バナナマン『激ミルク』感想&レビューです。

公演日 2001年2月
収録 HIPPOPOTAMUS
LOST NATION
張り込み
CLEVER HOSTAGE
THIRD PERSON
赤えんぴつ
演説
ジャパニーズ ハートフル ソング
幸福の赤いえんぴつ
エキストラ大器晩成

どうも、コント作家のりきぞうです。

きょうも、コント作品をレビューしていきます。

取りあげるのは、バナナマンの『激ミルク』。

初期の作品でも、バナナマンらしさが、すでに発揮されています。

バナナマン『激ミルク』の概要

以下、それぞれの作品にふれていきます。

「LOST NATION」は、日本が消滅した世界でのおはなし。

核により日本が失くなった過去を知らないふたり。

けれどなぜか、6000万年前に絶滅した恐竜について議論をはじめる。

とおいむかしに死んだはずの恐竜は、4000年前までは生きていて、人類の共存していたと主張する。

はなし相手の設楽は「ウソだと」と否定するが……

SFちっくなコントだけど、それは最初の設定だけ。

あとは日村の「珍説」がつづく。ここが笑いドコ。

とはいえ、日本が消滅した世界で、日本語で議論するのが、ポイントなんだけど、いまいち伝わってこなかったかな。。

「張り込み」は刑事の上司&部下のおはなし。

キャラにのせて、日村さんのダメっぷりが描かれるコント。

つぎの作品『monkey time』では、「張り込み #2 」「張り込み #3 」として、続編が収録されています。

「THIRD PERSON」は、ケンカするふたりの会話劇。

ブチギレながら、手をだす瞬間に、設楽が「ケンカはやめよう」と裏声を出す。

「お互いもう1人いると思って会話しよう」 「そうすればケンカしない」 ──

そういって、ふたりのあいだに第三の人物を手で表現する。

ケンカしたとたんに、もうひとりが仲裁に入る 。

予想するに、設楽さんの発想がもとになってるコントかな?

はじめは「まゆみ」1人だったのが、日村も、もうひとりの人物を登場させ、人間関係がフクザツになってくる。

ゴチャゴチャしていく過程がおもしかった。

「演説」は、メガホン片手に「ホクロの重要性」について演説するおはなし。

別撮り歌のコントとセットになっているコント。

ややシュールな感じですね。

個人的に好きだったのは、「HIPPOPOTAMUS」&/strong>「CLEVER HOSTAGE」 ─ 。

以下、くわしくみていきます。

『HIPPOPOTAMUS』

あらすじ

動物園の飼育員である「伯父さん」と、役場に勤める「おいっ子」のおはなし。

カバの飼育について、おいっ子が、伯父さんに公演を依頼 ─ 。

直前の楽屋でのワンシーン。

おいの父(=伯父の兄)は、すでに亡くなり、おいの母は未亡人。

「公演なんか、やりたくない」と言っていた伯父 ─ 。

けれど彼女が会場に来るとわかって、やる気が出てくるが……

感想

どちらかといえば、ふたりのかけあいによる笑い。

タイトルの「HIPPOPOTAMUS」とは「カバ」の意味。

けれど、どうして「カバ」をテーマにすえたのか、いまいちよくわからなかった。

いまのバナナマンさんのライブでは、日常家の長尺コントを、ラストにかならずもってくる。

このコントは、その原型をおもわせる作品。

プロットもセリフもあっさりしてるけど、バナナマンらしい「ほっこりした雰囲気」が伝わってくる。

『CLEVER HOSTAGE』

エッジの効いたブラックコント。

ちょっと残酷で、いまのバナナマンさんだったら、こういうのは作らないかも。

以下、概要&ポイントをみていきます。

人物

誘拐犯(日村)
人質(設楽)

場所

監禁場所

あらすじ

共犯のふたりと電話で、連絡をする誘拐犯。

どうやら金の受け渡しに手こずり、プラン通りにすすんでいないようす。

あせる犯人。

そこにつけ込む人質。

・「共犯ふたりのはなしはウソで、おまえを裏切ろうとしている」
・「おれたちふたりをおいて、カネをもち逃げするつもり」
・「おまえひとりに、罪をなすりつけようとしている」」

人質であるにもかかわらず、ぎゃくに、犯人をそそのかす。

まんまとダマされる犯人は、人質のいいなりに。

さらに共犯のふたりからカネをうばい、あげくのはては、設楽が人質になってる状況を利用して、彼の会社から3億円をせしめることに成功 ─ 。

しかしさいごは……

感想

コントというより、サスペンスドラマにちかい。

笑いドコロは、日村演じる犯人の〝まぬけっぷり〟 。

人質の手のひらにのせられるプロセスが、笑いをひきおこしていく。

ポイント

笑いのポイントをみていきます。

コントで大事なのは、キャラクターとプロット。

コントのプロットはとてもシンプル。

[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

コントの書き方 ─ プロットの構成について

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」がある。

パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つ。

コントの書き方 ─ プロットの展開について

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「逆転」だとわかる。

「逆転」では、ひとつの出来事をキッカケに、それまでの立場が反転するようすをえがく。

人物の地位 or 権威が、ひっくりかえることで、笑いをひきおこしていく。

この作品でも、プラン通りに進まない状況をキッカケに、焦る誘拐犯に、人質のほうが交渉をもちかける。

ほんらい、おどす側の犯人が、おどされる側にまわる。

立場がひっくりかわるようすが、笑いをうみだしていく。

図にすると、こんなかんじ。

構図 ─ 逆転
犯人 > 人質

・プラン通りに進まない犯行
・あせる犯人
・そのスキをつく人質
・新たな犯行のプランをもちかける
・言いなりになる犯人

犯人 < 人質

「逆転」の構図は、コントでは定番です。

ベタになりやすいので、オリジナリティのある作品にするには、細かい要素がたいせつ になります。

このコントでも、犯人をそそのかす内容が、やたら具体的。

日村さん演じる犯人の「間抜けさ」も目につく。

けれどそれ以上に、設楽さん演じる人質の「話のうまさ」が、作品のおもしろさを引きたてています。

演技あってこその、プロセス&シナリオだと、わかります。

まとめ

こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。

ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた。

よきコントライフを〜。