【書評】スコット・ギャロウェイ『GAFA next stage』 ─ 内容と感想をかんたんに紹介

どうも、りきぞうです。

これまで5000冊ほどビジネス書&教養本を読んできました。

今回、スコット・ギャロウェイ『GAFA next stage』を読んだので紹介します。

ポイントは、つぎのとおり。

ポイント
・本書はベストセラー『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』の続編
・コロナ後の GAFA と、そのほかの巨大テック企業の動向について分析する
・今後かれらが狙ってくるのは、イノベーションが少ない大学業界で、2流&3流の大学がつぶれ、ブランド大学は GAFA のテリトリーに入ると予想

以下、目次に沿って、みていきます。

『GAFA next stage』の概要

出版社の紹介文は、こんなかんじ。

【本書の主な内容】

・四騎士+Xが世界を「絶望の赤」と「希望の青」に塗り分ける
・新型コロナは「時間の流れ」を変えた
・痛みは「弱者にアウトソーシング」された
・強者はもっと強くなり、弱者はもっと弱くなる。あるいは死ぬ。
・ポストコロナで勃興する新ビジネス ・パンデミックはすべてを「分散化」させた ・台頭するディスラプターズ ・GAFA+Xの暴走に対抗する(ほか)

【GAFA+Xが狙う「次なる獲物」は、あなたの業界かもしれない】
GAFAは今後5年で収益を1兆ドル増やす必要がある。そのためには新しい市場への参入が求められ、さまざまな領域に入り込んでいくことになる。ウサギの肉で都市を満たすことはできない。もっと大きな獲物が必要だ。(本文より)

─ 出版社から

みてわかるとおり、コロナ後の巨大IT企業の動向を述べた内容です。

前回の『the four GAFA』では、タイトルどおり、

・Google
・Amazon
・Facebook
・Apple

の4社をメインにあつかいました。

今回は GAFA にくわえて「+X」として、かれら4社に匹敵するIT企業も取りあげます。

また「青い騎士/赤い騎士」のメタファーから、巨大テック企業を2つのタイプのビジネスモデルに分類。

前者はユーザーから直接お金を徴収するモデル。後者はユーザーから個人情報を取得したあと、それをほかの企業に売り渡すモデルです。青い騎士には Apple が、赤い騎士には Google が振り分けられます。

わかりやすいメタファーで、巨大IT企業を分析するのも、本書の売りです。

『GAFA next stage』のポイント

いちばんの読みどころは、第4章の「大学はディスラプターの餌食」です。

著者によれば、コロナ後の世界において、もっとも GAFA に狙われるのは大学業界だといいます。

というのも、大学というビジネスは、ここ80年ほとんど変化が起こらず、教育事業の側面からみた場合、なんらイノベーションを起こしていないからです。

〔中略〕7000億ドル規模の高等教育機関が提供しているものは、旧態依然としたものばかりだ。大学のキャンパスに何とか潜り込んで実際に見てみると、たしかに変わったところがある。スライドの代わりにパワーポイント。法律用箋とタブの代わりにノートパソコンとダイエットコーク。しかしそれだけだ。(p.203)

長らく技術革新が起きていない産業に〝入りこむ〟 ─ この手法はGAFA のもっとも得意とするところ。大学こそが、その一番のカモになる、と予想します

くわえて、コロナ後の世界においては、大学に人が直接集まることができません。

校舎に集まり、人脈を広げ、みずからのブランド価値を高めていくのが、大学本来の魅力です。

それがすべてオンラインとなり、講義もゼミもパソコンやスマホを介しておこなわれるなら、大学の価値はあってはないようなもの。

つまり、コロナ以前から大学の存在価値が疑われていたところで、追い打ちをかけるように、コロナによるオンライン化がすすみ、かろうじて残していた魅力を失ってしまった、というわけです。

なお、著者はこんなふうに(ふざけた?)数式で、大学の価値をあらわしている。

(p.214)

当然ながら、これほど弱体化し、かつ、莫大な資本が集まる業界にむけて GAFA が目をつけないわけがありません。

さらにマズいのは、これまで大学がインターネット技術を積極的に導入してこなかったので、(喰われるとも知らず)大学みずから GAFA にサポートを求めていることです

かれらに駆逐されるとも知らず、参入の糸口をすすんで与えてしまっている。

なお、著者は2流以下の大学は GAFA が大学業界に参入したあと、自然に淘汰されてつぶれてしまう、と予想します。

いっぽうハーバードや MIT をはじめとする1流大学は GAFA の手を組んだうえで生きのび、ネット技術を本格導入することで、よりいっそう発展する、と予測します。

MIT とグーグルが共同で、2年間の STEM(科学・技術・工学・数学)教育プログラムをつくるのもいい。キャンパスと立地にまつわる神話や魔法は、いまや制約要因ではなくなった。まもなくほとんどの教育課程がハイブリッドとなり、最高のブランド大学への入学者が大幅に増加するだろう。(p.229)

『GAFA next stage』の感想

そもそも原題が「Post Corona」ということで、コロナ後の世界と GAFA の関係について、うまく分析しているかなと思います。

なかでも、第4章の「大学はディスラプターの餌食」はおもしろく「日本の大学も他人事じゃないな」と思わせる内容になっています。

とはいえ、邦訳のタイトルとは異なり、そこまで GAFA に特化して述べているわけではないので、コロナ後の Google や Amazon の動向を知りたい方は、肩すかしをくらうかもしれません。

議論も〝あっちゃこっちゃ〟と、いろんな分野に飛ぶため、はなしの筋に一貫性がありません。個人的には、雑誌やブログ記事を読むように、各章をパラパラ読むのが良いかと思います。

評価
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