【書評】伊藤毅『ルールの世界史』 ─ ルールの視点から歴史をとらえなおす

どうも、りきぞうです。

これまで5000冊ほどビジネス書&教養本を読んできました。

今回、伊藤毅『ルールの世界史』を読んだので紹介します。

ポイントは、つぎのとおり。

ポイント
・本書では「ルール」の観点から世界史を把握する
・信用・創造・普及・育成のテーマに沿って、世界史におけるルールの変遷をたどっていく
・イギリス産業革命が起きた背景など、ほかとは違った視点で歴史をとらえなおすのが、本書の魅力

個人的な評価は、こんなかんじ。

評価
分量
(3.0)
面白さ
(4.0)
難易度
(3.0)
おすすめ度
(3.5)

以下、目次に沿って、みていきます。

『ルールの世界史』の概要

出版社の紹介文は、つぎのとおり。

ルールを知れば、ビジネスがわかる 歴史を知れば、ルールの見方が変わる! われわれの仕事と生活にかかわる「ルール」の意外な秘密に迫る、知的エンタテインメント!

争いを解決する。ゲームを面白くする。ビジネスを円滑に進める ─ われわれの周りには、様々な「ルール」が存在する。 ルールは、誰かがそれを定め、運用していくことで変わり、時代にそぐわなくなると消える、というライフサイクルを経る。

本書は、そうしたルールの興亡の歴史を知ることで、その本質を理解し、いまのビジネスにどのように影響しているのかを読み解くビジネスエンタテインメント本である。

─ 出版社から

タイトルにもあるとおり「ルール」の観点から、世界史のてぎごとをとらえる、という内容です。

スポーツ、特許技術、自動車、インターネットなど、あらゆるモノ&サービスのうらには、うまく機能させるためのルールが存在します。

その経緯を、世界史上の有名なできごとをつうじて、くわしく掘りおこしていきます。

具体的には、

・チューリップ・バブル
・ジョン・ケイの発明
・東インド会社の設立
・パリ万国博覧会の開催

などなど、世界史学習者だったら、かならず勉強するテーマが盛りだくさん。

世界史の学び直しにも、最適な1冊です。

『ルールの世界史』のポイント

面白かったのは、イギリス産業革命が下地ができあがったときのおはなし。

イギリスで産業革命がおきた理由については、いろんな説があります。

ルールの観点から世界史をみる本書では、

イギリス王室の独占権ビジネスと、その反動から産業革命はうまれた

と、みます。

どういうことでしょうか。

独占権を濫発したイギリス王室

じつは、産業革命まえのイギリスでは、王室が、

・特許制度
・東インド会社

の2つをひとり占めしている状態でした。

たとえば、17世紀前半のジェームズ1世は、いろんなモノやサービスの特許を主張し、いわゆる「特許権」を濫発します。

現代の視点からだと、特許とは、発明家や開発者の権利をまもるための制度と思われています。

しかし、産業革命まえのイギリスでは、特許権そのものが収入源のひとつでした。

つまり、(なんでもいいので)人びとのあいだで普及しているモノや&サービスに特許をかけることで、そこから収益をあげていたのです。

驚いたことに、エリザベス女王時代のイギリス王室は、トランプ製造にまでを特許をかけようとします。

いっぽう「東インド会社」についても、イギリス王室は、独占権を主張します。

こちらは、世界史を学んだ人にはよく知られたはなしですね。

独占権の反動から産業革命が起こった

こんなふうに、特許制度も株式会社もひとり占めしていたイギリス王室でしたが、その独占ゆえに、人びとから反発をまねくことになります。

まず、特許権を濫発したジェームズ1世にたいして、(人びとの代表機関である)イギリス議会は、特許付与権を制限する法律を定めます(1624年)。

さらに、つづくチャールズ1世のときには、(こちらも有名な)ピューリタン革命がおこり、特許制度の濫用に歯止めがかかります。

その後、ふたつのできごとにともない、特許権にまもられていたギルド制度もまた、崩壊をむかえます。

ギルドとは、中世ヨーロッパの事業者団体のことで、かれらには、ひとつのモノやサービスにかんする商業の独占権が認められていました。

しかしイギリスでは、王室のもつ、特許制度&株式会社の独占権に制限がかけられたことで、ギルドの独占権も、ゆるやかに崩れていくようになります。

それにより、ギルドが囲っていた技術や商業権がオープンになり、その結果、イノベーションがおこりやすくなり、つづく産業革命につながっていきました。

まとめると、

独占権をにぎっていたイギリス王室が、各種の権利をつよく押しだした結果、人びとの反発を買い、それにともなって、特許権が緩和され、イノベーションが起こりやすくなった

というわけです。

なので、イギリス王室の〝強欲〟が、独占権の崩壊と産業革命を起こした、ともいえます。

イギリスの産業革命の下地を作った東インド会社、特許制度、およびギルトの解体は、いずれもイギリス王室の独占権ビジネスと、その反動から発生したルールでした。イギリス王室が欲にまみれた結果、世界の最先端を走ることになるというのは、なんとも皮肉なものです。

─ 5章 p.177

このあたりに、歴史の〝おかしさ〟を感じ、あらためて「世界史って、おもしろいなぁ」と思わせてくれます。

『ルールの世界史』の感想

本書では、うえにあげた特許権以外にも、

・信用
・創造
・普及
・育成

などのテーマを沿って、世界史のできごとを詳しくあつかっています。

世界史というと、どこかとっつきにくいイメージがありますが、語り口もやわらかく、イラストや写真も多めなので「歴史が苦手」という人でも、すんなり頭に入ってくる内容です。

興味ある人は、せびチェックしてみてください。

おわりに

伊藤毅『ルールの世界史』をみてきました。

まとめると、こんなかんじです。

ポイント
・本書では「ルール」の観点から世界史を把握する
・信用・創造・普及・育成のテーマに沿って、世界史におけるルールの変遷をたどっていく
・イギリス産業革命が起きた背景など、ほかとは違った視点で歴史をとらえなおすのが、本書の魅力

この記事が、役立つビジネス書&教養本を探している人の参考になれば、うれしいです。

では、また。