どうも、りきぞう(@rikizoamaya)です。
大学院では、キャリア論と社会保障を研究していました。
社会人なってからは、予備校講師 → ウェブディレクター → ライターと、いろんな職業にたずさわってきました。
働き方についても、契約社員 → 正社員 → フリーランスと、ひと通り経験してきました。
日本の雇用環境が変化していますね。
ここ10年で、世界経済のしくみも大きく変わってきました。
グローバル化が進み、だれもがじかに「市場」にさられるようになりました。
「マーケット」に乗りだし、モノ&サービスを提供し、お金を得ていかなくてはなりません。
ひとりひとりが「市場のしくみ」を知る必要が出てきました。
そんなとき、つぎの本が目につきました。
著者は、18世紀生まれの経済学者。「経済学の父」とよばれる人物です。
本書は、社会科学では「古典」に位置します。
はじめて「市場のしくみ」を説明した本で、経済を習う人なら一度は目にしているはず。
「マーケット」とは何か──。
ソレを知るには、最適な1冊となっています。
目次
A.スミス『国富論』の概要
目次は、こんなかんじ。
1 労働の生産性の向上をもたらす要因と、各階層への生産物の分配にみられる自然の秩序
1-1 分業
1-1 分業の起源
1-3 市場の大きさによる分業への制約
1-4 通貨の起源と利用
1-5 商品の真の価格と名目価格、労働価格と金銭価格
2 資本の性格、蓄積、利用
はじめに
2-1 資財の分類
2-2 社会の総資本のうち特殊部門としての通貨、すなわち国民資本の維持費
2-3 資本の蓄積と、生産的労働と非生産的労働
2-4 利付きで貸し出される資本
2-5 資本のさまざまな用途
3 国による豊かさへの道筋の違い
3-1 豊かさへの自然な道筋
3-2 ローマ帝国の崩壊後に生まれたヨーロッパの旧秩序と農業への障害
3-3 ローマ帝国崩壊後の都市の発生と発展
3-4 農村の発展に対する都市の商業の寄与
1章で、大まかな市場のしくみについて。マーケットの本質は「分業」にあると指摘します。
2章で、財と資本がたまる(蓄積される)しくみについて。
3章で、イギリスをスポットにあて、国際貿易のあり方について述べていきます。
A.スミス『国富論』のポイント
以下、キーワードをあげつつ、『国富論』のポイントをみていきます。
市場が成り立つ条件
市場が成り立つには、3つの条件が必要です。
- ① 自己利益の追求
- ② 他者への共感
- ③ 公平な観察者
ひとつひとつ、説明します。
① 自己利益の追求
フツー、だれもが自分勝手に行動をとれば、秩序が成り立たない、社会が壊れると考えます。
しかしマーケットでは、自己利益を追求しても、最適なかたちで成立します。
その理由は、市場には「価格メカニズム」が働いているからです。
いわゆる「需要と供給のバランス」ってやつですね。
「売れる」からといって、じゃんじゃんモノを供給すれば、価格が下がっていきます。
いっぽう、「高くてゲットできない」と思っても、みんながほしいと思えば、需要が増えて、価格が下がっていきます。
(反対に、価格がアップするケースもありますが)こんなふうに、需要と供給のバランスによって価格が成り立ちます。
ひとりひとりが、自己利益を追求したとしても、自ずと市場が成り立つわけです。
② 他者への共感
とはいえ、欲をむき出して、利益を追求すれば、市場が壊れるケースがあります。
その典型は「独占」です。
ひとりの人間、ひとつの会社が、供給するモノや、買うときに必要なお金を独り占めすれば、マーケットは成り立たなくなります。
成立するには、最低限の「共感」が必要です。
自分以外の人たちへの関心が必要です。
これを「同感」と呼びます。
とはいえ、「同感」とは「同情」とは異なります。
市場での「同感」とは、お金もち or 豊かな人にたいする関心です。
市場では、貧しい者よりも富のある者に共感しやすく、派手で豪華な身なりの人に注目する傾向があります。
ひとのイヤなトコですが、この特性があるため、人間は稼ごうします。
他人から注目されたいからです。
他者からの同感を得ようと、経済活動に励みます。
「人から評価を得ようとするキモチ」がエンジンとなって、経済が活性します。そして、市場は拡大します。
③ 公平な観察者
ひとはだれでも「公平な観察者」をココロにやどしています。
「公平な観察者」とは、ココロのうちにもう一つの人格のことです。
スピリチュアルなかんじがしますが、よく「俯瞰してモノゴトをみる」という言い方をしますよね。
その俯瞰してモノゴトをみるときの視点のことです。
「公平な観察者」は、他人を客観的にとらえます。
そのうえで、自分の行動の良し悪しを判断します。
「ことわざ」でいうところの、「人のふり見て、我がふり直せ」ってやつですね。
市場において人は自分勝手におカネもうけとしているようにみえます。
しかしこの公平な観察者のおかげで、他人の評価を気にかけ、自分勝手な行動を抑えます。
自己利益を求めるだけの経済活動をしなくなります。
それにより市場は暴走することなく調和するようになります。
以上3つが、市場が成り立つ条件です。
自己利益なくして市場は、活性化しません。
自己利益の追求は、他者の視点を意識したものです。他者への共感をベースにしています。
そして、暴走リスクをハラみながらも、ひとりひとりがもつ「公平な観察者」が支えとなって、市場の調和は保たれています。
市場メリット=分業による生産性の向上
なぜ人は、市場のしくみを導入しているのか。
そのワケは、生産性があがり、人びとの暮らしを豊かにするからです。
世の中全体の富を増やすからです。
なぜ、生産性が上がるのか。
それは、分業のしくみをとっているからです。
分業によって、ひとりひとりは、自分が得意とする作業・業務に専念できます。
それによって、生産性が上がるのです。
このようなシステムをとる社会を「商業社会(commercial sociaty)」と呼びます。
「ピン製造」の例
たとえば「ピンを製造する」場合──。
ひとりで「ピン」をつくるには、鉄のハリガネを切って、穴をあけ、先をとがらせる必要があります。
1本つくるだけでも、時間がかかります。
いっぽう、「ハリガネを切る人」「穴をあける人」「先をとがらせる人」のように、ひとりひとりが作業を分担とすれば、そのぶん、生産性がアップします。
各個人、得意な作業をしているので、つくるスピードが早いからです。
全体としての生産性が上がり、結果、世の中の富は増えることになります。
コレが、分業によって、世の中全体の富が増えるしくみです。
国が豊かになるためには?
以上の特徴をふまえて、ひとつの国家が豊かになるためには、「市場経済の導入=商業社会」&「分業のしくみ」が不可欠だとしました。
これは、ひとつの国家のはなしに留まらず、複数の国家のあいだでも同じです。
たとえば2つの国があった場合、双方の社会で「市場のしくみ」を導入しておく必要があります。
また貿易するさいにも、1つの国が、すべてのモノを製造&輸出しないほうがいい。
それぞれの国が「得意なもの」をつくり、輸出し取引したほうが、全体の利益が高まる。
つまり、個人のあいだではなく、国家のあいだでも「分業のしくみ」を採用したほうが、お互いにとって利益が出ます。
国家がなすべきコト
なので、国家のあいだで、経済取引をスムーズにおこなうためには、つぎの施策が不可欠です。
- 国防
- 司法
- 公共事業
カンタンにいえば、武力から国をまもり、法によって国をおさめ、環境を整える、ということです。
最低限、この3つを国家がおこなっていれば、国内でも、国家のあいだでも、経済活動は成り立つとしました。
おわりに
A.スミス『国富論』のポイントをみてきました。
さいしょにのべたように、日本をふくめ、世界の経済システムが変化しています。
これまでのように、会社や組織が、個人をまもってくれない状況で、ひとりひとりが「マーケット」のしくみを理解する必要があります。
本書は、歴史上はじめて、「市場のしくみ」を説明した本です。
学術書だけあって、言いまわしはカタくるしいですが、参考になるトコはたくさんあります。
自らの教養をあげるためにも、ぜひチェックしてみてください。
ではまた〜。