【書評】本村凌二『教養としての「世界史」の読み方』感想&レビューです。

どうも、りきぞう(@rikizoamaya)です。

大学院では、キャリア論と社会保障を研究していました。

社会人なってからは、予備校講師 → ウェブディレクター → ライターと、いろんな職業にたずさわってきました。

働き方についても、契約社員 → 正社員 → フリーランスと、ひと通り経験してきました。

働くなかで思うのは、自分の市場価値をアップするには「教養」が大切だということ。

「できるなぁ」
「発想がすごいなぁ」

と、思う人は、キホン、教養を身につけています。

なかでも、重要なのは「世界史」です。

ここ数年、ビジネスマンの必須知識として「世界史」が注目をあつめています。

ネット時代をむかえ、グローバル化が加速しているからです。

海外の人たちとの交流が深まるなか、世界全体の流れを知っておかないと、マズそうです。

とはいえ、世界史は分量が多くて、どこから手をつければ良いか、わからないですよね。

そんなとき、つぎの本が目につきました。

著者は、古代ローマ史の研究者で、数々の業績をのこしてきた方です。

本書では、ローマにかぎらず、世界史にたいする視点や、著者自身の新説・仮説についてのべています。

一言で「世界史」といっても、どのような視点から、歴史をとらえればよいのか、わかりませんよね。

関連書籍もたくさんありますし、なにを読めばいいのか、まよってしまいます。

この本では、7つの視点を示したうえで、世界史全体をみていきます。

フツーの世界史本とはちがい、時系列で、時代をたどらず、「政体」「宗教」「民族移動」など、テーマ別に、歴史をとらえていきます。

・世界史のポイントを知りたい
・世界史を見る視点を養いたい

こんな人たちには、おすすめの1冊です。

『教養としての「世界史」の読み方』の概要

まずは目次から。

こんなかんじです。

序章 「歴史に学ぶ」とは何か?
第1章 文明はなぜ大河の畔から発祥したのか
第2章 ローマとの比較で見えてくる世界
第3章 世界では同じことが「同時」に起こる
第4章 なぜ人は大移動するのか
第5章 宗教を抜きに歴史は語れない
第6章 共和政から日本と西洋の違いがわかる
第7章 すべての歴史は「現代史」である

序章で、世界史をみる視点を提示します。イントロですが、本書のなかで、イチバン大事なとこです。

ここはかならず目を通しましょう。

1章〜6章で、「政体」「宗教」「民族移動」など、世界史において、カギとなる「現象」「出来事」をのべていきます。

目次をみて、気になるテーマから、ながめていけばいいと思います。

ラスト7章で、現代における世界史の意義についてふれています。

『教養としての「世界史」の読み方』の詳細

以下、気になったトコを、カンタンにのべていきます。

世界史をみる7つの視点

世界史の情報量は、膨大です。

どの時代、どの地域から、知ればいいのか、まよってしまいます。

そこで著者は、世界史をみる視点・ポイントを、7つ提示します。

① 文明はなぜ大河の畔から発祥したのか
② ローマとの比較で見えてくる世界
③ 世界では同じことが「同時」に起こる
④ なぜ人は大移動するのか
⑤ 宗教を抜きに歴史は語れない
⑥ 共和政から日本と西洋の違いがわかる
⑦ すべての歴史は「現代史」である  

じつは、この視点が、そのまま「各章」のタイトルに、対応しています。

7つの視点は参考になりますが、もうすこし単純化できると感じました。

つぎのようになります。

  1. ① 自然環境
  2. ② 宗教
  3. ③ 政体
  4. ④ 民族移動

ひとつひとつ、カンタンにふれてみます。

① 自然環境

おもに1章でのべられているテーマです。

たとえば、「なぜ川のそばで文明が誕生したのか」。

世界史の教科書では、この点を、深堀りしないでスルーします。

じつは、研究者のあいだでは、ある程度、答えは出ています。

それは「乾燥化」です。

一般的には、農業をおこなうために、川のそばに集まってきたから、といわれます。

しかし「川」以外にも、水はあります。

なぜ、川のそばに集まってきたのかといえば、土地(内陸)の乾燥化によって、川のそばにしか、水を手にすることができなくなったからです。

こんなふうに、文明の誕生など、たいていの出来事には、「気候変動」など自然環境が、大きく影響をあたえます。

世界史をみるときには、「自然環境」に注目する必要があります。

② 宗教

人類の歴史に、宗教は不可欠です。人は、宗教とともに、生きていきたからです。

世界史をみるときにも、宗教への視点は重要です。

たとえば、

・なぜ、宗教は生まれたのか
・なぜ、一神教は生まれたのか

といった、ギモンです。

仮説をふくめ、本書でも、くわしく展開しています。

③ 政体

政体とは、統治のしくみのこと。

いまは「民主主義」がフツーで、イチバン良しとされています。

しかし、世界史をふりかえると、民主政でもって、人びとを統治したのは、めずらしい。

どちらかといえば、「帝国」による統治のほうが、メジャーです。

世界史をみるとき、

・帝国
・都市国家
・国民国家

など、どんな統治のかたちをとっているかは、とても大事な視点です。

④ 民族移動

さいきんのニュースでも、シリア難民が、話題になりました。

ドイツをはじめ、EU 各国は、移民を受け入れについて、バチバチ議論をしています。

移民・民族移動は、いまにはじまった話ではありません。

というより、民族移動が、世界史を動かしてきた、といっても、言い過ぎではないのです。

メジャーなところだと、「ゲルマン民族の大移動」があります。

それによって、1000年以上つづいた「ローマ帝国」は崩壊しました。

じつは、ゲルマン民族が移動したのも、フン族が侵略してきたらといわれています。

フン族の実態は、いまの段階でもわかっていません。

ただし、遊牧民であったことはたしかなようで、フン族たちもまた「移動」によって、ほかの民族に影響をあたえたことになります。

こんなふうに、大なり小なり、民族移動が、周辺各国に影響をあたえます。

世界史をみるときは、どの民族が移動して、文明をつくり、人びとを治めていったのかを、知る必要があります。

以上が、世界史をみるときの視点です。

本書では、7つ提示していますが、まずはうえ4つの視点から、世界史をみるといいと思います。

アルファベット・一神教・貨幣は、ほぼ同時に生まれた

「アルファベット」「一神教」「貨幣」 ─ この3つは、人類にとって欠かせないものです。

じつは、この3つの発明は、B.C.2000年(紀元前2000年)の頃に誕生しました。

著者は、「仮説」だと前置きしたうえで、3つは同時に生まれたと指摘します。

アルファベットと一神教と貨幣は、歴史の大きな流れの中でほぼ同時に(厳密に言えばそれらの普及には数百年のズレはありますが)、また、それも東地中海世界で生まれ、普及していったと考えていいと私は思っています。(1582)

この仮説は、たいへん興味ぶかいですよね。

その要因として、「シンプリフィケーション」をあげます。

「シンプリフィケーション」とは、文字どおり「単純化」のことです。

じつは、B.C.2000年の頃には、「たくさんの種類をもつ文字」「たくさんの神々」「さまざまな物々交換」が存在していました。

著者は、 バラバラで、効率のわるい、文字・神々・交換を統合するために、アルファベット・一神教・貨幣が生まれたと考えます。

人間には、フクザツなものを「シンプル」にする性向があるため、それによって、これら3つが作られた、というわけです。

もちろん、歴史学においては、これはまだ私の仮説に過ぎません。しかし、こうしたシンプリフィケーションがほぼ同時期に起きているということは、人間の 営みとして、ある程度文明が複雑化してくると、自然とそれを単純化しようという動きが生まれる可能性を示唆していると言えるのではないかと思います。(1592)

一神教については「?」といったかんじですが、おもしろい仮説ですよね。

「シンプリフィケーション」は、いまでも起きています。

たとえば、コンピューターもそうですし、いま流行りの「AI」をそうです。

フクザツで、不確かなものを、よりシンプルに、わかりやすくしようとしています。

歴史をふりかえると、いま起きている現象・発明の意味が、よりハッキリしてきます。

おわりに

ますますグローバル化がすすみ、海外の人たちと交流が深まるなかでは、世界史の教養は不可欠になっています。

とはいえ、世界史の情報量は多すぎて、どこから手をつけて良いのか、わからないと思います。

本書では、世界史をみるときの視点を提示してくれています。

それによって、テキトーではなく、目的意識をもって、世界史にふれることができます。

よければチェックしてみてください。

ではまた〜。