別役実『コント教室』感想&レビューです。

どうも、コント作家のりきぞうです。

きょうは、別役実『コント教室』をとりあげます。

別役さんは、日本での不条理演劇をひろめた人です。

この本は、世田谷パブリック・シアターでおこなった「劇作セミナー」(2001年)がもとになっています。

はじめにコントのキホンを示し、つぎにセミナー参加者がつくる作品を添削していきます。実践的です。

書く人はもちろん、コントや喜劇のしくみを知りたい人にもオススメです。

笑いの種類と、人を笑わせる要素

さいしょに、笑いの種類&段階と、笑いをひきおこす要素についてみていきます。

笑いの段階

笑いには段階があります。つぎの順で、熱量があがっていきます。

① 忍び笑い

② 普通の笑い

③ 爆笑

④ うねり

① 忍び笑い

観てる人が、ひとりひとり勝手に笑うレベルです。あちこちでクスクス笑い声がきこえる状態。

遠慮して笑ってるかんじですね。

② 普通の笑い

クスクス笑いよりも声量がアップします。会場にも一体感がうまれます。

このレベルでは、つくり手がセリフやプロットによって、意図的に笑わせていきます。

③ 爆笑

「普通の笑い」をくりかえすと、会場に笑いがひろがっていきます。爆笑はこの段階です。

つくり手は、このレベルをめざしてコントや喜劇をつくります。

生で観てる人のあいだにも独特の雰囲気がうまれます。

そのため、テレビやネットなど、メディアをつうじて観るばあいとは、異なる体験をすることになります。

④ うねり

「爆笑」がおしよせ、その場が、ひとりの人格をもつような状態になります。

つくり手にとって理想の段階ですが、めったに経験できるものではありません。

人を笑わせる要素

わたしたちは何をみて笑うんでしょうか。

主な要素は5つです。

・フレーズ(言葉遊び)
・アクション(即物性)
・キャラクター(形象)
・プロット(関係性)
・シュール(不条理)

※ 本文の言いまわしはカタいので、自分なりに言いかえています。

( )がもともとの表現です。

フレーズ

これはわかりやすいですね。「ダジャレ」「下品な言葉」などが典型です。

また単語そのものに面白さはなくても、たとえば、同じセリフをくり返す人を見て、笑ってしまう経験があると思います。

コントでも、ボケたおじいちゃんが、何度も同じ口ぐせをくり返すシーンが出てきますね。

そのような振る舞いもこのフレーズに含まれます。

コント全体を通してみたとき、一回一回のパワーはありません。

しかしジャブのようにあとから効いてくるのが特徴です。

アクション

これもわかりやすいです。すべる、ころぶ、なぐる。カラダの動きによる笑いです。

漫才のツッコミで叩いたりするのも、ボケを正すほかに、叩かれる動きで笑わせるという役割もあります。

③ キャラクター

たとえば、志村けんの「ヘンなおじさん」、チャップリンの「ぎこちない紳士」など。

とぼけたセリフ、こっけいな動きで笑わせるんですが、それ以上に、キャラのもつ雰囲気で笑いを引き起すケースが多い。

なんてことない一言で笑ってしまうのも、かもしだすオーラがおもしろいため。

なので誰でも生み出せるわけではありません。

演者の資質、もっといえば、天性によるトコが大きい。

「ヘンなおじさん」も志村けんがやるから面白いわけで、ほかの人がやればフツー。

もしくは見てられないほど、スベるケースさえあります。

プロット

作り手、とくにシナリオを書く人が、イチバン力を注ぐ要素です。

じつのところ「フレーズ」「アクション」「キャラクター」も、演じる人で作品の良し悪しが決まります。しかしプロットは、作家の力量で良し悪しが決まります。

そのためこの本でもこのプロットの作り方をメインに書いてるくらいです。

ある程度、トレーニングをつめば、それなりの作品が生まれます。才能よりも、作った数がものをいいます。

シュール

なじみはうすいが、これも笑いの要素。

なかなか説明しにくく、観る人も声を出して笑うわけでもない。けど、なぜか「おかしい」。

本文ではこんな例をあげている。

フランスジョークなんですけれども、街角で男の人がナイフで胸を刺されて倒れているんですね。血がどろどろ流れて。で、通行人が来て、顔をのぞき込んで、「痛いかい?」って聞く。と、刺されたほうが、「痛いよ。笑いと余計痛い」って返事をするというのがあるんです。これもわーっとは笑えないですけれども、それだけのケガをしている人間がどうして笑うんだよと、こういうおかしさみたいなものがある(p.24)

シュールの笑いもメソッドがあるだろうけど、本書ではあまり扱っていない。扱っているのは、④プロット。

あまり一般的ではなく、作り手もまずはキホンをおさえる必要があるので、この要素についてはそこまで首を突っ込まなくていいでしょう。

もし詳しく知りたい方はこちらの本がおすすめ。

笑いには「型」が存在する

以上5つの要素でコントは作られます。

こういうふうに要素を分けたりすると「ルール化するな!」といった批判もありそうです。

とはいえ、「基本形」は存在します。

コント or 喜劇をつくるうえでは、この点を念頭においておくべきです。

この前もいいましたが、人間の感情というのは、基本的に古くから変わってないわけですから、笑わせるための基本形というのが必ずある(……)ただし、才能のある喜劇作家というのは基本型をあまり使いませんよ、実際には。基本形を使わないで、その基本形からどうはずすかということで、そのはずし方によって笑いの才能というのが今ためされているという事実はあるんです。けれども、まず基本形を覚えて、今、自分はここからこういうふうにはじしたんだとということを意識しておくと、豊かになるんです。はずし方もうまくなりますし、手法が多彩になってくるというのもありますから、最初面倒くさくても、まずは基本形を覚えてください。(p.65)

というわけで、「ひねった笑い」「はずした笑い」を作るのは「型」を習得したあとがいいみたいです。

この点はファッションのコーディネートなんかに似てますよね。

自分なりのセンスを出すのは、色彩の基礎、丈のバランスをしっかり学んでから。

そのほうがよりオシャレで、センスが身につきます。

ここまでのまとめ

以上、「笑いの種類」「人を笑わせる要素」についてみてきました。

つぎに、「プロットの組み立て方」「セリフまわし」を取りあげていきます。

コントの基本構成

コントの構成はシンプルです。キホンは「設定 → 展開 → オチ」のながれをとります。

つくるときには、この3つのステップをふまえて、コントを組み立てるいきます。

はじめに、場面 or 状況を設定します。

つぎに、登場人物のアクションやキモチ、or 出来事を展開させます。

さいごに、話をしめ、オチをもってきます。

初心者ほど、オチばかり気にするが、だいじなのは「展開」のトコ。

設定した状況をどう変化させるのか。変化させたあと、ストーリーをどうやってはこぶか。

この点がコントのよしあしをきめる。

「死体を目撃する二人の男」と設定したコントでは、つぎのように解説します。

舞台に死体が一つ転がっていました。上手から男1が出てきました。で、一言。それから、下手から男2が出てきました。で、一言。これでもう場面設定、状況設定ができるわけ、一言いってしまえば。

出てきて、死んでいるかどうか確かめるとか、まずそれが最初の反応だと思うのですが、それだと第一次感覚だなと気がつくと、出てきて「おい、起きろ」といってけ飛ばすとか、そのほうがいいかなというふうに考えていく。

それから、展開。状況がどう変化するか。もちろん一つ変化して、さらに変化が発展してというふうにつなげていくわけですが、でも、最初の変化をどう動かすかが一番重要になってくる。

男が出てきて、死体を確かめている。それから、次にどうするかで、ほぼコントが成功するかしないかが決まってしまう。(p.44)

極論をいえば、オチなんかどうてもいい。

はじめに、観る人が関心をいだくキャラクターやシチュエーションを設定し、さいごまで注意をひきつけるような展開を考える。

ここにエネルギーをそそぐ。

ストーリー思考ではなく、プロット思考で

具体的に、どのように展開させるのか。

まず注意したいのは、ストーリープロットをごちゃまぜに考えないこと。

どちらも「おはなしの筋みち」を意味します。

ストーリーは、細かい事実を積みかさね、話を進めていくスタイル。

A という主人公が、B をして、C になった。

こんな流れをとります。このスタイルは、尺の長い小説・映画・ドラマには最適です。

いっぽうプロットは、カンタンな2つの事実を「原因 → 結果」でつなげ、話をすすめるスタイル。

登場人物のバックボーンを、1つの場面につめこみ、短時間ではなしをすすめる。なので、尺の短いコントやヴォードヴィルに適している。

ストーリー思考で書いていると、叙事的というんですかね、主人公がいて、こういうことが起って、こういうふうになったよというふうに、叙事的に展開してしまいがちですね。これだと、どうしても演劇にすると、説明的になってしまう。

〔……〕プロットというのはどういうことかというと、因果律といいます。どういう原因がどういう結果になったかという、原因と結果の因果関係が組み立てられるものがプロットという。

〔……〕少なくとも演劇というのは、テレビや映画と違って、話のはじめから最後までの場面を、全部時間順に並べるということは不可能なんです。ですから、いくつかの状況のかたまりに区切って、その区切られた場面の中で、それぞれの登場人物が持ってきているそれぞれのストーリーを全部そこで凝縮しなくちゃいけない(p.83)

たとえば、アラバールの『戦場のピクニック』という作品。

このコントでは、戦場/ピクニックという正反対の状況をつなげることで、笑いをつくりだしている。

じっさいに読んでみるとわかりますが、爆弾が降りそそぐなか、老夫婦がパラソルのしたでランチを食べるようすは、なんともコッケイです。

戦争をテーマした作品なのに、笑ってしまう。

もしこれが小説や映画なら、「どうして戦争が起きたのか」「なぜ主人公は戦地に向かうのか」といったように、プロセスをじっくりえがく。

しかしコントでは、結びつかない状況や出来事を、あえてつなぎ合わせ、はなしをすすめていく。

まとめ

ほかにも、自分なりの文体を見つける、コントでよくつかわれる場面をパターン化するなど、創作のヒントがいろいろ記されています。

チェーホフやイヨネスコなど、創作するうえで参考になる作品もリストアップしてあるので、ガイドブックとしても役に立つ。

創作のウデをあげたい、より深くコントを観たい人には、オススメの一冊。ぜひ手にとってみてください。

それではこのへんで。

よきコントライフを〜。