【書評】B.リース『人類の歴史とAIの未来』感想 & レビューです。

どうも、りきぞう(@rikizoamaya)です。

これまで、予備校講師 → ウェブディレクター → ライターと、いろんな職業にたずさわってきました。

働き方についても、契約社員 → 正社員 → フリーランスと、ひと通り経験してきました。

大学院では、労働問題と社会保障を研究してきました。

いまも月10冊くらいのペースで知識をストックしています。

数年まえから AI について盛んに論じられていますね。

ウェブ技術からアプローチだったり、経済学的なアプローチだったり、視点もさまざま。

わたしたちみたいなシロウトからすれば、「???」ってかんじになってます。

大まかに、そして、ある程度アカデミックな立場から AI を述べている本がないかなぁと探しているとき、つぎの本が目につきました。

B.リース『人類の歴史とAIの未来』


著者は、技術調査会社の CEO です。本国アメリカでは、AI をテーマにしたポッドキャストが人気みたいですね。

本書は、言語・火・農業・都市など、これまで人類がつくりあげたテクノロジーの流れに、AI を置きます。

そのうえで、これから人工知能がどのように人間に影響をあたえるのかを論じます。

技術論だけでなく、哲学・歴史学・経済学の知見も取り入れながら話をすすめるため、読んでいて飽きません。

広い視点から AI を知りたい方にはおすすめの1冊です。

B.リース『人類の歴史とAIの未来』の概要

目次はこんなかんじ。

第1部 今日に至る、長く険しい道プロメテウスの物語
第2部 狭いAIとロボット──ジョン・ヘンリーの物語
第3部 汎用人工知能(AGI)──魔法使いの弟子の物語
第4部 コンピュータの意識──ジョン・フラムの物語
第5部 ここからの道──ジャン=リュック・ピカードの物語


第1部で、言語・火・農業など、テクノロジーが人類にあたえた影響をおさらいします。

第2部で、「狭い AI =弱い AI 」について検討します。

狭い AI とは、予測など、人間の知能の一部を搭載したキカイのこと。

iphone の Siri や、amazon のレコメンド機能に内蔵しているツールです。

あたりまえに普及していますが、これからの進化について論じます。

第3部では、汎用人工知能(AG I)について。

狭い AI から一歩すすみ、人間の知能をまるまる搭載したキカイについてみていきます。

ちなみに、コレはまだ完成してませんし、完成しそうにもありません。

第4部で、AGI のつながりから、コンピューターが「意識」をもつ可能性について検討します。

ラスト5部で、AI とロボットが、個人や社会にたいするインパクトを、未来予想風に検討します。

以下、気になったトコを引用しつつ、コメントしていきます。

B.リース『人類の歴史とAIの未来』で気になったトコ

人間にとってのテクノロジーとは?

それぞれの時代で私たちの先祖は、身体機能や精神機能の一部を技術でアウトソーシングするようになっていった。消化機能を助けるために火を使い始め、記憶力を拡張するために文字を使い始め、背中や足を酷使する代わりに車輪を使い始めたといった具合だ。(0645)

テクノロジーにたいする、この定義・視点はおもしろいですよね。

あらゆる技術は、わたしたちの身体的・精神的な機能をアウトソーシング(外部化)することで生まれたとします。

AI もまた、「脳」をアウトソーシングした産物といえます。

そして時代は下り、私たちは機械仕掛けの脳を作り出した。この装置はとても多才で、私たちが課すあらゆる問いを無限に解けるようにプログラムされている。現在私たちは、デバイスが自律的に機能するよう指導する手段、すなわち人工知能を開発しつつある。そしてロボット工学の力を借りて、人工知能に自ら動き、物理世界と相互作用する力を与え始めたところだ。現在私たちは、デバイスが自律的に機能できるよう学習させる人工知能を開発しつつある。コンピュータとロボットが組み合わされば、私たちは思考や行動など、さらに多くのことをアウトソースするようになるだろう。これはものすごい変化だ。この変化こそが、第四の時代の幕開けを告げる。(0648)

ちなみに、原書タイトルは『The Forth Age』です。

テクノロジーの歴史からみると、AI +ロボは、言語&火 → 農業&都市 → 文字&車輪につづく、第4の転機です。

また、やや警告ぎみに、この変化は止められないとしています。

重要なのはいつ第四の時代が始まったかではなく、一度その時代に入ったら最後、変化は急激なものになると理解しておくことだ。〔……〕 人類が初めて音速の壁を超えて飛行したのは、人類が初めて月の上に足を降ろした日のわずか 20 年前のことだ。そして人類が飛行機での初飛行に成功したのは月面着陸のわずか 60 年前だ。つまり、車輪を発明してから4940年もの間、私たちは地上に張り付いて暮らしていたのに、そこからわずか 60 年で、私たちは飛行できるようになっただけでなく、月まで行って帰って来られるようになってしまった。私たちが直面している第四の変化は、これくらいのスピード感で、次々に起こる劇的かつ革新的なブレークスルーとともにやってくることが予想される。(0666)

添えるように、レーニンの格言をくわえています。

ウラジーミル・レーニンがかつて言ったように、「 10 年間何も起こらないこともあれば、数週間で 10 年分の物事が起こることもある」(0677)

いま話題になってるのは「狭い AI 」

本書では、狭い AI / 汎用 AI (AGI)を区別して述べていますが、いま世の中で話題になり、じっさいに利用されているのは、ほとんどが前者です。

狭いAIは決して「簡単なAI」ではない。AIの研究に費やされている多くの人の汗と巨額の予算のほぼ全ては、この種のAIにつぎ込まれている(1048)

狭い AI の技術は、主に3つです。

  1. 古典 AI
  2. エキスパートシステム
  3. 機械学習

このなかで、とくに③が進化(ブレイクスルー)を果たし、一気に注目されるようになりました。

わかりやすいところだと「グーグルの猫」ですね。

著者は、いま騒がれている AI のほとんどが、「狭い AI 」にかんするモノ&サービスであると指摘します。

よく言われる、人間の知能をそっくり搭載した「汎用 AI 」は、まだまだ開発の初期段階です。

過度な期待は禁物ですね。

AI をふくめ「技術が仕事を奪う」なんて予想できない

自動化は、経済が創出する仕事よりも多くの仕事を消滅させるのか、それとも私たちはこれまで同様、完全雇用に近い水準でいられるのか、ということだ。この問いに関しては数えきれないほどの分析がなされ、膨大な数の意見が出されており、わりと単純な話のように思えるが、実はこれは悪夢のように複雑な話だ。だから、技術者、エコノミスト、未来学者にアンケートを取ると、この「単純な」問いに対する答えは毎回きれいにバラバラになる。(1449)

なぜ、予想できないのか?

予想したにしても、人によって、どうして意見が異なるのか?

その理由をわかりやすく説明します。

なぜこれほどまでに意見が食い違うのだろう? 技術によって奪われる仕事の数を、技術によって創出される仕事の数から引けばいいだけの話ではないか? 原理的にはそうだが、その計算はまさに、言うは易く行うは難し、だ。仕事の数を計算することは非常に難しい。というのも、すべての仕事とそれぞれの仕事に必要なスキルが網羅されているリストのようなものがあるわけではないからだ。たとえあったとしても、リストの中身は常に変わっていく。次の 10 年で技術が何を可能にするか、私たちにはわからない。(1453)

つまり、どんな仕事にも、必要な技術が〝複数〟ふくまれています。

なので、新しいテクノロジーが生まれたとしても、単一の技術が導入するくらいでは、仕事は置きかわらないということです。

たとえば、レストランのウェイターにしても、レジ業務は代替されるかもですが、赤ちゃんがジュースをこぼしたときの対応など、フクザツな業務はできません。

さらに、仕事で使われるスキル・技術も、日々変化するので、ひとつのテクノロジーが仕事を奪うなんていう予想はたてられないわけです。

これは、ロボットも同じです。

ロボットが人の仕事を置き換えることを社会がどれくらいすんなり受け容れるか、消費者のデマンドに変化が生じるか、賃金はどうなるか、どういった貿易協定が締結されるか、どの技術が裁判沙汰になるか。保険会社がロボットのことをどう取り扱うのか、銀行が果たしてロボットを買うためにローンを組ませてくれるのか、ロボットがどれくらい本当に人から自立した存在になれるのか。ロボットのコストが低下することで創出される仕事はどれくらいか、ロボット業界全体の雇用数がどれくらいになるのか、私たちの現在の見方では見えてこない仕事はどれくらい創出されるのか。どれもこれも、わからないことばかりだ。要するに、私たちの技術は、その意義を私たちが理解できるようになる前にどんどん進歩していっている。(1462)

つまり、「キカイが仕事を奪う」というテーマは、話すだけムダだということです。

ちなみに、著者は、テクノロジーの歴史からみれば、新しい技術は、つねに職を生みだすと指摘します。

1900年の労働人口と2000年の労働人口を心の中で比べてみてほしい。私は、近代経済における職業の半減期は 50 年くらいではないかと考えている。1900年から1950年までの間に、だいたい半分の職業が失われたのではないか。そしてそのほとんどは農業に関わる職だっただろう。1950年から2000年の間にも、そのまた半分の職業が、今度は製造業の分野から失われた。そして、そうした職業喪失のほとんどは技術によってもたらされた。技術が全体として職業を駆逐すると考えるならば、職業喪失の全てが完全雇用の時代、GNPも賃金も右肩上がりの間に起きたという事実についても考えなければならないだろう。(1711)

つまりここ100年だけみれば、技術がうまれ、産業構造が変化するたびに、失業率が上がるどころか、仕事を生みだし、賃金も
上がっています。

そして、コレが、人間のスゴさだと賞賛します。

技術に置き換えられてしまった人たちはどこへいったのだろう? エレベータのオペレーターが仕事を探せずにギャングとなってうろつき回っているなどという話は聞いたことがない。その答えは明白だ。仕事がなくなった人たちは、違う仕事を始めたのだ。こうやって変わることの難しさを過小評価しようとは思わない。ただ、人間がいかにすごいかをお示ししよう。自然界に住む動物たちは、ある決まった枠組みの中のことしかできない。狭いAIは、先ほどご紹介したとおり、1つのことしかできない。だが私たちの汎用性は無限の可能性を秘めている。世界で最も活用しきれていない資源は人類のポテンシャルだ。私たちは技術を取り入れれば取り入れるほどより多くのことができるようになり、それは多くの場合、賃金の上昇につながる。(1700)

汎用 AI はつくれるのか?

著者は、人間の知能をそっくり搭載したコンピューターをつくるのは、キビしいと考えています。

理由はいろいろですが、イチバンの要因は、じつは「人間の脳」自体の解明が、ほとんど進んでいないからです。

研究者たちの見解では、宇宙空間よりもハッキリわかっておらず、全体の数パーセントにも満たないといわれています。

くわえて、脳とコンピューターには、決定的な違いがあるからです。

コンピュータと脳を勝負させたら、今のところ脳のほうが勝つ。コンピュータは2+2みたいな計算を人間よりもずっと速くできるが、脳は多くのタスクでコンピュータを圧倒する。なぜかというと、脳は超並列分散処理をする、つまりたくさんの物事を一気にこなせるからだ。(2859)

コンピューターは、チェスや将棋など、ルールにのっとり、ひとつの課題を処理するのは得意ですが、複数のタスクを同時に解決することはできません。

この点、脳は同時並行で処理できます。

たとえば、音楽を聴きながら、料理をこなし、あしたの予定を考えるなど。

この機能をもたないかぎり、コンピューターが人間に追いつくのはムズかしいとしています。

おわりに

Kindle で読んだんですが、思った以上に長かった。。

引用の量からもわかりますよね。

うえにあげたほか、

  • コンピューターは意識をもてるのか
  • AI が普及したあとに、UBI(ユニバーサル・ベーシックインカム)は導入すべきか

など、よくあるテーマもあつかっています。

ショージキ、この本を読めば、AI にかんする議論は、ほとんどまかなえてしまうくらいの分量です。

大まかに、AI の課題と将来予測を知りたい方には、おすすめ1冊です。

よければチェックしてみてください。

ではまた〜。