どうも、りきぞうです。
これまで5000冊ほどビジネス書&教養本を読んできました。
今回、ウォルター・アイザックソン『Invent & Wander』を読んだので紹介します。
ポイントは、つぎのとおり。
・ベソスにスポットを当て、内容は、彼の書いた手紙やエッセイから構成される
・スキル起点/ニーズ起点の考えなど、経営者やビジネスマンにとってヒントになる教えがよく書かれている
個人的な評価は、こんなかんじ。
以下、目次に沿って、みていきます。
目次
『Invent & Wander』の概要
出版社の紹介文は、つぎのとおり。
世界最高のカリスマを成功に導いた、驚くべき思考のすべて。1997年のNASDAQ上場から、コロナ禍が世界を襲った現在まで、ベゾスが毎年送ってきた「株主への手紙」を掲載!さらに「ビジネスの考え方」や日々の「意思決定の方法」から「未来予測」まで、ベゾスの思考法のすべてがわかる。
─ 出版社から
みたとおり、ベゾス自身の言葉が書かれた自伝本になっています。
著者はベストセラー『スティーブ・ジョブズ』のアイザックソンです。
内容は、
・ベゾス自身のエッセイ(第2部)
から構成されています。
アイザックソンが書いているのはイントロの部分のみです。『スティーブ・ジョブズ』のように、物語調で全編を書いているわけではありません。
しかし、株主や一般ユーザーにむけた、ベゾス自身の生を声が聴けるので、これはこれでおもしろいつくりなっています。
『Invent & Wander』のポイント
いちおう伝記のように、Amazon 創業から時系列に沿って、各章が構成されますが、飛ばし読みでも、ぜんぜんオーケーです。
それぞれの章を、べつべつのエッセイとして味わうこともできます。
そのなかでも「ポイントだな」と思ったのが、つぎの2つです。
- スキル起点/ニーズ起点
- 衰退を食いとめる方法
それぞれ、かんたんにみていきます。
スキル起点/ニーズ起点
ベゾスは創業当時から「お客様さま第一主義」を掲げてきました。
顧客の要望をなによりもいちばんに考えてきました。
そのなかで、Amazon がサービスを提供するうえで、ベゾスが従業員に考えさせたのが「スキル起点/ニーズ起点」の考えです。
「スキル起点」とは、プロダクトやサービスをつくるさいに、
をさします。
たとえば「プログラミングができるから、ソフトフェアを開発しよう」といった考え方です。
しかしベゾスは、ビジネスにおいて、このような態度はたいへん危険だと、警告します。
というのも、スキルを起点した商品開発は、いつそのスキルが〝陳腐化〟するか分からないからです。
へたをすると、レベルの低いサービスを提供しつづけるリスクがあります。
じっさいソフトフェアの世界では、スキルの浮き沈みは激しく、昨日「すばらしい」と思われていた技術も、明日になれば「役に立たない」なんてことはよくあります。
また、最先端のスキルを身につけていたにしても、そのぶん競争が激しく、いつ追い抜かれるか、つねに不安と隣り合わせ。
そこでベゾスは(スキル起点ではなく)ニーズ起点の態度をとるべき、と主張します。
「ニーズ起点」とは文字どおり、
です。
顧客の要求に応じて、サービス提供をおこなえば、商品の質が下がることもなく、製品が売れない、ということも起こりません。
なにより、みずからのスキルに〝おごる〟こともなくなり、会社全体の技術も高まっていきます。
それにより、ライバルのスキルやテクノロジーに戦々恐々とすることもなくなります。
もちろんニーズ起点は、お客さんが Amazon にたいしてムチャは要望をすることも多く、それにいちいち応えるのは、たいへんキツいことです。
いままでとは違ったやり方をしなければならないので、それなりにストレスもかかります。
しかし(なかば強制的に)慣れないことをおこなうのは、社員のスキル向上につながり、ひいては Amazon の成長につながります。
たとえば、Kindle 端末の製作は Amazon にとって、たいへん苦痛なものでした。というのも、ソフトフェアは得意でも、ハードの製造にかんしては、みんな〝ズブの素人〟だったからです。
それでも「本屋に行かずに、すぐその場で本が読みたい」というお客さんの要望があったため、ベゾスはハードウェア製造のキャリアをもつ人たちを採用し、電子端末の製作に取りくみます。
それにより生まれたのが Kindle でした。
こんなふうに、スキル起点ではなく、ニーズ起点で商品開発をおこなえば、しぜんと会社は成長する、と指摘します。
衰退を食いとめる方法
もうひとつのポイントは、衰退を食いとめる方法にかんして、です。
Amazon はこちらも創業当時から「ワンデイ(毎日が始まりように)」の理念を掲げ、どんなに長く会社が存続しても、開業初日のような気持ちで仕事にとりくむ、としてきました。
じじつ、1年ごとに発表される「株主への手紙」では、その最後に
の言葉が添えられています。
ベゾスは、成長よりもむしろ会社の衰退を恐れ、長い目でみて衰えないためにも、さまざまな工夫を施しています。
そのさい衰退を免れる方法として、つぎの4つのやり方を示します。
・既存プロセスを疑う
・外部のトレンドを取り込む
・素早く意思決定
これをみたときわたしは、いまの日本企業がどうしてダメになり、衰退していったのか、すこし分かったような気がしました。
日本が衰退した理由は、いろんなところで言われていますが、この4つのやり方をいっさいとらず、正反対の道に進んだから、と思いました。
とくに、2、3、4つ目が決定的にダメで、
従来のやり方に固執し、外部の手法をとりいれず、意思決定も遅い。
「これじゃあ衰えるのも仕方ない」 ─ そんなあきらめに似た気持ちが、ふつふつとわきあがってきました。
現状のあやまりに気づかせてくれるのも、本書の魅力かな、と思います。
『Invent & Wander』の感想
ここにあげたポイント以外にも、本書では Amazon の成長にまつわる話が、たくさん載っています。
どれも刺激に満ち、ベゾスがどんな気持ちで Amazon を引っ張ってきたのか、ひしひしと伝わってきます。
ビジネスのケーススタディとしてはもちろんのこと、「ジェフ・ベゾス」という、おそらく後世でも名の知れる偉人の伝記として読んでも、たいへんおもしろいと思います。
語り口もかんたんなので、空いた時間にパラパラ読むこともできたりします。
起業家や、商品開発にとりくんでいる、いっぱんのビジネスマンの人にも、ぜひ手にとってほしい1冊です。
よければチェックしてみてください。
では、また。