どうも、りきぞうです。
これまで5000冊ほどビジネス書&教養本を読んできました。
今回、『Anthro Vision(アンソロ・ビジョン)』 を読んだので紹介します。
ポイントは、つぎのとおり。
・人類学的思考では、誰もがみずからの生態学的・社会的・文化的な環境の産物であることを理解することが重要
・いまのデジタル経済では「物々交換(バーター)」の文化が流れていて、経済統計には反映されない経済取引がなされている
個人的な評価は、こんなかんじ。
以下、目次に沿って、みていきます。
目次
『Anthro Vision(アンソロ・ビジョン)』の概要
まずは概要から。出版社の紹介文は、つぎのとおり。
『サイロ・エフェクト』著者最新作! 経済予測、金融モデル、マーケティング、ビッグデータ……。
なぜ現在社会の知的ツールは、問題解決に失敗するのか?
社会科学とデータサイエンスの融合で、人類学的知見が果たすべき役割とは?
「極端な不確実性」に直面する現在、過去の延長戦で考えるのは危険だ。FTのトップジャーナリストが、混迷の時代に必要な「幅広い視野」を解説した話題作。
─ 出版社から
著者は『フィナンシャル・タイムズ』の編集者。
自身が大学院まで「人類学」を専攻していた経験から、
と、すすめる内容。
あつかうテーマは、
・金融危機
・トランプ当選
・リモートワーク
・持続可能な開発
など、多岐にわたります。
著者はさいごのほうで「人類学的思考」を身につける方法をまとめています。つぎの5つです。
② あたりまえと思える文化的枠組みは、ひとつではないと受け入れる
③ ほかの人びとへの共感を生むため、すこしでも他者の思考や生き方に入りこむやり方を模索する
④ みずからをはっきり観察するため、アウトサイダーの視点に立って、まわりの環境を見わたす
⑤ 社会的沈黙に耳をすまし、ルーティンとなっている儀礼やシンボルついて考える
以上のような人類学的思考に立ったうえで、ものごとをとらえれば、これまでとは違う事実が浮かびあがり、創造的なアイデアや製品を生み出せる、と主張します。
すこし抽象的なはなしですが、(当人が雑誌記者のため)本文の内容は、きわめて具体的です。
読み方としては、目次をみて、気になるテーマから順々にながめていくのが、おすすめです。
『Anthro Vision(アンソロ・ビジョン)』のポイント
わたしが気になったのは、
について。
以下、
- インターネット以後、生産性は伸びていない
- いまの経済統計は不十分
- デジタル経済における「物々交換」
の項目に沿って、かんたんにみていきます。
インターネット以後、生産性は伸びていない
世界にインターネットが普及して以降、わたしたちの生活は一変しました。毎日の暮らしは快適になり、それまでには便利さを享受しています。
しかしそのいっぽうで、インターネットが生まれて以降、人びとの生活&経済は豊かになったのか。
残念ながら、そうではありません。
ネットに囲まれている人たちが、うすうす感じているとおり、インターネットが広まってからの生活&経済は、お世辞にも向上しているとはいえません。
このことは、アメリカの GDP データからも明らかで、インターネットが普及した1995年から2010年の生産性の伸び率は年2.6%で、それ以前よりも低い数値でした。
また2010年以降になると、生産性の伸び率はさらに落ち込みます(アメリカでさえこんなかんじですから、日本については、言わすもがな)。
つまり、(経済成長の最大要因である)生産性だけをみるなら、インターネットが広まっても、人びとの暮らしや経済は豊かになっていない、ということです。
いまの経済統計は不十分
とはいえ、インターネットにより生活が便利になっているのは事実。
ネット以前の社会をふりかえり、「またあの時代にもどりたいか?」と問われれば、だれも「うん」とは答えないでしょう。
この〝ちぐはぐな事態〟をまえにしたときに役立つのが「アンソロ・ビジョン(人類学的思考)」です。
人類学的思考に立てば、インターネットがわたしたちの生活を一変させ、暮らしを豊かにしたのは、まぎれもない現実です。
では、GDP などの統計データで、この〝豊かさ〟が反映されないのか。
著者いわく、それは、
です。
つまり、金銭を介した取り引きがなければ、経済活動として判断されないわけです。
しかし考えてみれば、これはたいへんおかしい。
わたしたちのまわりを見渡したときに、金銭を介さない経済活動は、いくらでもあります。
よく例にあげられるのは、家事や育児。このふたつだって、家族を維持し、子どもを育てる意味では、お金を介さない経済活動ですよね。
また、金銭を仲介しない経済活動としては「物々交換」があげられます。
じつは、この物々交換(バーター)がこそが、いまのデジタル経済を解くカギだと、著者は指摘します。
デジタル経済における「物々交換」
ふりかえってみると、当初インターネットは、お金のやり取りがナシに立ちあがりました。
(通信費&端末費用はかかったものの)ユーザー同士のあいだで、金銭のやり取りは、ほとんどありませんでした。
たとえば、「ある街のパン屋さんがおいしい」と情報をのせて読まれたとしても、読者から1円も取ることはありませんでした。
代わりに、その記事を読んだユーザーから、ほかの有益な情報を提供されるだけです。
つまり、初期のインターネットの世界は、双方向の情報のやり取りという意味では「物々交換(バーター)」が、たいはんをしめていたわけ、です。
ひるがえって、GAFA が利益を独占している、いまのデジタル経済は、どうか?
著者は、いまでも「物々交換」の文化は生きている、とみています。
たとえば、わたしたちは Google のサービスを無料で利用しています。しかしほんとに〝無料〟でしょうか? 違いますよね。
ご存知のとおり、ユーザーは Google のサービスを利用する代わりに、個人情報を提供しています。
タダで使っているわけではなく、プライバシーと引き換えに、各種サービスを利用しているわけです。
つまり、金銭を介さない、
が成立しているわけです。
このような視点からみると、
が、わかります。
答えは、
無料アプリをはじめ、デジタル経済では、金銭を介さない経済活動が多くひろまり、経済統計に反映されない取り引きが多く存在している ─ 。
その結果、生活が便利になり、作業が効率化しても、、生産性の向上につながらない ─ 〝ちぐはぐ感〟の原因は、ここにあります。
『Anthro Vision(アンソロ・ビジョン)』の感想
このように本書では、デジタル経済をはじて、ふだんわたしたちが疑問に思っているとを、人類学的思考の観点から、おもしろく分析しています。
もちろん、すべて鵜呑みにする必要はありませんが、世界を別の視点でとらえるには、興味ぶかい内容になっています。
クリエイティブなアイデアや製品をもたらすきっかけにもなるので、よければチェックしてみてください。
おわりに
『Anthro Vision(アンソロ・ビジョン)』をみてきました。
まとめると、こんなかんじです。
・人類学的思考では、誰もがみずからの生態学的・社会的・文化的な環境の産物であることを理解することが重要
・いまのデジタル経済では「物々交換(バーター)」の文化が流れていて、経済統計には反映されない経済取引がなされている
この記事が、役立つビジネス書&教養本を探している人の参考になれば、うれしいです。
では、また。