どうも、りきぞうです。
大学院では、社会学をベースにキャリア論と社会保障制度を研究していました。
先日、M. フリードマン『資本主義と自由』を手にとりました。
学生時代から何度も読んでいて、久しぶりに読み返してみました。
市場と政府のカンケーにかんする内容です。
本書を読むと、ここ最近の政府による経済政策のデタラメっぷりがわかります。
経済のキホンを理解したい人にとっても良書です。
目次
M. フリードマン『資本主義と自由』の概要
目次はこんなかんじです。
第1章 経済的自由と政治的自由
第2章 自由社会における政府の役割
第3章 国内の金融政策
第4章 国際金融政策と貿易
第5章 財政政策
第6章 教育における政府の役割
第7章 資本主義と差別
第8章 独占と社会的責任
第9章 職業免許制度
第10章 所得の分配
第11章 社会福祉政策
第12章 貧困対策
第13章 結論
全体のテーマは「経済的自由と政治的自由」です。
論点は「経済的自由と政治的自由はどう関係しているのか」「市場制度と政治的自由の関連性」です。
1、2章で、大まかな考え(思想)をのべたあと、3章から、金融・財政・教育・社会保障など個別のテーマに切り込んでいきます。
ロジックはかなり明快で、表現もムズかしくありません。
フリードマンにたいしては「市場原理主義」みたいなイメージがありますが、論理展開はメーカイで、しっくりきます。
以下、気になったトコを、引用しつつ、コメントしていきます。
M. フリードマン『資本主義と自由』で気になったトコ
市場にたいする政府の役割
自由市場が存在するからといって、けっして政府が不要となるわけではない。それどころか、「ゲームのルール」を決める議論の場として、政府は必要不可欠である(049)
フリードマンは「リバタリアン」のレッテルをはられることが多いため、「政府不要」と主張していそうですが、そうではありません。
政府の役割をちゃんと認めています。
一言でいえば、「市場のルールを話し合う場を提供すること」です。
ただし政府によるルールづくりも最低限にとどめるよう注意をうながします。
政府が介入せずとも、市場側でもルールづくりが可能で、コストも安くおさえられるます。
市場メカニズムの活用をまずは考えてみようという提案します。ごもっともですね。
市場は、政府の場で決めなければならないことを大幅に減らし、政府が直接ゲームに参加する範囲を最小限に抑える役割を果たす(050)
政治&市場のメリット/デメリット
一つの大きな政府のなかに対等な権力者や有力機関がいくつか共存することは、一つの大きな経済の中に対等の経済力を持つ実業家が共存することに比べ、はるかにむずかしい(050)
権力について、政治と市場のちがいはこうです。
- 政治 → 権力が集中しやすい
- 経済 → 権力が分散しやすい
たとえば、地方分権をすすめるとき、権力者の立場は似たりよったりです。
一方、市場では同じモノやサービスでも、会社ごとに売り出す商品はことなります。多種多様です。
つまり、市場では権力が集中せず、分散されます。
こんな特徴があるので、政治と市場の距離が近くなると、資本が集中しやすくなります。
切り離されていると、経済が政治権力を抑制し調整できます。
もちろん市場でも「一社独占」なんてことはあるけど、つねに新規参入が認められているから、独占が永遠に続くようなこと起きない。
なるほどね。
政府の具体的な役割
自発的な交換を通じた経済活動では、政府がそのための下地をと整えることが前提となる。具体的には、法と秩序を維持し個人を他者の強制から保護する、自発的に結ばれた契約が履行される環境を整える、財産権を明確に定義し解釈し行使を保障する、通貨制度の枠組みを用意することが、政府の役割となる(073)
政府の役割は、自発的な交換を促すこと。
法と通貨制度を手段にして、経済活動のベースを整えること。
リスト化すると、こんなかんじです。
- 法と秩序を維持し、個人を他者の強制から保護する
- 財産権を明確に定義し、その行使を保障する
- 財産権を含む経済のルールをいつでも修正できるようにしておく
- ルールの解釈をめぐる紛争を仲裁する
- 自発的に結ばれた契約が履行される環境を整える
- 通貨制度の枠組みを用意しておく
- 技術的独占に歯止めをかける
- 外部効果に配慮する
- 責任能力のない狂人や子どもなどを保護する
どの項目にもいえることだが、ルールづくりについて、極力マーケットにまかせることを、口すっぱく強調します。
完全に自発的な交換を通じて個人で行うのが困難あるいは不可能なことがあるとして、どれとどれは政府に委ねるのが妥当なのか。そこに明確な線引をすることはできない。政府介入が提案される都度、プラス要因とマイナス要因を秤にかけ、言わばバランスシートを作って検討すべきである。(……)どのような介入が提案された場合でも、自由を脅かすような外部効果はマイナス側に記入し、大きな重みを付けるべきである(081)
で政府がやるべきでないことをリスト化します。
- 農産物の買取保証価格制度
- 輸入関税または輸出制限
- 産出規制
- 家賃統制、物価統制、賃金統制
- 法定の最低賃金、価格上限
- 細部にわたる産業規制
- ラジオ・テレビの規制
- 老齢・退職年金制度
- 事業・職業免許制度
- 公営住宅および住宅建築を推し進める補助金制度
- 平時の徴兵制
- 国立公園
- 営利目的でも郵便事業の法的禁止
- 公有公営の有料道路
(085-087)
どの項目もじょじょに達成されはじめている。
社会の市場化は進んでいる証拠だといえますね。
ただ個人的には、②の輸入関税または輸出制限、⑤の最低賃金の撤廃、⑨の職業免許制度は、とくに利益団体の抵抗がつよく、達成するには時間がかかりそうだぁと思う。
M. フリードマン『資本主義と自由』のまとめ
ここまでは原則論で、のこりは各論です。
あとは目次をみて、興味ありそうなテーマをみるのがおすすめです。
そのときどきにニュースになっているテーマを見返してみるのも、おもしろいです。
個人的には、財政政策(第5章)、所得の分配(第10章)、社会福祉政策(第11章)、貧困対策(第12章)がよかった。
なかでも、12章では、いま流行りの BI (ベーシックインカム)に類似した制度「負の所得税」にかんする記述があります。
かれの〝生の考え〟を聞くだけでも、チェックしておく価値はあります。
政府と市場のカンケーを、あらためて考えたい方には、おすすめの1冊です。
よければ目をとおしてみてください。
ではまた〜。