どうも、りきぞうです。
これまで5000冊ほどビジネス書&教養本を読んできました。
今回、渡辺努『物価とは何か』を読んだので紹介します。
ポイントは、つぎのとおり。
・物価の定義、物価の変動プロセス、物価のコントロールなど、価格をめぐる問題を分かりやすく説明する
・日本の物価が上がらないのは、「価格据え置き」の慣行が、日本市場全般にはたらいているため、とみている
個人的な評価は、こんなかんじ。
以下、目次に沿って、みていきます。
目次
『物価とは何か』の概要

出版社の紹介文は、つぎのとおり。
あのバブル絶頂時、そしてその崩壊、いずれのときも意外なほどに物価は動かなかった。それはなぜか?
─ 出版社から
お菓子がどんどん小さくなっている……なぜ企業は値上げを避けるのか? インフレもデフレも気分次第⁉ 物価は「作る」ものだった?
経済というものの核心に迫るための最重要キーである、物価という概念。国内第一人者が初歩の初歩から徹底的にわかりやすく説き起こし、社会にくらす私たち全員にとって、本当に知るべき経済学のエッセンスを教える、画期的入門書の登場!
マクロ経済の専門家が「物価」について解説する内容です。
経済学の専門家といっても、ムズかしい用語や数式を用いることはなく、ふだんわたしたちが使う言葉で、ていねいに語っていきます。
貨幣にかんする理論や、経済政策の経緯や歴史を、きょくりょく専門用語は使わずに解説しています。
著者本人が、大学以外にも、日銀や一般企業で勤めていたこともあり、ふつうのマーケットで暮らす人たちにも分かるよう、物価と貨幣の関係について説明しているのが好印象です。
『物価とは何か』のポイント

個人的におもしろかったのが、
という問題です。
著者は、その背景に、
と、みます。
ほんらい価格(物価)は、需要と供給に合わせて変動します。
需要が多ければ価格は上がり、供給が多ければ価格は下がります。
しかし日本は、この20年ほど物価がほとんど変わっていません。
データでみれば、じょじょにモノの値段が下がり、〝ゆるやかなデフレ〟が長期にわたり続いている状態です。
では、どうして物価は上がらないのか。
それは、
です。
具体的には、わたしたちが消費者(需要サイド)が、価格の引き上げを許さないからです。
その証拠に、本書では「値上げをした店にたいする消費者の反応」にかんするアンケート結果を示します。
それによると「1割の値上げ」でも、「同じように買う」よりも「もう買わない」と答える人のほうが、15%多かったそうです。
このように、いまの日本市場では「値段の引き上げ」を許さない流れが生まれています。
そのために企業や会社も、なかなか価格の引き上げにふみきれずにいます。
理由はかんたんで、たとえ1社がモノの値段を上げたとしても、(価格据え置きの慣行ゆえに)ほかの会社は価格を引き上げることなく、消費者はそちらのほうに流れていってしまうからです。
結果、値上げをした会社の売り上げは落ち、利益がなくなることで、経営危機におちいります。
このようなプロセスを恐れて、企業(供給側)は価格を引き上げられず、消費者(需要側)は低価格に慣れたまま、日本市場では価格が上がらない状態が続いていきます。
〔中略〕店舗は客を失うのが怖いので、価格に転嫁することを躊躇します。どの店舗も同じような状況にあるので、おたがいが牽制し合い、ある店舗での「価格を更新しない」が、ほかの店舗の「価格を更新しない」を誘発するという連鎖が発生します。客が媒介するかたちで、ある店舗の価格と、別な店舗の価格に相互作用が発生するのです。
─ 4章 p.270
著者はあくまで、ひとつの仮説としていますが、データや理論をふまえると「るなかなか説得力のある話だな」と感じました。
なお、著者は、日本の物価が上がらないメカニズムを述べたあと、いくつか処方せんを提示しています。
くわしくは本書を読んでほしいんですが、どれも良いアイデアだとは思うものの、それ以上に「いまの日本市場の〝デフレ圧力〟は深刻なんだな」と、ひしひし思わされました。
個人的には、よく言われているように、労働市場を流動化させたうえで、新たなイノベーションを誘発し、供給サイドが価格向上にふみきるしかないような気がしました。
『物価とは何か』の感想
ほかにも本書では、
・物価の変動プロセス
・物価のコントロール
など、モノの価格にかんする話が、分かりやすい口調で述べられています。
ケインズやフリードマンといった偉人による経済理論から、「ナラティブ経済学」などの最新研究から、物価を扱っています。
経済学の入門書としても、おもしろい1冊です。
おわりに
渡辺努『物価とは何か』 をみてきました。
まとめると、こんなかんじです。
・物価の定義、物価の変動プロセス、物価のコントロールなど、価格をめぐる問題を分かりやすく説明する
・日本の物価が上がらないのは、「価格据え置き」の慣行が、日本市場全般にはたらいているため、とみている
この記事が、役立つビジネス書&教養本を探している人の参考になれば、うれしいです。
では、また。