【書評】グレゴリー・クラーク『10万年の世界経済史』感想 & レビューです。

どうも、リキゾーです。

このあいだ、グレゴリー・クラーク『10万年の世界経済史』を読みました。

著者のグレゴリー・クラークは、アメリカの計量経済学者です。

英国とインドの経済史、経済成長論について、計量的な手法をつかって研究しています。

この本では、産業革命をキッカケに、なぜ人類は栄えたのかを分析しています。

長期的な視点から、いまの経済を知りたいひとにはオススメの一冊です。

001. 内容

タイトルが『10万年の世界経済史』なので、壮大なストーリにみえますが、なかみは産業革命の以前と以後の世界をのべたものです。

歴史家のように散文的にかたらず、数量的に分析します。ロジカルなひとには、とっつきやすいですね。

上巻(第1部)は、産業革命以前の経済について。

いまのような豊かな世界ではなく、人口増加と飢饉のジレンマに悩まされてきた歴史をみていきます。

下巻(第2部、第3部)は、産業革命がおこなった要因を分析。

経済学では、生産要素を「土地」「資本(設備)」「労働(労働力)」「技術進歩」にわけて、成長の要因をあきらかにしていきます。

しかし産業革命が生じたのは、これらが要因ではなく、「人口増加」「生産性の向上」によるものだと主張します。

大まかな内容はこんなかんじです。

以下、こまかくみていきます。

ポイントをあげます。

要点
  • 産業革命がおきるまえの経済
  • マルサスの法則から抜けだせた要因
  • 産業革命をもたらした要因

ひとつひとつみていきましょう。

産業革命がおきるまえの経済

この図がしめすように、1750-1860年よりまえは、ひとりあたりの所得は、どの時代も同じでした。

衣住食での豊かさについては差はありませんでした。

そのワケは、マルサスの法則が支配していたからです。

マルサスの法則とは、18世紀のイギリスの経済学者が提唱した人口問題にかんする理論です。

技術革新など、なにかの影響で生産性があがったとします。

それにより生産量もふえ、人口もふえていきます。

よろこばしいようにみえますが、生産量は、人口増加にあわせてふえてはいきません。ひとりひとりの取り分はへります。

へったにしても、食料など必需品が、生存するさいの最低水準を上まわれば問題ありません。貧しくなるだけです。

しかし下まわれば……。

それは危機です。飢餓で死ぬひとたちがふえます。

マルサスはこの事態をとらえ、長期的には人口規模は一定すると考えました。

出生率もあがり、人口がふえても、土地の規模 & 食料の供給が同じならば、ひとりあたりの食いぶちがへり、死亡率があがるからです。

つまり長い目でみれば、出生率と死亡率は均衡する、というわけです。

図にすれば、こうです。

人口 UP

一人あたりの所得 DOWN

餓死者 UP

人口 DOWN

一人あたりの所得 UP

人口 UP

産業革命がおきるまえの人類は、マルサスの法則=人口増加と食料不足のジレンマに悩まされていました。

マルサスの法則から抜けだせた要因

ではなぜ、マルサスの法則から解かれ、1750-1860年にかけて産業革命がおきたのでしょうか。

数量データをみると、この時期に生産の効率性があがっているとわかります。

生産効率性をあらわす公式をしめしたあと、つぎの図を紹介します。

このグラフから読みとれるのは、1790年ごろから効率性について安定的な上昇傾向がつづいているという点です。

1780-1860年代の上昇はゆるやかみえます(近代的な経済成長率の半分以下です)。

そうはいっても、人類史のなかでもまれにみる速度で発展し、かつ、長期間つづきました。

とはいえ、1780年〜1860年代の効率性上昇率は年間0.5%にすぎず、近代の一般的な水準の半分以下だった。しかし、それでもこの時期の効率性向上のペースは、かつてないほど急速で、持続的なものだったのである(p.69)

つまり、生産性があがったことで、人口がふえる以上に、生産量がアップして、飢餓を克服したということです。

長期間にわたる生産性の向上が、人口問題=飢餓の問題を解決したのです。

産業革命をもたらした要因

ではより具体的に、なにが産業革命をおこし、いまのような産業社会をもたらしたと考えられるのでしょうか。

2つあります。

ひとつは、すでに17世紀から生産性はゆるやかに上昇していて、産業革命の時期に一気に隆盛したという考えです。

産業革命が起こり、爆発的な成長を成し遂げたというよりも、1600-1750年にかけて経済成長が始まり、この時期にとくに目立ったという見方です。

このグラフからもわかるように、1760-1869年代における効率性の上昇率は、年間約 0.03% と高いとはいえません。

ここからつぎのようにいえます。

産業革命を「英国経済では1600年ごろに始まった、静的なマルサス的経済の時代から近代的な経済成長の時代への、一般的な思考過程の一段階」と解釈することもできる。産業革命は変動を伴いながら現在まで続いてきたプロセスの、突然の開始を告げるものではなく、そうしたプロセスの継続と加速を示すものだったのである(p.81)

ふたつめは、生産性以外にも、人口が安定的に増えていたという見方です。

生産性アップとならんで、1750-1870年にかけて人口が増加したのです。

気をきかせば、こういえます。

英国が世界の頂点にのぼりつめたのは、英国人労働者による、工場というよりも寝室での労働の成果だった(p.84)

つまり、「生産性の向上」と「人口増加」がうまくマッチして、産業革命をおこし、いまのような繁栄をもたらしたといえるのです。

002. ひとこと

経済学では、「なぜ産業革命がおきたのか」という問いは、一大トピックです。

この本では、「生産性の向上」と「人口増加」が、産業社会をもたらしたと結論づけています。

ただし、このほかにも、社会を発展させる知識(情報)が年を経るごとに蓄積され、それらがイノベーションに活かされ、生産性をアップさせたとも指摘しています。

なので「これが産業革命の要因!」とハッキリ主張していないので、すこしぼやけた印象をうけますが。。

とはいえ、イノベーションをおこしても本人には利益をもたらさなかったこと、産業社会は世界に等しく広がらず、南北間で格差を引き起こしたことなど、おもしろい歴史を数量的にしめしています。

それら興味ぶかいはなしを知るだけでも、読む価値はあります。

長期的な視野から、経済を知りたいひとはオススメです。

よければチェックしてみてください。

ではまたー。