シェイクスピア『恋の骨折り損』感想&レビューです。

どうも、コント作家のりきぞうです。

きょうも、コント作品をレビューしていきます。

取りあげるのは、シェイクスピア『恋の骨折り損』。

自分は小田島訳。Kindle 版でよみました。以下、引用のページ番号はそちらによってます。

喜劇では、初期のころの作品です。

ほかの作品にくらべると、わりとマイナーな部類にはいりますね。

以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。

ストーリーの大まかな流れ

人物

ファーディナンド……王

ビローン
ロンガヴィル
デュメーン
……それぞれ、王につかえる貴族

フランス王女
ロザライン……王女につかえる貴婦人

場所

ナヴァール王国

あらすじ

ナヴァールの王ファーディナンドが、3人の貴族に、宮廷での恋愛を禁じる命令をくだす。

バカげたルールに、ただひとりビローンが反対する。

そんななか。フランス王女が貴婦人たちをつれてやってくる。

初顔合わせのとき、ビローンは、貴婦人のひとりロザラインに恋をする。

王さまからの命令をやぶり、すこしおバカなコスタードをつうじて、ラブレターをわたすことに。

一方のファーディナンド王も、フランス王女に一目ぼれ。自分から言いだした命令に反して、アプローチをこころみる。

ほかふたりの貴族、ロンガヴィル、デュメーンも、貴婦人たちに恋をし、ひそかにラブレターをわたす。

けっきょくのところ、全員がルールをやぶり、それぞれがウラで画策して……。

ひとこと

さいしょの場面で王が恋愛を禁じるトコから話がはじまる。

このルールを破るのがキモとなり、ストーリーがすすんでゆく。それぞれがウラで、恋する相手にアプローチをする。

その過程で、ラブレターを渡していることがバレたり、ヘタクソな恋の歌を暴露をされたりする。

プロットでは、その点がイチバンの笑いどころ。

またこの作品は、プロットやキャラクターよりも、セリフのやり取りで笑わせる印象がつよい。

そのため翻訳ではどうしても面白さが半減しているようにもおもえる。

英語のビミョーな言いまわしにつよい人は、原書で読むと、おもしろさが増すとおもう。

笑いのポイント

笑いのポイントをみていきます。

コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。

この作品ではプロットに注目してみます。

コントのプロットはとてもシンプル。

[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

コントの書き方 ─ プロットの構成について

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。

パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。

コントの書き方 ─ プロットの展開について

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「交錯」だとわかります。

「交錯」では、隠した感情や事実がバレないように、ひとりの人物が、コトバやアクションを取りつくろうようすを描き、ストーリーを展開させる。

アタフタする姿や、事態が明らかになっていく状況が、笑いを引きおこす。

この作品でも、ナヴァール王が決めたルールに反して、ひそかなキモチをいだいた人物たちが、禁じられた行為がバレないよう、事実をとりつくろう。

事態が発覚しないようアタフタする。

たとえば、貴族ビローンは、コスタードに、ロザライン宛のラブレターをたくす。

しかし、マヌケな田舎者は、ロザラインにはちがう手紙をわたし、渡すべき手紙は、ぜんぜん関係のない神父や教師に見せてしまう。

最終的には、イチバン見られたくない相手、ナヴァール王に、「王国内でのクーデターの知らせ」「重大事件のニュース」だとつたえ、渡してしまう。

さらにおもしろいことに、ビローンが書いたラブレターとも知らず、本人に声を出して読ませる。

それが、つぎのシーン。

ジャケネッタ 陛下、この手紙をどうか読んでください、村の神父様が言ったんです、これは謀反だ、どうも臭いと。

 ビローン、読んでみろ。 (手紙を渡す)これをだれから受けとった?

ジャケネッタ コスタードからです。

 おまえはだれから受けとった?

コスタ ード へい、その、ダン ・アドラマディオさんからで。

(ビローンは手紙を引き裂く)

 おい、どうした! なぜその手紙を破いたりした?

ビローン ばかげたものです、ご心配にはおよばないものでした。

(no.1032)

図にするとこんな感じ。

構図 ─ 交錯
クーデターの知らせ = 手紙 ≠ ラブレター

・王、手紙をうけとる
・クーデターのニュースにおどろく
・ビローンによませる
・見たとたん、やぶく

クーデターの知らせ ≠ 手紙 = ラブレター

これ以外にも、画策するシーンがたくさん描かれ、どれもこれもバレていくようすが、うつしださせれる。

「交錯」の構図が何度もあらわれるので、笑いドコはいくつもあります。

また後半のほうでは、ナヴァールの貴族たちが、ロシア人の踊り子に変装して、フランス王女たちにアプローチするが、それを知った彼女たちもまた正体をかくして、彼らにイタズラをしかける。

こんなふうに、化かし合いがくりかえされ、観てる人は、ダマされる人物を笑い、ダマすための策略がバレた人物を笑う。

ただし、本作品は、セリフまわしで笑わせている印象がつよいです。

シャレやことば遊びが苦手な人は、テンポがわるいと感じるかもです。

とはいえ、作品のテーマははっきりしていて、つまり人は恋の衝動にはかなわない。

ガチガチのルールでかためても、ひとのキモチはあっさりソレをやぶる。

人間の感情をほめたたえたルネサンス時代にふさわしい作品です。

ビーロン  陛下、あなたも、きみも、きみも、思い出していただきたい、ただ鉛のように重い思索にのみふけっていたとすれば、あの美の先生たちの魅惑的な目が教えてくれるままに燃える思いを書きつらねた詩が、生み出せたろうか? 鈍重なほかの学問は脳のなかにじっととどまっている、したがってそれを行動に移して表現する手だてもない、労多くして益少なし、骨折り損と言うほかない。

(no.1119)

まとめ

こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。自分でつくるときにも役立ちます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた。

よきコントライフを〜。