスカパンのウソで脅されているときの受けこたえ。
かれは打撃による報復だけでなく、お金まで要求されますが、スカパンに返すセリフがシンにせまっていておもしろい。
コトバのチョイスがすばらしい。
スカパン (……)いくらかの金で話をつけてもよい、つまり、旦那さまがお金さえお出しになればら結婚を解消することに賛成する──ここまで漕ぎついたわけで。
アルガント いくら出せというのかね? (……)
スカパン 5,600ピストル以下じゃ話ならん、と。
アルガント 熱病にかかってくたばるがいい! 馬鹿にするにもほどかある! (……)
スカパン まあ、旦那さま、そんなに出し惜しみをなさるものじゃございません。訴訟にでもなったらそれこそたいへん、裁判沙汰にならないよう、言うだけのものは出してやらないと。
アルガント よろしい! 出すとしよう。
スカパン あちらさんが言うには、「荷物をのせるロバが一頭……」
アルガント ちぇっ! ロバといっしょに悪魔に喰われるがいい! ずうずうしいにもほどかある、出るところへ出て片をつけてやろう!
(p.60-61)
プロットやキャラクターで、コントのおもしろさが決まります。
けれど、セリフの要素も大きいとわかりますね。
まとめ
こんなふうに、プロットやセリフまわしに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。
ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。
ちがう記事ものぞいてみてください。
ではまた。
よきコントライフを〜。



