どうも、コント作家のりきぞうです。
きょうも、コント作品をレビューしていきます。
取りあげるのは、チェーホフ『心ならずも悲劇の人に』。
中期の作品です。
以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。
ちなみに、松下訳で読みました。
以下、引用のページ番号は、うえの文献によります。
目次
ストーリーの大まかな流れ
人物
トルカチョーフ……妻子もち
ムラーシキン……トルカチョーフの友人
場所
ムラーシキンの書斎(ペテルブルク)
あらすじ
妻子もちで、別荘地に住むトルカチョーフ。
役所と家庭でコキつかわれ、ヘトヘトの状態。
友人ムラーシキンの家にやってきて、自殺するためにピストルを借りにくる。
なだめる友人。
くわしい事情をきく。
仕事では同僚にめぐまれず、毎日ドレイのようにはたらく。
別荘地にある家では、まわりの住人から、ランプやソーセージなど買い物を頼まれる。
さらに、妻から演劇や舞台に連れまわされ、寝る間もない。
夜中は蚊にもさされ、まともに睡眠もとれない。
いまでは蚊に吸われた血をみると、だれかをナイフで刺したい衝動にかられる。
親身になって、友人のなやみに耳をかたむける友人のムラーシキン。
しかし相手の別荘地が、目当ての女性オリガのそばにあり、親しいカンケーとわかる。
それまでのはなしはどこかへ飛び、友人の妻と同じように、伝言をたのむ。
さらには、プレゼントを渡してほしいと依頼して……
ひとこと
ひと幕、ワンシーンのみじかい劇。
ほぼコントです。
トルカチョーフのひとりゼリフがメインで、かれのコッケイな悩みが笑いをさそいます。
自分をコキつかう、まわりの住人にたいして、こんなグチをこぼす。
トルカチョーフ (……)そういうわけで、きみ、役所がひけてから汽車に乗るまで、犬のように舌をたらして町じゅうを駆けずりまわるんだ。駆けて、駆けて、人生を呪うんだ。
(p.214)
妻にたいしては、こんなかんじでののしる。
トルカチョーフ (……)「夫」という言葉は、別荘語に翻訳すると、口のきけない動物ってわけで、どんなに乗りまわそうと、荷物を運ばせようと、動物愛護協会なんかどこ吹く風だ。
(p.215)
かれの捨てゼリフをきくだけでも、おもしろい。
いっぽう、親身になって友人の悩みをきいていたムラーシキン ─ 。
かれが、相手が狙っている女性と知り合いとわかる。
悩みのタネである「頼みごと」をすることで、もうひとつヒネリをくわえる。
シンプルながらも、意外なオチで、クスッと笑わせてくれる。
落ちついた笑いを好む、チェーホフらしい作品です。
笑いのポイント
笑いのポイントをみていきます。
コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。
この作品ではプロットに注目してみます。
コントのプロットはとてもシンプル。
[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。
パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。

ストーリーを単純化してみると、この作品は「反復」の構図をとっているとわかる。
「反復」では、状況や環境が変わっても、それまでと同じアクション、セリフ、出来事をくりかえすようすを描きます。
それによって笑いを引き起こします。
この作品でも、トルカチョーフが頼みごとされつづけ、自殺を考えるほどヘトヘトなる。
しかし、そんな悩みを打ちあけた相手からも、頼みごとをされる。
この反復が笑いをもたらす。
図にするとこんな感じ。
・まわりの住人からコキつかわれる
・妻から外出に連れまわさせる
・相談相手から頼みごとをさせる
トルカチョーフ = 頼まれごとでヘトヘト
トルカチョーフの気苦労が、笑いの軸になります。
まとめ
こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。
ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。
ちがう記事ものぞいてみてください。
ではまた。
よきコントライフを〜。