どうも、りきぞう(@rikizoamaya)です。
大学院では、キャリア論と社会保障を研究していました。
社会人なってからは、予備校講師 → ウェブディレクター → ライターと、いろんな職業にたずさわってきました。
働き方についても、契約社員 → 正社員 → フリーランスと、ひと通り経験してきました。
数年まえから「AI(人工知能)」が話題になっていますね。
IT にかぎらず、さまざまなジャンルに影響をあたえると言われます。
どんな分野の人でも、無関係ではいられません。
つねにテクノロジーの動向には注目しておく必要がありそうです。
そんなとき、つぎの本が目につきました。
著者の2人は、MIT の経済学者。
デジタル化が、経済にあたえる影響を研究しています。
本書は2011年に出版されました。
「AI が人間の仕事を奪う」論のキッカケになったものです。
分量は少ないですが、IT が経済・雇用・仕事に与えるインパクトを、端的にまとめています。
情報テクノロジーは、ひとの暮らしを良くするのか、悪くするのか──。
興味ある人は、まずは本書に目を通すことをおすすめします。
目次
E.ブリニョルフソン, A.マカフィー『機械との競争』の概要
第2章 チェス盤の残り半分にさしかかった技術と人間
第3章 創造的破壊 ─ 加速するテクノロジー、消えていく仕事
第4章 では、どうすればいいか
第5章 結論 ─ デジタルフロンティア
1章
IT テクノロジーが、経済と雇用にあたえる影響について。
失業率の増加、所得の減少など、ネガティブな側面を指摘します。
2章
さまざまな事例から、デジタルテクノロジーと仕事のカンケーについてみていきます。
とくに「汎用性の高い」技術の影響について。
3章
IT と生産性のカンケーについて。
経済全体は豊かにするものの、1人あたりの所得はアップせず、雇用も増やさないコトを指摘します。
4章〜5章
IT があたえるネガティブな面をふまえつつ、これからの対策について。
蒸気・電気など、過去のテクノロジーと比較しつつ、技術をうまく仕事に取りいれるコツをのべていく。
E.ブリニョルフソン, A.マカフィー『機械との競争』で気になったトコ
以下、引用をのせつつ、気になった箇所についてコメントしていきます。
なぜ所得は上がらないのか
いまの日本でも、景気が回復しても、賃金がアップしないのが問題になっています。
本書をふまえれば、〝テクノロジーと人間のミスマッチ〟ということになります。
つまり、発達したテクノロジーを、ひとが仕事に活用できなかったのが要因です。
価値が生み出されているのに、経済的に困窮する人が多いのはなぜか。技術の進化が加速しているのに、所得がいっこうに増えないのはなぜか。一見矛盾に見えるこうした現象も、現在の状況を急発展するデジタル技術と変化ののろい人間のミスマッチと認識すれば、標準的な経済の原則を適用して理解することができる。(809)
とくに、これまでの経済を引っ張ってきた中間層への影響がつよい。
いわゆる会社勤めのホワイトカラーは、テクノロジーの恩恵を受けなかった。
というより、〝 ダメージを食らった〟というほうが正しいかんじです。
〔……〕私たちは、ペースが速くなりすぎて人間が取り残されているのだと考える。言い換えれば、多くの労働者がテクノロジーとの競争に負けているのである。(0235)
この点は、統計データにあらわれています。
労働者全体の豊かさをしめす「中央値」が、ここ10年でダウンしているのです。
ポイントは、テクノロジーが進化し、世の中全体が便利で、豊かになっている点です。
繁栄しつつも、ひとりひとりの収入は下がったているのです。
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コンピュータの性能向上とくっきりとした対照をなす。技術の進歩には停滞はなかったし、ときに指摘されることだが富の創造にも停滞はなかった。停滞したのは所得の中央値である。この現象は、経済における所得と富の分配に生じた根本的な変化を反映している。端的に言って、中間層の労働者はテクノロジーとの競争に負けつつある。(0882)
まさにこれなんて、いまの日本をあらわしていますよね。
さらに、いまのようなワークスタイルとのままだと、日を追うごとに、悪化していきそうです。
それはホワイトカラーの人たちだけではなく、デジタルにかかわる、あらゆら業種に負のインパクトをあたえます。
じしつ、いまのグローバル経済における格差は、IT にともなう現象のようにみえます。
技術の進歩、とりわけコンピュータ、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークの進化はあまりに速く、あまりに予想を超えているため、今日の企業も、政府機関も政策も、そして人々の考え方や価値観も、もはやついていけなくなっている。この視点から見れば、グローバリゼーションの加速は失業問題の別の要因ではなく、テクノロジーの高度化と浸透がもたらす結果の一つに過ぎない。 (0237)
テクノロジーによる3つの格差
具体的に、どのような格差が起きるのでしょうか。
以下の3つが考えられます。
- ① 高スキル層 / 低スキル層
- ② スーパースター / フツーの人
- ③ 資本家 / 労働者
ちょっとみています。
① 高スキル層 / 低スキル層
これはわかりやすいですよね。
端的に、プログラミングスキルの〝アリナシ〟です。
とくにこれから、AI +ロボによる産業の自動化がすすみます。
IT スキルが高いか低いかで、所得と階層に影響をあたえます。
② スーパースター / フツーの人
これまた身近にかんじる格差ですね。
むかしから、スターと一般人のあいだには差はありました。
しかし、デジタル経済は「総取り」がキホンです。
ひとりが市場全体のパイを奪いやすくなります。
多くの市場で、消費者は最高に最高の人に喜んでプレミアムを支払うという。売り手が自分のサービスをローコストで複製できる技術が存在したら、最高品質の売り手は市場シェアの大半、あるいは全部を獲得できるだろう。すると二番手は、品質面でトップと僅差であるにもかかわらず、ほんのわずかなシェアしか獲得できない。(1052)
とくにこれからは、遊びをメインにした産業が拡大していきます。
しかし、そのようなクリエイティブな要素がつよい業界ほど、一部の人たちだけに人気が集まります。
まんべんなく、クリエイターたちに、お金かまわらないのです。
スーパースター / フツーの人の格差は、ますます広がっていきます。
③ 資本家 / 労働者
むかしからある対立軸ですが、デジタル経済でもあられます。
たとえば、産業や仕事に「自動化」をもたらす「AI +ロボ」ですが、所有できるのは、資金力がある人たちだけです。
AI 技術を引っ張っている、Google や Amazon をみていれば、わかりますよね。
規模を拡大できる会社組織が、恩恵をうけるのです。
これは働き手ひとりの視点に置きかえても同じでしょう。
資金があるぶん、「AI +ロボ」の技術を保有でき、より生産性を高めることができます。
対策は?
経済学の横道では、政府による「所得分配」ということになります。
とはいえ、そのまえにできることもあります。
なにより、負の側面を理解しつつ、テクノロジーを利用することです。
「仕事が奪われる」
なんて考えず、こっちが「使ってやる」くらいのキモチで活用することです。
その気概(マインド)をもちつつ、新たな産業をおこします。
これがイノベーションにつながります。
経済の拡大をもたらした相次ぐ技術革新は、機械を敵に回しての競争ではなく、機械を味方につけた競争から生まれたということである。人間と機械は協力してより多く生産し、より多くの市場を開拓し、より多くのライバルを打ち負かした。(1382)
テクノロジーは「敵」ではなく「味方」と思うことです。
直接対決をやめ、機械と手を携えて競争を始めたら、事態は興味深い方向に展開していくだろう。(1385)
そもそも、デジタルテクノロジーは、分散した知識の組み合わせをカンタンにしました。
ハイエクのいうとおり、市場活性のエンジンが、知識のアレンジなら、これほどのチャンスはありません。
フリードリヒ・フォン・ハイエクが指摘したように、経済における最も貴重な知識の一部は人々の間に分散している。「分散するのは、時間や場所など特定の状況に関する知識である。(中略)十分に活用されていない機械を見つけて利用すること、もっとうまく活用できる人材やスキルを発掘して活かすこと、供給が途絶えたときに使える余剰在庫の存在を知っておくことなどは、すぐれた新技術に関する知識と同じぐらい、社会にとって役立つものである。帰りは積み荷が空か半分程度しか得られなかった蒸気船の船主、場当たり的な売買機会しか知り得なかった不動産屋、地域による商品相場のちがいで利ざやを稼ぐ仲買人は、他人が知らない状況を一瞬早く知ることによって、きわめて有用な役割を果たすことができる」(1445)
とくに起業マインドの強い人なら、アイデア次第で、いくらでも産業を起こすことができます。
もちろん、その結果として、うえに上げた3つの格差は生まれでしょうが、やる前から気にしてても仕方ありません。
チャンスが広がっているうちに、行動をおこしましょう。
第三の産業革命は、現在進行中である。この革命を導くのはコンピュータとネットワークだ。過去の二回の革命と同じく、今回の革命も完全に終わるまでには数十年を要するだろう。そして二回の革命同様、人類の発展の道筋を大きく変え、歴史を書き換えることになるだろう。混乱や歪みは起きるだろうし、それを乗り越えるのはたしかに容易ではあるまい。だが変化の大半はよいものであり、人類も世界もデジタルフロンティアでゆたかになると私たちは確信している。(1911)
おわりに
さいしょにのべたとおり、AI をはじめ、情報テクノロジーはますます進んでいきます。
経済・産業・仕事・生活──さまざまなジャンルに進出していきます。
そのさい「仕事が奪われる」「いままでの暮らしが損なわれる」なんて、恐れていても仕方ありません。
敵対心をいだかずに、うまく利用したほうが、豊かな人生をおくれそうです。
本書は、ややテクノロジーにたいして、ひとの恐怖心をあおっているようにもみえます。
けれど、いまのうちに、どのような対策をとり、仕事に取り組めばいいのか──その処方箋もしめしています。
とくに起業家マインドの高い人は、4章以降は、ポジティブな視点で、読みすすめることができます。
よければチェックしてみてください。
ではまた〜。