どうも、りきぞうです。
これまで5000冊ほどビジネス書&教養本を読んできました。
今回『mRNA ワクチンの衝撃』を読んだので紹介します。
ポイントは、つぎのとおり。
・「プロジェクト・ライトスピード(光速)」のもと、同時並行的に開発をすすめていったのが、わずか11ヶ月でワクチン供給を達成するキモとなった
・今回の新型コロナワクチン開発をきっかけに、がん治療の分野でも「mRNA」の技術は応用できると期待される
個人的な評価は、こんなかんじ。
以下、目次に沿って、みていきます。
目次
『mRNA ワクチンの衝撃』の概要

出版社の紹介文は、つぎのとおり。
WHOのパンデミック宣言に先立つこと6週間、まだ中国以外の地域で死者が報告されていない2020年1月27日。 のちに医薬品製造の歴史におけるあらゆる記録を塗り替えることになる、ドイツの小さなバイオベンチャー企業による大逆転のプロジェクトが始まった ─ 。
─ 出品社から
ファイザー社と組み、11カ月という常識外のスピードで世界初の新型コロナワクチンの開発に成功したビオンテック社。「医療界のゲームチェンジャー」として一躍脚光を浴びているmRNA医薬の技術で世界の最先端を走るバイオ企業の創業者/研究者夫妻に密着取材した迫真のドキュメント。
一言でいえば、新型コロナワクチンの開発をめぐるドキュメンタリー本です。
いっぱんワクチンといえば「ファイザー」が開発したと思われていますが、かれらは製造と供給を担っただけです。
じっさいに、研究&開発をおこなったのは、ドイツのバイオ企業「ビオンテック社」です。
創業者はウール&エズレム夫妻で、ふたりが中心メンバーとなって、ワクチン開発のプロジェクトがすすめられました。
コロナが発生してから、わずか11ヶ月で開発&製造し、世界中の人びとに届ける ─ その圧倒的なスピードをドキュメンタリー形式で記述したのが、本書になります。
『mRNA ワクチンの衝撃』のポイント

個人的に気になったのが、
です。
夫のウールは、さいしょのうち、中国の地方都市でウィルスが発生したニュースを聞いても、そこまで気に留めていませんでした。
しかし、その未知のウィルスが、コウモリから人への感染が確認され、数百人ほどの被害者を出しているレポートをみて、ちょっとした危機感を感じます。
さらに、感染が起きた「武漢」は、小規模な地方都市にすぎないと思っていましたが『グーグルストリートビュー』で、町のようすを確認し、人口規模をみたとき、危機意識は一気に高まりました。
武漢は、ちっちゃな町ではなく、人口1千万人をようするマンモス都市です。そんな人口が密集する場所で未知のウィルス感染が起きている ─ 。
その後も状況を確認したウールは、自分たちの会社が研究している「mRNA」技術を利用して、ワクチン開発ができないかを検討します。
この決意にいたるまでのスピードも注目されますが、開発にいたる速度も驚異的でした。
過去の人類は、未知のウィルスをまえにして、ワクチンの開発がつねに遅れるのが実情でした。
そんな歴史をふまえてウールは、ワクチン開発において「迅速さ」が、被害をおさえるカギとなると自覚していました。
そこで彼はプロジェクト名を「ライトスピード(光速)」として、効率的かつスピーディーに、ワクチン供給にたどりつくことを至上命題とします。
そのさいとられたのが、
という手法です。
それまでのワクチン開発では、ひとつの候補を選び出し、臨床試験を順々にだどっていくのが、ふつうでした。
しかしこれでは、開発までに少なくとも5年以上はかかり(予想される)コロナウィルスの被害をおさえることはできません。
そのためウールは、供給までのテストを省くために、あらかじめコロナ抑制に効きそうなワクチンを同時並行的に開発していきます。
そのうえで、もっとも効きそうな候補を選び出し、最終的に製造する流れをとります。
ウールは、つぎのような言葉を述べています。
「すべての卵を一つのカゴに入れて、ワクチン候補を一つずつ試験するわけにはいかない」
─ 2章 p.65
マルチトライアルによるやり方こそが、ワクチンをすばやく開発した秘訣であり、わずか11ヶ月で世界に供給できたキモでした。
パンデミックが迫るいま、ビオンテックはこのプロセスを加速させなければならない。そこで、いくつもの設計を前臨床試験という名の迷宮に送りこみ、最初の迷路を抜け出したものを採用して先に進もうというわけだ。
─ 2章 p.65
個人的に、この同時並行的にものごとをすすめていく態度は、ビジネスや仕事に活かせるものと感じ、たいへん参考になりました。
とくにネットビジネスでは(初期コストが低いぶん)さまざまなアイデアを同時並行的に実践することができます。
で、うまくいかないものは早々に切りすて、成果のあがるプロジェクトに力を注いでいく。
ウール夫妻がとったマルチトライアルによる手法は、いまのインターネット経済にピッタリのやり方だと、つよく感じました。
『mRNA ワクチンの衝撃』の感想

本書は、ご自身の仕事に活かせるほか、
・ワクチン開発のプロセス
など、ニュースをみているだけでは分からないことが、たくさん記されています。
そのなかみを知るだけでも、この本を読む価値があります。
また mRNA は、今回のようなワクチン以外にも、がん治療や老化防止に応用できる技術でもあります。
今後の医療でも mRNA はひんぱんに用いられるため、人びとにとって役立つテクノロジーを知るうえでも、本書は大いに参考になります。
ドキュメンタリー本としても、たいへん面白いので、よければチェックしてみてください。
おわりに
『mRNA ワクチンの衝撃』をみてきました。
まとめると、こんなかんじです。
・「プロジェクト・ライトスピード(光速)」のもと、同時並行的に開発をすすめていったのが、わずか11ヶ月でワクチン供給を達成するキモとなった
・今回の新型コロナワクチン開発をきっかけに、がん治療の分野でも「mRNA」の技術は応用できると期待される
この記事が、役立つビジネス書&教養本を探している人の参考になれば、うれしいです。
では、また。


