なぜ親は「つまらない職業」に子どもを就かせたがるのか?

どうも、りきぞうです。

きょうは、こちらのニュースをうけて、「親が期待する子どもの仕事」について、考えてみました。

※ 本文の引用は、最下部の文献によります。




先日、とある企業が「子どもに将来なってほしい職業」についてアンケートをおこなった。

サンプルも少なく、小規模なものだが、ランキングは、以下のようになっている。

これをみると、たいへん驚く。

「あまりに保守的すぎる。。」

わたしに子どもはいないが、年齢的に、アンケートを受けた人たちと、だいたい同じくらいのトシだろう。

だからこそ分かるが、わたしをふくめ、回答した親たちも、ランキングに上がる職業について、さほど良いイメージをもっていないはず。

少なくとも、楽しく、ゆかいな職種ではない。

じじつ、これまで生きてきて、ランクインした職業について、さんざん悪い面をみせられ、聞かされてきた。

なのに、親御さんたちは、退屈でワクワクしない職業についてほしいと願う。

なぜだろうか。

調査にたいして記事では、親は子どもの安定を望んでいる、と分析している。

それも一理ある。

けれどわたしは、「安定してほしいから」というよりも、「未来の職業が想像できないから」、いまある職業を選んだように思う。

つまり、職業にかんする思考の枠組み(パラダイム)から抜け出せないがゆえに、既存の職業を、子どもに望んでいるように感じる。

ここから、わたしたち人間が、みずからの習慣・世の中の慣習から飛びだすのが、どれほどムズかしいか、よくわかる。

まったくもって、この習慣というのは、乱暴にして、油断のならぬ教師なのだ。それはわれわれのなかに、少しずつこっそりと、権威の足場を築いていく。(no.2592)

─ モンテーニュ『エセー1』第1巻20章「想像力について」

じっさいには、アタマをからっぽにして、すこしリサーチをすれば、さまざまな職業が、ニョキニョキ生えていると、わかる。

たとえば、こちらの本から。

・海の洗濯ゲーマー
・ドローン植林家
・バイオ3Dプリンター臓器デザイナー
・個人の記憶キュレーター
・発電DJ
・ARストーリービルダー(などなど、無数……)

いったいどんな業務内容なのか、わたしにはさっぱりわからないが、このような仕事が誕生するらしい。

大人が習慣にしばられているあいだに、事態はちゃくちゃくと動いている

とはいえ、この事実をうけて、「習慣にとらわれるな」と言いたいわけではない。

習慣をまもるのは、大人たちの役割で、なすがままにさせれば、とんでもないことになる。

これまでの経緯を気にかけるのは、悪いことではない。

もちろん、「習慣をまもる」といったときに、習慣にしがみつく者たちは、はなしから外れる。

こういうヤカラは、人間&社会のエンジンであり、潤滑油である習慣に、害をおよぼしている。

この手のたぐいは、早々に任を解き、退いてほしい。

さいきんの事例では、〝スティックの先端を、朱色に染めたい方々〟が、これにあたる。

「習慣をまもる」とは、人びとの効用を最大化させるため、ちくいち点検し、改善することをさす。

習慣は、メンテナンスとアップデートをくりかえさないと、ボロボロになってしまう。




このように大人は、習慣をまもる役割があるため、ショージキなところ、新たな職業にたいする感度はひくい。

慣習に目をうばわれるため、新しい職種に、かまっているヒマがない。

くわえて、テクノロジーの進歩から、市場の動きが速いため、とらえることも、予測することもできない。

わたし自身、したり顔で「未来の経済は、こうなります」と宣言する識者をみると、一歩ひいてみてしまう。

これがいま流行りの「忠告屋さん」というわけか(p.164)

─ モリエール『恋は医者』1幕 1

わたし同様、あなたがアタマにつんでいる知性は、将来の動きをつかめるほど、優れてはいない。




いいトシをした大人ができるのは、いい習慣/わるい習慣をふりわけること ─ 。

そして、年少世代が新しい職業をスムーズに選んでもらえるよう、社会の慣習を磨いておくことだろう。

いつだって、新しい仕事、新しい職業を生み出すのは、子どもなのだ。

習慣と慣習にひたりきった大人が、未来の職業を予測したり、まして、未来の仕事を作り出すなんて、できっこない。

慣習を破壊する〝かわいいモンスター〟に、新しい職業の発掘は、ゆだねられている。

親たちができるのは、かれら/かのじょたちが、新しい職業の選択するさいに、二の足をふませないくらいだろう。

ジャマをせず、子どもたちが通りやすいように、道を補修・修繕しておけば、御の字だ。

それでも、わたしたち大人の臆病と怠け癖から、〝慣習の道〟はデコボコし、カンタンには渡り歩けないだろうから。




では、お元気で。