モリエール『ジョルジョ・ダンダン』感想&レビューです。

どうも、コント作家のりきぞうです。

きょうも、コント作品をレビューしていきます。

取りあげるのは、モリエール『ジョルジョ・ダンダン』。

中期の作品です。

若いころに『ル・バルブイエの嫉妬』を書いていますが、それを発展させたものとされています。

以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。

ちなみに、鈴木力衛訳、全集本で読みました。

以下、引用のページ番号は、うえの文献によります。

また2000年には、べつの翻訳も出ています。

わりと読みやすいです。

よければチェックしてみてください。

ストーリーの大まかな流れ

人物

ジョルジョ・ダンダン
アンジェリック……ジョルジョ・ダンダンの妻

ソンタヴィル夫妻……アンジェリックの両親
クローディーヌ……アンジェリックの付き人

クリタンドル……アンジェリックの浮気相手

場所

田舎、ジョルジュ・ダンダンの家の前

あらすじ

田舎貴族ソンタヴィル家のむすめアンジェリックと結婚したジョルジョ・ダンダン。

彼は農夫の身分だが、ゆたかな資金があり、ソンタヴィル家への支援をきっかけに、結ばれることに。

しかし妻のアンジェリックはもちろん、両親のソンタヴィル夫妻も、農民あがりのジョルジョ・ダンダンをバカにしている。

彼のおかげで破産は回避できたが、知性・教養・品格の面で、夫を下にみている。

そんななか、ジョルジョ・ダンダンが、妻宛てのラブレターを渡しにきたリュパンを見つける。

手紙の差出人は、近くに引っ越してきた、貴族クリタンドル。

あろうことか、アンジェリックの付き人クローディーヌも加担して、ふたりの仲をとりもっていた。

妻の浮気を知った夫は、アンジェリックの両親に訴えるが、ソンタヴィル夫妻は、聞く耳をもたない。

さらに浮気相手のクリタンドルに嫌疑の目をむけるが、貴族という身分をタテに押しきられ、なぜか名誉毀損で訴えられるハメに。

それでも妻の浮気をあばこうと、あれこれ策を練るが……。

ひとこと

寝取られ夫(=コキュ)が主人公です。

妻の浮気をくい止めるため、さまざまな手をうちます。

けれど、妻アンジェリック&付き人クローディーヌのずるがしこさでもって、失敗におわります。

しまいには、皮肉を口にされてしまいます。

アンジェリック 〔……〕わたしになにかいけないところがあるとしたら、夫を大事にしすぎることくらいですわ。

クローディーヌ そのとおりでございますよ。

(p.25)

同じく、浮気相手クリタンドルに浮気の嫌疑をかけても、当人や両親から「名誉毀損だ」「謝罪しろ」と追いつめられる。

クリタンドル 〔……〕ごらんのとおり、ぼくはあらぬ罪をきせられました。名誉を毀損された場合、いかなる行動に出るから、そのしきたりはあなたもご存じのはず。さあ、ぼくの受けた侮辱に償いをつけてもらいましょう。

ソンタヴィル氏 そうだ。間違ってこのかたに罪をきさたからには、きちんと始末をつけねばならんのだ。〔……〕

ジョルジョ・ダンダン それじゃあ、この人がわたしの女房と寝ているところを見つかっても、シラをきりさえすれば無罪放免ってわけですかい?

(p.27-28)

それでも何とか妻の浮気をあばこうと、ドタバタするジョルジョ・ダンダン。

しかしどの作戦も、妻と付き人の「機転」によって、ウラメにでる。

このくりかえしによって、笑いがおこります。

笑いのポイント

笑いのポイントをみていきます。

コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。

この作品ではプロットに注目してみます。

コントのプロットはとてもシンプル。

[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

コントの書き方 ─ プロットの構成について

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。

パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。

コントの書き方 ─ プロットの展開について

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「反復」だとわかります。

「反復」では、状況や環境が変わっても、それまでと同じアクション、セリフ、出来事をくりかえすようすを描きます。

それによって笑いを引き起こします。

この作品でも、ジョルジョ・ダンダンが妻の浮気をあきらかにしようとする。

しかしどの作戦も失敗におわり、コキュに成りさがったままとなる。

このくりかえしが、笑いをもたらします。

図にするとこんな感じ。

構図 ─ 反復
ジョルジョ・ダンダン = コキュ

・策をほどこすが失敗
・農民あがりのため、訴えをきいてもらえず

ジョルジョ・ダンダン = コキュ

どんな作戦を練り、どのようにやり込められるか。

本文でチェックしてみてください。

アクションによる笑いなので、いまみても十分おもしろいです。

またラストふきん、やり込められる夫が放つセリフが、とても印象的です。

クリタンドル まったく、あなたを妻にもらい受けた男は、それほどの名誉に値するしろものじゃありませんね。ほんとに妙な取り合わせですよ、あなたほどのかたがあんな男と夫婦になられるとは!

ジョルジョ・ダンダン (ひとりで)かわいそうの亭主族! こんなひどいあしらいを受けるとは!

クリタンドル あなたはもっと別の運命にふさわしいかたです。神さまはあなたをドン百姓のおかみさんにするように造られたわけではありません。

ジョルジョ・ダンダン ふん! あいつがおまえの女房だったとしたら、そんな口がきけるものか。

(p.59)

ここでは、浮気相手のクリタンドルが、妻にむかって、夫である自分をボロカスにけなし、そのようすをひそかに聞いています。

興味ぶかいのは、クリタンドルに嫉妬するよりも、「亭主」になった男たちを憐れんでいるトコ。

浮気相手を妬むよりも、アンジェリックの奥さんになる彼に同情する。

ここに、モリエールの夫婦像がみえかくれしています。

まとめ

こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。自分でつくるときにも役立ちます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた。

よきコントライフを〜。